五
条件は揃った。そして、その条件に合う人物はたった1人しかいない。そして僕、芹沢冷夜と王上院ハルリナの2人は、その人物を屋上へと呼び出していた。
その人物は男性だった。勿論、僕とハルリナの2人でエマン・マスターと予想した人物である。最初は名前から女性だと思っていたが……まぁ、エマン・マスターと言う名前もどこまで本当の事か分かった物じゃないからな。それに素体だし、別に男でも良いのだろう。
少し筋肉質な中くらいの背丈の人物であり、肩より少し長い辺りまで白みを帯びた茶髪を伸ばした眼鏡をかけた男性。普通に筋肉を鍛えまくった男性よりも身軽で動きやすそうで、返ってそんな力自慢の奴よりも遥かに強そうに思える。多分、もし僕が喧嘩するとしたら確実に負けると確信出来るような人物。
そんな人物はまるでNPCのように、ここに来たのかが分からないと言った様子で「……芹沢君、それに上野君。私に何か用かい?」と言っている。……白々しい。もう演技する必要すら無いと言うのに……それでも演技を続けると言うのか?
それにこっちが用があると言う事は向こうもこっちを観察して知っているはずなのに、それでも隠そうとする考え方が理解出来そうにない。その点は後でしっかりと聞く事にしよう。
「君がエマン・マスター。つまりこの世界の管理者であることは調べがついている」
「大人しく認めてしまった方が楽ですよ?」
「……何のことだい? 私には君達が何の事を言っているのかさっぱり分からないよ? 2人とも、もしかして何か考えすぎなんじゃないかな?」
と、彼は無謀にもそう言って関係ないと言う事を強めようとしている。
……”2人とも何か考えすぎ”、ね。一目でそれが分かると言うのも、どうかと思うのですけれども。
まぁ、認めないと言うのならば認めさせる証拠を言うまで。気分はどこぞの探偵さながらである。
「じゃあ証拠を提示していこうじゃないか。
まず1つ目。僕達に必要以上に関わっていた人間。それは魔女坂黒猫委員長だった。けれども魔女坂委員長はNPCだった。そしてその時、魔女坂黒猫と同じくらい僕と接触していた人物が居た。
例をあげれば梶原君が物を無くした時、君は彼と共に居たと言う。つまり、近くに居た物ならば隠すのも出来ると言う事さ」
「……」
その場に居たのは梶原君とこいつだけだから、梶原君が違う以上はこいつしかありえないのだから。
「そして2つ目。それは『Sette Isola』に居た魔女坂黒猫委員長ね。
彼女はある人物に頼まれて雇われたと聞きました。そしてその人物が誰かは教えてはくれなかったけれども、『Sette Isola』の意味は教えてくれました。とある言語で『七つの島』と言う意味らしいですね。そしてその名前はあなたの名字ですし」
「……」
彼は何も言わない。それはつまり、NPCでないと言う事と同義である。なにせNPCはこう言う時、喋らないと言う事は無い。同じセリフを繰り替えるのが本当のNPCのはずなのに。
「そして、もう1つ、これで最後で言っておこう。
エマン・マスター。その名前。前にお前はこう言っていた。
『生きる、のは、悪では無し』。これは英単語だ。生きるの英単語はlive、そして悪の英単語はevil。逆だ。そして生きるの逆の場合は、悪だけれどもその場合は『悪でな』しになるんでしょ?
同じようにEmanの場合は、Name、つまりは名。そしてさっきの法則に当てはめると『名無し』と言う事である。『Sette Isola』に合わせれば、『ま』は付けるべき。
そしてマスターから『ま』を取って、『スター』」
「星、って事でしょ?」
「いや、この場合はスターはスターでも、戦ぎの方のスターだ。
そしてこの『名無し』、『ま』、『戦ぎ』に当てはまる名前。
それがお前、
――――――――副委員長、七島戦。
そして、それこそがお前がエマン・マスターである確固たる理由だ」
と、僕は七島戦にそう言い放った。
次回は12月18日0時、『六』を投稿予定です。
うぅ……もう少しで終わりそうです。ちなみに後、これを入れずに2、3回で終わるつもりです。




