Ⅳ
注意深くも、僕、芹沢冷夜は海王霙を見つめる。
海王霙。
僕の中学からの付き合いのある親友(と言う設定になっているらしい)。
さらさらに流れる髪と、小柄な体躯が印象的な美少女。
好きな食べ物は甘い物系。この前あげたら犬の尻尾を振って喜んでいた。
(ダメだ、王上院ハルリナかどうか判別するネタが少なすぎる)
何せ、王上院ハルリナの好きな食べ物とこの世界のハルリナが好きな食べ物が同じであると言う保証はない。それに他の2人ももう少し調べなくては。
「れいやん、どうしたん? 何か顔が怖いよん」
「……いや、何でもない」
僕は慌てて笑顔を作り、海王霙に向ける。
少しでも不安感を与えてはならない。何せもしかしたら彼女が王上院ハルリナだったら、彼女を不安にさせてしまう事になる。そんなのはしてはならないのだから。
まぁ、王上院ハルリナを見つけるまでの辛抱だが。
「おやおや。2人はいつも仲良いね。私は嫉妬で狂いそうだよ」
目の前に現れた美少女はそう言う。
その女性も僕は見た事のない美しい女性だった。前の世界に居ない、そして僕が気にしている女子生徒の1人だった。
茶色の瞳に豊満な胸と長身の体躯。それは王上院ハルリナに見られる特徴の1つだった。
肌色の頬にほのかに上気する赤らびた頬。赤味がかったショートの髪。白いシャツは豊満な胸で第1、2ボタンが留められずに黒い下着がちらちらと見え隠れしている。髪ににんじんの髪飾りを付けている。
そしてこの世界が普通でない事を証明するかのように、頭には髪と同じ色の兎耳が生えており、スカートから同じ色の兎の尻尾が出ている。どうやらこの女性のEmanが言っていた分かりやすい特徴とはこれの事らしい。
「やぁ、初雪っち。おはようーん」
「君は相も変わらずだね、霙。ところで冷夜は私に何か言う事は無いのかい?」
「……あぁ、おはよう。上野初雪」
と、僕は王上院ハルリナ候補の1人である上野初雪に声をかけた。
上野初雪。
海王霙が犬だとすれば、上野初雪は兎のような女生と例えられる。
横で忠犬のように尻尾を振る霙も良いが、兎耳と大胆な格好で僕の前に現れる彼女もまた良い。
一番はやはり、ハルリナだけど。
……紹介せずに残っているのは後は、病院坂アリアだけだがその紹介はまたとしよう。
「しかし、あれだな。初雪は今日も元気そうだな。そんな格好でも堂々としていて」
と、僕は彼女にそう尋ねる。
そんな胸元を過度に露出させた格好で、良く堂々と歩ける物だ。
「ふふ。褒め言葉として受け取っておこう。
それよりも2人とも。早く教室に入ろう。そろそろ授業が始まるよ?」
「あー! 怒られるのは嫌いだから先行くねん!」
そう言って、猛スピードで霙は走り去ってしまった。
元気な犬な事だ。
「あー、早いな。おい。
僅か数十メートルの距離で全力疾走なんて……。それにまだ時間はあるし」
まだ少なくとも、今は歩いても十分に間に合う時間だ。
「その純粋さが彼女の魅力さ。さっ、私達も行こうじゃないか。冷夜」
「そうだな、初雪」
僕の目の前に手を差し伸べる彼女の手を取り、僕は2人で教室へと向かったのであった。




