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その日の夜。
携帯電話に登録された1件の電話番号を僕は開く。
数秒の音と共に、電話が取られる音がする。
「……もしもし?」
『あぁ、やっぱり君か』
電話の向こうからあいつの声が聞こえて来る。
男なのにどこか高く、記憶に残りづらく、だが淡々と僕へと聞こえて来る声。
『……で、何だい? この私、エマン・マスターに何か用かい?』
そう、電話の相手はエマン・マスター。
このゲームの支配者と言うふざけた奴である。
「あぁ、分かってる。エマン、用がある。
王上院ハルリナが3人のうちの誰かが分かった」
『……冗談では無く?』
「あぁ、冗談では無くだ」
そう言うと、エマンは黙り込んだ。何か可笑しな事でもあったのだろうか?
『びっくりだよ。1か月以内でこのゲームをクリアする人間が居るなんて……。記録更新、おめでとうだ。もっとも合ってればだけど』
「ゲーム……か」
ふざけた野郎だ。まぁ、それだからそうなのだが。
『では、答え合わせだ。
くれぐれも間違えるなよ。これで間違えた場合、君はもう二度と王上院ハルリナと合わせるつもりはないから』
あぁ、分かってる。
こんなふざけたゲームだ。そんな事だろうと思ってはいた。
……大丈夫だ。これは合っているに決まっている。何せ、本気で僕の彼女である王上院ハルリナを選んだ結果なのだから。
「分かってる。答えは―――――――」
そして、僕はその名前を口にした。
そんな彼の返答はと言うと、
『―――――正解だよ。いや、驚いた。1回だけ彼女からヒントを与えられるルールとは言え、あのヒントでは答えられないと思っていたのに』
「……ヒント?」
ヒントってもしかしてあれか?
あの急に頭に浮かんだ『島ヶ原』、『伊賀』、『阿山』、『月ヶ瀬』、『大山田』の事か? 確かにあのヒントもヒントと言えばヒントだけど、あれ以外にもあるけど。
「あれ以外にも色々とヒントはあった。
例えば口調や行動に、ちゃんとした王上院ハルリナらしさがあった。だから分かったんだ」
『……口調? 行動? 面白い事を言うな。王上院ハルリナがこの世界で記憶を失っているとは、考えなかったんですか?』
「あぁ、だって……これはゲーム、なんだろ? だったら、そんな分かりづらいヒントは無いはず、そう思っただけだが」
これはゲーム。
マスター気取りの奴ならば、あからさまに不利な事はしないと踏んだ。ただ、それだけの話だ。
『正解者にはご褒美だ。
明日の昼、公園にてそいつを呼び出す。そこで運命の再開としゃれ込めば良いさ』
「あぁ、ありがたく貰っておこう」
僕はそう言って、電話を閉じる。
もうすぐ会える。
別人の振りをしていない、本当の素の、僕の彼女、王上院ハルリナに。
そう考えると、明日が待ち遠しい。
そして僕は明日を楽しみにして、眠りに落ちた。
次回は真相解明編と言う事でいつもより少し遅めの1週間後の10月30日投稿です。
さて、王上院ハルリナは3人のうち誰なのか。
皆様も考えてくれると嬉しいです。




