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一人ぼっちだった前世⋯⋯。今世は最強(最恐)愛し子として楽しく生きてます!  作者: おかき
アルスタ王国編

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86話: 母は女性は強し!

近衛と聖女達の仮の婚約話が纏まった。


「パトリック達はお腹空いてない?朝食を準備するけど食べられそう?」


「お腹は空いてます⋯⋯。」

パトリックの言葉に、サイもリュカも何故か侯爵も頷いた。


「父上は話がないなら帰られては?」

アルバートが声をかけたが、

「愛し子様に聞きたい事があるので、朝食を頂きながらにでもと。」

里奈は侯爵にニッコリ微笑まれた。


(宰相が侯爵がニッコリ微笑む時は、拒否しても無駄って愚痴を漏らしてたわね⋯⋯。)  


「では、今から作るので、皆で朝食を頂きながら話をしましょう。パトリック達は準備出来るまで少し横になっててね。」


里奈とアルバートは朝食作りに向かう。

白狐は欠伸をしながら、横になった。


暫くして朝食が出来上がり、皆で頂く。

誰も話を始めない⋯⋯。


「侯爵が聞きたい事って何です?」

里奈が侯爵に話しかけた。


そう。皆は侯爵が何を聞きたいのか、気になっていたのだ。


「そうでした。先程愛し子様は大国には既に嫌がらせをしていると。そう仰っていました。何をしたのか、お聞きしても?」


それは皆が気になってはいたが、聞けなかった事だった。

全員の視線が里奈に集まる。


「大国への嫌がらせは、女神の森からの神力を止めたのよ。だからあの国は少しずつ瘴気が湧き始めたわよ。」


全員がギョッっとなる。

神力を止める事が出来る?

しかも、瘴気が湧く事を愛し子様が許す等⋯⋯。


「愛し子様は大国への嫌がらせの為には、民達が犠牲になっても良いと?」

侯爵が真剣な顔で里奈に問うた。


「民を犠牲になんかしないわよ!

王都の王宮の周りにしか湧かないようにしてるもの。」


「そんな事が出来ると?」

侯爵が再度問いかけた。


「白狐が女神様の神力が大国に流れないように結界を張ったわ。そして白狐の別の結界は、王都の王宮以外に張ったの。魔物や瘴気が湧かないようにね。」

「だから、民に被害は行かないわ。」


平然と話す里奈だが、不安がある⋯⋯。


「神力を止めるなど⋯⋯。女神様の許可はあるのですか?」

パトリックが心配そうに聞いてきた。


それに答えたのは、白狐だった。


『女神は今は我が何をしようと何も言えぬ。それに、里奈がしたい事には女神は口を出さぬ。安心しろ。』


「それなら良かった。里奈さんや白狐様に何か罰でもあってはと、心配だったのです。」

パトリックはホッと息を吐いた。

安心したようだ。


「心配してくれて、ありがとう。大国は少しだけの嫌がらせのつもりだったから、そろそろ結界を解こうと思っていたのよ?」


「でも、私達が行くまで白狐の結界はそのままにするわ。瘴気も弱いから大丈夫だしね!」


今回もまた、「ね!」で、済ませてしまうのか⋯⋯。

いつもの事かと、苦笑いになる。


「解りました。大国の事は、私としては愛し子様の嫌がらせに感謝してます。」

侯爵が軽く頭を下げた。


里奈は「そう。なら良かったわね。」

それだけで済ませた。

里奈は相手が話したくない事を、無理には聞かないのだ。


「大国への追加の嫌がらせは、追々考えるとして。アルスタ王国でのやりたい事は一応終わったわ。」

「1週間後には、獣人国へと向かう事になります。明日は王宮で獣人国へと向かう行程等を話し合います。」

里奈は姿勢を正し、全員に伝える。


「獣人国を相手に、私は喧嘩を買ったわ。負けるつもりは無い。でも、貴方達を危険に晒すのも事実です。」

「ですが、アルスタ王国の為に。ゴッドローブを倒す為に力を尽くして下さい。」


「「「仰せのままに。」」」


全員が頭を下げた。


「ありがとう。」

「朝食を食べたら、少し寝ましょうね!

パトリック達は回復の為に、1日ゆっくりする事!」


里奈の言葉に頷き、再び食事をとる。

侯爵は家に戻り、残った者は各々部屋へと戻って行った。



目を覚ますと、お昼を少し過ぎていた。

里奈は軽食を作り、予備に取っておいたフルーツタルトを出す予定だ。

リビングに行くと、皆が集まっていた。


用意した軽食を出し、準備をしていると、

『里奈。宮の外に宰相が来ておる。客もいるがな。』


(訪問の予定は無かったはず。)

「宰相が連れて来た方なら大丈夫でしょ。

皆は先に食べててね。」


里奈の返事に白狐が頷くと、里奈と共に結界の外に転移した。


そこには、宰相と4人の女性がいた。


「里奈さん。突然の訪問で申し訳ありません。この者達は聖女の母親です。」


「娘である聖女達の為に動き、当主を従わせ聖女達の立場を戻されました。」

宰相が事の説明をする。


「そうなのね⋯⋯。」

(聖女に会わせた方が良いわね。)


「解ったわ。中に転移します。白狐、中庭の東屋に転移してくれる?」


白狐が全員を東屋に転移させた。


「聖女達を連れて来るわ。」

里奈は聖女達を呼びに邸に向かう。


残された母親達は、不安そうにソワソワしている。


『とりあえず座ると良い。』


母親達は初めて見る大きな狐に驚くことは無く、頭を軽く下げると席に着いた。


直ぐに里奈と聖女達が現れた。

聖女達は、母親が邸の中にいる事に驚いたが、里奈に促されて母親達の対面に座る。


「宰相。詳しく説明してくれる?」

里奈の問いかけに、宰相は頷き事の顛末を伝える。


昨日の陛下との謁見の後、母親達は帰って来た夫から愛し子様に見放された話しを全て聞いた。

そして、知らぬ間に娘を貴族籍から抜いていた事も⋯⋯。


母親達は相当聡い人達だった。

真っ先に動いた先は、ナサニエル大司教のもとだった。

何としても、大司教からの浄化を止めてアーグ聖女に領地の浄化をして頂く。


その為に、それぞれの母親が神殿にやって来ていた。その場で母親達は全員同じ考えである事を察した。

大司教との謁見の申請を4人で行い、大司教との話し合いでアーグ聖女の浄化をもぎ取ったのだ。


(この国の女性は聡い。そして、強いわね。)里奈の心は弾んでいた。


マリアンネの母親が口を開いた。

「大司教からはアーグ聖女に浄化をお願いする代わりに、条件を三つ出されました。」

「それは、当主の変更と娘達も浄化に同行させる事です。」


「最後は、娘の後見人である愛し子様の判断に委ねる事です。」


里奈はふと思う⋯⋯。

(ん?丸投げされてないかしら?)

正解である。


「解りました。アーグには私から話しをします。アーグは、貴女達の娘がした仕打ちを許しています。

なので、浄化は了承してもらえます。」


「マリアンネ達はどうしたい?」

里奈が聖女達に問いかけた。


「身分はどうでも良いのですが⋯⋯。セシー様と同行出来るのなら浄化に行きたいと⋯⋯。」

セシーを尊敬するケリーが答えた。


「私もケリーと同じ意見です。」

オリビアの答えに、コリンが頷いた。


マリアンネだけが何か考えている様だ。


「マリアンネ。何かあるなら話してくれる?」

里奈の問いかけに、マリアンネが視線を里奈に向けた。


「私の考えですが⋯⋯。アーグ様との浄化は喜んでお受けしたいのです。」

「身分については、貴族籍へと戻りたいと思っています。」

他の聖女達が少しだけ驚く。

身分に未だに拘るのかと⋯⋯。


「なぜ貴族籍に戻りたいの?」

里奈の問いに、

「大国に身分無い私達が同行しても、太刀打ち出来ないからです。

私達は元はアルスタ王国の高位貴族。その身分は、パトリック様達を護る手段にもなり得る。ならば、籍を戻す事に拘りますわ。」


里奈は感心していた。瞬時にパトリック達の事を考えていた事に。

また、自分達の身の安全を上げる為の手段を考え出した事に。


「そうね。身分に拘らないケリー達の考えは嫌いじゃない。でも、ケリー達の身の安全を考えマリアンネが出した答えも嫌いじゃないわ。」

里奈は母親達に視線をやる。


「聖女達にはリメル大国への訪問の際に、私に同行してもらいます。その時に高位貴族である事が必要になって来るかもしれない。ならば、籍を戻す事に賛同します。」


「その代わりに、聖女達を切り捨てた当主を外す事が絶対条件です。ですが、当主にはそれだけの処罰よ。それ以上の事は許しません。」

「それに、当主達の気持ちも解ら無くもないのよ。

あ!娘を切り捨てた事は理解しないわよ。

ただ、家門の為に愛し子に拘ってしまっただけでしょうしね。」


母親達は愛し子様は貴族が余り好きではないと思っていたのて、里奈の貴族の考え方に同調してくれる言葉に少しだけ戸惑いを見せた。


「里奈さんはそれぞれの立場を、ちゃんと理解されております。決して貴族だから対応が厳しい訳ではないのですよ?」

宰相がそう説明した。


マリアンネが頷き、

「里奈さんは力を持つ者が何をすべきか、何をしたのかで相手を見ます。貴族とか平民とか関係なく相手をただ見るだけな気がします。」


何となくだが褒められた気分になり、里奈の心が擽ったくなる。


「貴族は面倒臭いとは思うわよ?でも、それがこの世界ならば私が受け入れるしかないじゃない?」

「私がいた国は明確に身分差があった訳ではないわ。でも皆が平等かと聞かれれば、違うと言えるわ。どの世界にいても、余り変わらないんじゃないかしら。」


どの世界も同じ⋯⋯。

愛し子様の話しを聞いて、ふとマリアンネが聞いてみた。


「不躾な質問になりますが⋯。

里奈さんは、この世界をどう思いますか?元の世界に戻られたいと、考えたりしますか?」

里奈は即答した。

「帰りたいと思った事は無いわね。」

「私は、この世界の事は知ってはいるけど、まだ余り解らない。でも、アルスタ王国は大好きよ。」


ニッコリ微笑み、里奈が答えた。

1番喜んだのは、ベリル宰相だった。


「この国の人は温かく優しい人が多いわ。女神様が私を預けたのが理解出来るもの。

こうして娘を家門を助ける為に尽力する人がいる。凄いわね!」


宰相や母親達は自国を褒められ、胸を熱くする。

娘の為に動いた自分を褒めたい気分になった。


「ところで、娘からパトリック様の名前が先程出ましたが、元近衛のパトリック様でしょうか?」

マリアンネの母親が里奈に聞いて来た。


「パトリック達の婚約者として聖女達の誰か3人を付けたいの。リメル大国への対処の為だから仮の婚約になるわ。」

「でも家に籍が戻るなら、パトリック達との婚約の話しも良くないわね。」

首を傾げて、どうすべきか里奈が悩み始めた。


「愛し子様。もし娘の婚約が貴方様のお役に立つのであれば、我が家としてはお受けしたいと思います。」

マリアンネの母親が先に了承し、残る母親達も了承してくれた。


「ありがとう。役に立つからとかではないの。私のやりたい事に、聖女達が自ら挙手して私を助けてくれているのよ。

私が、ありがとうを伝えたいくらいよ。」


里奈が聖女達に、

「貴女達はお母様達とお話をした方が良いわ。ゆっくり過ごして。」


里奈は立ち上がり、席を離れる時に

「大国や獣人国の話は、申し訳ないけども控えてね。」

聖女達にこっそり囁いた。



里奈は邸に戻り、パトリック達の元に来た。

「夕ご飯は沢山食べれそうかな?」


「沢山食べたいです。」

リュカが答えた⋯⋯。リュカはクッキーをずっと食べている。

軽食では足りなかったようだ。


里奈は笑いながら、

「夕ご飯は沢山作るわね!

聖女達は、母親達と話しをしているわ。そして、貴女達との仮の婚約も認められたから諦めなさいね。」

「それに、明日は陛下にリメル大国の話しをするわ。国同士の事に発展する可能性もある。その時に陛下達が知らなかったでは済まされなくなるから。」


パトリック達は、里奈の言葉に自分達の考えの甘さを知った。

出身はリメル大国であっても、アルスタ王国の元近衛であり今は愛し子様付きなのだ。しかも自分達のトラブル相手は、リメル大国の王族なのだ⋯⋯。


自分達のせいで、里奈や皆に迷惑を掛ける事になる。

パトリックは眉間にシワを寄せ、里奈に断りの言葉を伝えようとしたが。


「迷惑を掛けるからと、私の話しを断るのは無しよ。貴方達が関わる全ての事に、私は関わるし全力で応えるわ。」


パトリックを見つめ、

「話しを断るのも許さないし、私から離れて行く事も許さない。貴方達は私達と一緒に幸せになるのよ?

私と一緒に年老いて行くの!」


「だから、リメル大国をやっつけるの!解った?!グダグダ言うなら、パトリックが欲しがっていた日本刀をあげないわよ!」


感動話からの、子供の様な発言にパトリック達はお腹を抱えて笑う。


笑い泣きと誤魔化しながら、愛し子様の深い情に感謝する。

仕えるべき相手を見つけ、それが己の力となっていく。

傾倒していく相手が素晴らし人物である事に、心が満たされる。


サイとリュカも、パトリックと同じ気持ちだった。


この幸せを手放さない。

精一杯抗ってみせる。そう心に誓う。


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