Ⅱ
その前の年の12月の31日、僕、芹沢冷夜は炬燵に入って確かに弟の芹沢秋人と一緒に、TVを見ていた。TVの上には僕と僕の彼女、王上院ハルリナが並んで立っている写真が写真立てに入れられている。
そして、弟とTVの除夜の鐘の金を聞きながら、TVのカウントダウンを聞いていると、
日時が変わった瞬間、頭に軽い眩暈を覚え、そのまま気を失った。
気が付いた時には1月1日の朝6時。王上院ハルリナと約束した午前1時の初詣はとうの昔に過ぎてしまっている。急いでハルリナに電話で謝ろうと、連絡先を見て驚いた。
「……なんだよ、これ」
電話の連絡網に王上院ハルリナの連絡先が消えていたからである。他にもクラスメイトの女子2人の名前が削除されていた。寝ぼけてクラスメイト数人の名前を消す事はあっても、大事な恋人の名前まで消すとは、僕も相当寝ぼけていたんだとその時は思っていた。
しかし、次の瞬間には僕は驚きが隠せなかった。僕の携帯には、見覚えのない3人の女の子の名前が携帯に入っていた。
海王霙。
上野初雪。
病院坂アリア。
全く見た事のない女子3人の名前である。1人に1つずつ、僕の恋人である王上院ハルリナの苗字を1文字ずつ苗字に入れているのが少しムカついた。
そしてメールには、連絡網から消された王上院ハルリナと女子2人のメールが消されており、代わりに見覚えのないメールが1通入っていた。
そう。嫌味な文字で、まるでおちょくっている内容が書かれていた。
メールアドレスにも全く心当たりが無く、機種も特定できそうにないアドレスだった。
【件名:プレイヤー・芹沢冷夜へ
本文:芹沢冷夜様へ。私はこのゲームの主催者、Emanです。
この世界は限りなく元の世界に近い異世界です。違う事はあなたの恋人とクラスメイトの女性2名、以上女性3名が存在していない事。そして、君の記憶に無い女性3名が居る世界です。
そして君には恋人である王上院ハルリナさんを探してください。その見覚えの無い名前の3人のうち、1人が君の恋人から、もう2人は君のクラスメイトが中に入っている。性格は完全に不一致にしていますが、魂は一緒。あなたの恋人との仲を確かめたい。
さぁ、恋人探しゲームの始まりです。無事、正解を上げますよう頑張ってください。
Emanより】
「これは……!」
いったい何なんだ、と思っていると急に見た事のない電話番号から電話がかかって来た。先程見た見知らぬ3人の番号では無かった。急いで電話を取る。
「もしもし……?」
『こんばんは、Emanです。ご機嫌如何ですか、芹沢冷夜?』
「てめぇ……! Emanか! このふざけたゲームとやらの主催者と言う!」
僕はそう言って、Emanにそう怒鳴りつけていた。
意味が分からなかった。少し気を失っただけで、どうして恋人がいない世界へと飛ばされなければならない!
『落ち着いてください、芹沢冷夜さん。先程のメールに書かれていた通り、あなたの恋人である王上院ハルリナさんは居なくなってはいません。ただ、姿を変えて記憶を失った状態で別の人生を歩ませた状態でね』
「別の人生だと……! ふざけんな、どうして僕がこんな事に巻き込まれなければならない!」
『こちらにも色々と目的がありましてね。それに別にこの現象に巻き込まれたのは、あなただけではありません。日本ではあと237組のカップルをこのゲームに参戦させています。
そしてこのゲームの目的はあなたの恋人を探し当てる事です』
「なっ……! そんなの、不可能だろうが!」
さっき、このEmanと名乗った人物は僕の恋人、王上院ハルリナは姿を変えて記憶を失くして別の人生を歩ませていると言っていた。それはつまり、この世界の王上院ハルリナは元のハルリナと別の背格好、別の性格と言う事になる。そんなのを見つけるなんて不可能に近い。
『不可能ではありません。あなたがたが真に恋人であるなら、きちんと魂で見抜く事が可能なはずです。まぁ、癖や本質までは変わってはいないですよ。それをあなたが見分けられるかどうかは分かりませんが。
あなたが見覚えのない3人は、あなたの恋人とあなたのクラスメイト2人を元に作った人達です。そして、あなたに3人とも好意を抱いています』
「つまり、何か? 本物の恋人同士ならば、どんな状態であれ見抜いて恋人に出来ると?」
『そう、それが私達が見たい光景です。最も出来るとも思っていませんが。
ちなみに3人はこの元居た世界の中でも、明らかに異世界である事を強烈に表す格好なので、3人はすぐ見つけられます。「3人が見つからないからゲームの始まりが遅れて、故に見抜く時間が無かった」と言われては、ゲームになりませんからね。
兎にも角にも。さぁ、始めましょう。勝利条件は、あなたが真の恋人、この世界の王上院ハルリナを見つけ出す事が出来るか? 敗北条件は別の恋人を選んでしまった場合か、卒業するまでに恋人を作らなかった場合。
さぁ、始めましょう。芹沢冷夜さん。ゲームを』
「ゲームだ? 上等だ、僕の王上院ハルリナへの愛を見せつけてやるよ、Eman」
『では、頑張ってください。心なしか応援してます』と言う言葉と共に、Emanは電話を切った。
そしてそれが、僕のこのくだらないゲームに参戦したきっかけだった。
ハルリナ……。
僕の愛しい彼女。
必ず、見つけ出して見せる。




