ぽんこつぺちか
あの部屋のずっと奥
忘れられた
埃をかぶった
ぽんこつ暖炉
凍えるように寒い冬も
季節外れの暑い夏も
ひっそり、ずーと燃え続けている
いつか、
いつか、あなたの心を温められますようにって――――
~あたたかな酸素~
ふぅーって
囁くように 唄うように
この私の「愛」
空気に馴染み靡くよう 誰かに届くよう
そっと溶かしてみた 熔かして メルトしてみたんだ
さぁ
深く息を吸って
「愛」をたんと召し上がってくださいな
~愛色桜~
君の手 私の手
爽やかに 風そよぐ校庭
触れ合った 春の暖かさ
その指先から全身へ
二人を包む 桜色の空間
ヒラリ ヒラリ
気持ち染め上げる
ヒラリ ヒラリ
桃色の花びら 桃色の二人
そっと
肩、寄せ合った あの瞬間
~あたしは、猫~
猫 ネコ ねこ
あたしは猫なんです。
毛並みフサフサ 皆に自慢
体ヨタヨタ 散歩は大好き
ごろごろ ご~ろごろ
こんなに楽な人生はないと、こたつでぬくぬく思います
猫 ネコ ねこ
あたしは猫なんです。
時々 ドキドキ 考える
もしあたしが、ご主人と同じ“人”だったら? って
にゃー にゃーご
でもいいや あたし、恥ずかしがり屋だもん
――――片想いぐらいがちょうどいいんです。
~夏の恋人~
ぶっ飛んでいく夏
忘れ物
季節外れの恋人たち
ただ茫然と立ちすくんで
ぶっ飛んでいく花火
綺麗に咲いて散って
季節外れの僕達
後味の悪さに黙りこんで
春の桜のような
甘酸っぱい恋でもなかった
秋の紅葉のように
真っ赤に燃えあがることも
冬のカイロのような
温かさもなかったんだ
そう、例えるなら
あの華美な打ち上げ花火ではなく
この線香花火みたい
僕たちの恋
静かに始まり ひっそりと終わった
夏風に馴染むように 爽やかに終わった
「さよなら」
今、言われても
きっと気付けずに終わってしまう
暑さに負けたかき氷に埋もれる愛を
夏祭りの喧騒が 見事にかき消してゆく
入道雲に攫われていく愛を
セミ達の鳴き声が 雑雑とかき消してゆく
一度離れた手と手
別れの合図
迷子の恋人たち
歩きだした別々の道
一度離れた心と心
スイカ割りの残骸みたい
真っ赤に熟した心の中身
誰にも気づかれぬまま
夕日が映る砂浜の上
汚く 食べられることもなく 風に弄ばれ
夏の忘れ物
誰もいなくなった波打ち際で
少しずつ削られて 消えていった――――
~モスキートーン~
夏
汗滴る 水の音
勢いある セミの声
ねぇ聞いてよ、私の声
ひ弱で か弱くて
消え入りそうだとしてもさ
このうざいほどの羽音は
きっと君にも聞こえているはず
仰ぎ見る 青い色
美しく散る 花火の遺言
ねぇ聞こえてるんでしょ、私の声
泣いたり 笑ったり
怒ったり 喜んだり
もし、この声が
私の最後の音だとしても?
きっと君は気付いちゃくれない、気付かない
君が無視し続ける
いつまでも、いつまでも
会話になんてならない
そんな私の気持ち モスキートーン。
~紅揺~
いつからだろう?
赤くほてった この気持ち
まだリンゴにまで熟してない
情緒不安定だ この気持ち
どこか秋に似てるよ
中途半端に紅く色づいて
隠しきれないほど色づいて
でも、伝えられるほどの実は
まだなってないんだ
どうか、どうか
あの人にはバレませんように……。
~私のプレリュード~
走り出した 自分の足跡
一つずつが重なり合って 線になってた
色づき始めた 心的新連載
オレンジ色の蛍光ペン 定規なんていらないさ
ねぇ、
私だけの始まり 新展開
補助輪なんて取っちゃって 一人で突っ走りたい
躓いてこける 最後まで
とりあえず、差しのべられた優しさなんかいらないから
温かい目で見守っていてよ それだけでいい
~赤いマフラー~
混沌とした毛糸のなか
ごちゃごちゃ絡まる 赤い糸
もし、
もし「ふははははー」の一言で
世界征服できちゃうのなら
こんがらがって わけのわからぬこの関係
1から全て 直列つなぎに繋ぎなおしたい
そうしたら
そうしたら君と
もっとそばで ……手をつないでいられるのにね
~チョコのように甘く。~
君の手を握った 私の手が震える
夕暮れ時
私を引っ張って前へと進む君が
とても大きく見えた 私がちっぽけに見えた
私は
チョコのように甘い恋に浸れるだろうか
君と
カカオのように依存性をもつ恋ができるだろうか
この恋に「疑いがない」と言ったら
きっと、嘘になる
恋愛に臆病な私は
この先の見えない恋に不安を感じている
別に君のことが嫌いというわけじゃない
むしろ、大好きだ!
でも、大好きだからこそ
君に不安を感じてしまう
君のことが好きなのは
私の一方的な愛だったらどうしよう。
君は不安じゃないのかな?
ふとした疑問 ふと、君の顔を覗ってみる
あぁ、
君も私と同じだったのね
まだまだ幼さ残る君の顔に
私に微笑んで見せてくれる君の顔に
一抹の不安が隠しきれてないよ
そうだね。
私たちが今から育むこの恋は
きっと
ノンストップで走りきる快速電車なんかじゃなくて
各駅で立ち止まる普通電車のような恋なんだ
だから、お願い。
もし、
もしも私が途中で躓いて足を止めてしまった時は
迷わず私を力強く引っ張ってね
私も
君が止まってしまった時には
君の手を精一杯の力で引っ張るから
「君を愛してる」
一つのチョコレートで始まった恋は
その場の桃色の雰囲気と
中毒性のある甘ったるい香りに促されて
2月14日
ゆるい足並みで 歩き始めた。
~0~
一から始まり 零に帰る
僕らの人生
生命のレール
はじまりも おわりも
きっと同じ場所
環状線列車の一生は
また、赤ちゃんになって戻ってくる
もしかしたら
次は人間じゃないかもしんない
次は君でも、僕でもないかもね
だけど、それでも
また、会いたい
また、愛したい
二人のペチカ
永遠に
ポンコツのままでいて。
ずっと
温めといてよ、二人の心