姿無きもの
森の奥に生まれた“それ”は、どんな姿にも変わることができた。だが変われば変わるほど、自分という存在の輪郭は薄れ、本来の姿という概念すら失われていった。
ある日、ヒトと遭遇した。怯えた瞳、震える手。理由もなく襲いかかってきたため、反射的に殺したが、胸には疑問だけが残った。なぜ自分は恐れられ、なぜ攻撃されたのか。
答えを求め、殺したヒトの姿を借りて人里へ向かう。そこで目にしたのは、互いを疑い、僅かな違いすら許さず、同族でさえ憎むヒトの姿だった。
その歪んだ心の在りようを眺めたとき、思わず胸の内でつぶやいた。
――何だ、お前らヒトの方がよっぽど魔物より不気味ではないか。
だがそんな思いすら、すぐに霧散した。ヒトと交わることは不可能。姿だけ真似ても、決して同じにはなれない。
森へ戻る途中、自分が何者だったのかという疑問だけが、空虚な内部で鈍く響き続けた。変わるたびに剥がれ落ちた“自分”は、もうどこにも残っていない。
最奥に辿り着いたとき、私は静かに身を伏せた。
姿を保つ理由も、心を形作る核も、すでに失われている。
こうして“それ”は、ただひとつの思いだけを胸に、森の闇へ溶けていった。
――ヒトの方こそ恐ろしい、という確信だけを残して。
※以下は、本作制作時にAIへ提示したプロンプトです。
興味がある方だけどうぞ。
私は私のことがわからない
私は姿を変えることができる
それゆえ本来の自分というものがわからない
ヒトというものと遭遇した
ヒトというものからは魔物と呼ばれた
どうやらひどく怯えているようだ
ヒトがなぜか急に襲ってきた
私が一体なにをしたというのか
しかし無抵抗にやられるのも嫌なのでその場で殺した
私はなぜ襲われたのか知りたくなりそのヒトの姿となり人里へ向かった
ヒトはヒト以外の全てを敵対視する生き物のようだ
ならばヒトと交わることは不可能であると悟りまた森の奥深くへと帰った




