5P;愛しい時間
最近不定期です。
そんな中でも読んで下さる人がいて、とっても幸せだと感じています。
こんなヘボ小説ですが、最後までお付き合いお願い致します。
「で?」
放課後。
学校の近くのファーストフード店で私は向かいに座る弟と隣に座る男の子に小さく縮こまっていた。
「朝あんなに言ったのに!?」
「…忘れてました。」
千歳が怖い。
でもそれは愛情の裏返し。
千歳は私を一人にしないように、叔母さんのお見舞いに行くとか言って迎えに来てくれている。
分かってるんだけど。
「バカじゃないの!?」
…怖いよ。
「しかも誰こいつ!?」
と言って私の隣に座ってる男の子に聞く。
駿君は眉間にシワを寄せ、
「北条中学2年の南。お前こそ千尋先輩の何だよ。」
「えっ!?」
千歳と私が一緒に叫ぶ。
だって、
「お前、同じ学校かよ!」
まぁ、2人とも学ランだしね。
この辺じゃ殆どの学校が男子は学ラン。
だから、制服で判断するのはまず無理。
その証拠に。
当人である千歳と駿君さえ驚いている。
「俺は春野 千歳。千尋の弟でお前の先輩。」
「えっ!?…じゃあ……。」
「俺、北条中学の3年だもん。」
駿君はただでさえ大きな目をさらに見開いて、私と千歳を見比べる。
「あと、俺には敬語使えよ。」
千歳さん、何か今日冷たくないでしょうか。
まぁ仕方ないね。私達はシスコン、ブラコン姉弟だもんね。
「そろそろ病院行くよ。」
千歳が鞄を肩にかけ私に言う。
「もう?」
「うん。叔母さん今日検査だから、早めに行かないと。」
はぁい、としっかり者の弟に従う。
「駿君ごめんね。そういう訳だから行かないと。」
「あっはい……。」
バタバタ用意をする私達を唖然として見ている。
じゃあね。と言うと駿君に呼び止められる。
「また会いに行ってもいいですか。」
眉を下げて言う彼に、
「待ってるね。」
と言うと、とても嬉しそうに笑う。
その顔に、不覚にもドキッとさせられる。
病院までの道のりの間、ムスッとして千歳が私に聞いてくる。
「あいつ、チロの彼氏?」
「まさか。最近仲良くなった子。」
「でも告られたんでしょ。」
えっ!?
「何で知ってるの!?」
「早紀さん。」
あのお喋りが!!
「叔母さん?千尋と千歳です。入ります。」
ドアをノックして入ると、叔母さんが白いベッドの上で眠っていた。
叔母さんはあれから大分元気になった。
怪我も完治に近い状態まで回復した。
心以外は。
「俺、花の水変えてくる。」
千歳が出て行ってしまった後、私だけが息を吸っているだけのような気がした。
不安になって、叔母さんが息をしている事を確認してしまう。
その場が怖くなって、水道まで千歳を迎えに行った。
「どうしたの?」
「……。」
千歳の後ろをひょこひょこついて行きながら、病室に戻る。
しばらくして、ドアをノックされ先生が入ってきた。
「ちょっといいかな?」
と言われ、部屋の外に出る。
「春野さんだけど、そろそろ退院出来ると思うんだ。」
「え?」
「家に帰ればもしかしたら、記憶が…ね。」
先生が言葉を濁す。
『退院』
この言葉がこんなにも早く聞けるなんて思わなかった。
「勿論、これからも病院には来てもらうけどね。」と先生は言う。
「これからが大変だと思うけど、一緒に頑張りましょう。」
「はい。ありがとうございます。」
その日の帰り道は複雑な気持ちだった。
千歳も同じようで、2人して口を閉ざして帰る。
家には、
「おかえり」と言ってくれる人がもういない。
なのに、その人が帰ってくる。
おそらく、昔と同じように迎えてくれる事はないと思う。
その事は、静かなこの家が物語ってる。
必然的に、テレビをつける事が多くなった。
でもただつけるだけで、聞いてはいない。
来週。
叔母さんが帰ってくる。その事が、私にとってとても辛い事の気がしてならないように思えた。
こんな小説を最後まで見て下さってありがとうございました。
先は長いですが、今後ともお付き合いお願い致します。