影を継ぐ王③
弟の喪が明ける前に、冠を戴いた。
民の歓声は薄く、空気はどこか乾いている。誰もが礼を尽くすが、顔には見えない秤がある。俺の一挙手一投足は、いつも彼の影と比べられる。――それは、生きていた頃より残酷だ。彼はもう答えられないから。
「第二王子の遺志に倣い…」という文句がどれほど多いか。臣下は彼の名を祭り、法に彼の言葉を刻む。誰もが彼の“完成”だけを語り、過程の揺らぎや苦悩は忘れ去られる。俺はその忘却の中で、いつも蚊帳の外だった。捨てられたように町に落ち、名を変え、髪を染め、ただの人として忍び歩いた──しかし結局、世界は彼の思念を必要としたのだ。彼が死んでからこそ、彼は“伝説”になり、俺はその伝説の裏にある生身として晒される。
議場で刀のように突きつけられる比較。民の期待の目。嘲りとも憐れみともつかない同情。俺はゆっくりと、声を絞り出した。
「お前は…死んでも、俺を苦しめるのか。」
その一言に、誰も返す言葉はなかった。彼は安らかに眠っているだろうか。民は彼を祀り、政策は彼の名の下で行われる。だが俺は知っている。彼がいつも灯していた光は、俺の影を深くする灯火でもあったと。皮肉なことに、彼の完璧さが、俺の不在を永遠に明るく照らし続ける。
王としての仕事は次々に降ってくる。決断と演説と偽りの笑顔。胸の奥では、捨てられた男が冷たくひび割れていく。誰も気づかない。誰も触れない。彼が消えたあとに残るのは、ただ比較の連鎖だけだ。
俺は窓辺に立ち、遠くに広がる市を見下ろす。そこで生きていた自分の名は、もう戻らない。けれど問いは消えない。お前は、死んでもなお、俺を許してくれないのか──と。
※以下は、本作制作時にAIへ提示したプロンプトです。
興味がある方だけどうぞ。
弟が事故で死去し、捨てられるように放置された第一が王になる
弟の仕事ぶりと比較されながら「お前は死んでも俺のことを苦しめるのか…」てきなこと言わせたい




