Ⅺ
「はい、あーんしてくれますね? 冷夜君?」
そう上野初雪は自分の弁当箱から卵焼きを箸で掴んで僕の口へと向ける。
僕は今、屋上にて初雪から弁当の施しを受けている。あの後、倉庫での海王霙との出来事は誤解だと説明して、どうやら納得して貰えたようだ。
けど、彼女は交換条件を出して来た。
それが今、僕が彼女から食べ物を受けていると言う事実である。
「れいやん! れいやん! 私のも食べて良いですよん」
海王霙も同じように、自分の弁当箱からミートボールを箸で掴んで僕の方に向けて来る。
最初は初雪と2人で食べていたんだが、霙は副委員長から僕らがどこに居るかを聞いた彼女は僕の所に来て霙は同じようにしてきたと言う話である。
「えっと……自分のがあるんだけど……」
と、僕は大きめの弁当箱を取り出す。
ちなみにこの弁当箱は僕の母親が作った物では無いのである。だから、聞かれたら2人に困れたら少し困るのだけれども。
「「それ、誰に作って貰ったの(ん)?」」
と、2人は明らかに怪訝そうな顔で僕に聞いてくる。
……えっと、明らかに答えるまでしつこく聞いて来るよね?
だから、僕は彼女達に正直に話す事にした。
「……アリアに」
「「……没収します(ん)」」
えー……。
2人は僕から弁当箱(アリア特製)を取った。と言うか、奪い取ってしまった。
「さぁ、冷夜さん。私の弁当を……」
「……私の弁当を食べてん?」
えっと、どちらを食べた方が良いんだろうか、と僕は悩んだのであった。
だって食べるのならば、出来るならばハルリナの作った弁当が食べたかったから。
果たしてハルリナは誰なんだ?
そして、Emanは誰なんだ?
第1巻、『俺の彼女は君では無い』
ーfin.
-Next.
第2巻、『ハルリナは君としか考えられない』




