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一人ぼっちだった前世⋯⋯。今世は最強(最恐)愛し子として楽しく生きてます!  作者: おかき
アルスタ王国編

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84話: 平穏は続かない

王宮から転移した先は、新しい区間だった。

突然現れた里奈に驚きながらも、沢山の人が出迎えてくれた。


孤児達は久々に会う里奈に嬉しくて、纏わりついて離れない。

歩きにくいので、アルバートにシートを出してもらい皆で座って話しを始めた。


里奈と気さくに話す民を見て、聖女達が呆気にとられていた。

親しみやすい人柄ではあるが、これ程までに民に優しく民から好かれている人を見た事が無かった。


呆け続ける聖女達に、アルバートが声をかけた。


「不思議ですか?リリは陛下よりも立場は上ですから、貴族である貴女達には信じられない光景でしょうね。」


「あの人柄だからこそ、皆が愛し子様を慕うのです。見返りを求めず民の為に尽くしてくれる。

そんな愛し子様に何かを返したいと⋯⋯。

民達は愛し子様が安心する為に、幸せになって貰うために頑張っています。」


「リリは自分だけでなく、自分に関わる人全ての幸せを願い行動します。敵になれば容赦しませんが、一度情を持つと、とことん大切にしてくれます。」


聖女達はアルバートの話に聞き入る⋯⋯。


「貴女達が家から縁を切られた事は、早々にリリの耳に入りました。

貴女達には話しをせず、もし聖女としてやり直せるならばリリが引き受けると、話は決まっていたのです。」


「リリは同情で貴女達を引き受けた訳ではありませんよ。

貴女達があのままであったなら、放置したでしょうね。

しかし、貴女達が頑張ったから、リリがその努力に報いただけです。貴女達自身が掴んだ場所です。」


アルバートを見つめたまま、聖女達が涙を流す。


小さな子供達が泣いている聖女を気にして、必死に慰めている。


「アル。お土産を皆に配りましょう。」

里奈は聖女達の側に座った。


「アルバートから話しを聞いたのね。」

聖女達の背中を撫でて落ち着かせる。

「昨日作ったお菓子をみんなに配るから手伝ってね!」


お菓子を出して、皆に配った。

甘いお菓子に感動している。


「6番街の代表に来てもらいたいのだけど、何処にいるか知ってる?」

子供達が、手を挙げ呼びに行ってくれた。


「バタークッキーはヨーク領の特産にするから、こっちにも特産を作るのよ。貴女達も手伝ってね!」

泣き腫らした顔に、里奈が神力をかけ治癒を施しニッコリ微笑む。


「言い忘れてましたが、愛し子様は人使いが荒いので頑張って下さいね。」

言うだけ言って、アルバートは子供達と遊び始めた。


「コホン。この場所の話は知ってる?」

問いかけられ、コクリと頷く聖女達。


「私はね、6番街が貧民街って呼ばれてる、その呼び名を払拭させたいのよ。この8番街を中心に、貧しさから脱却させたいの。」


「寄付や施しは一時的にしかならない。きちんとした職を持ち、安定した収入を得ないと貧しさからは抜け出せない。」


話しの途中だが、代表がやって来た。


「愛し子様。おかえりなさい。子供達が愛し子様が呼んでると迎えに来ましたが⋯⋯。」

代表は、里奈の後ろにいる聖女達に気が付いた。

代表は、あからさまに嫌な顔をした。


「代表ってしか知らないけど、名前を聞いて良い?」

里奈の問いかけに、表情を戻し

「名前を伝えて無かったですね。マークと言います。」


「マークは聖女に何か思う事がるの?咎めないから、話してくれる?」


マークは、黙りになる。

話したくないと言うより、話せない?


「彼女達は、貴族ではなくなったわ。私にした事で親に縁を切られたのよ。」


マークは聖女達を見て、少しだけ同情を見せた。

「以前、息子が高熱で神殿に治癒を施して貰いに行きました。ですが⋯⋯。平民は嫌だと、アーグ様に押し付けたのです⋯⋯。」


「そう⋯⋯。」里奈はそう呟いた。


改心したとは言え、過去は消せない。

居た堪れない聖女達は、俯いてしまった。


「マーク。聖女達はね、ガルズ司祭や私に罰として僻地での魔物の討伐や浄化に行かされたの。そこで貧しいながらも、感謝を伝え、ご馳走してくれた民に色々気付かされたみたいよ。」


「誰でも過ちはあるわ。改心したなら、それを見てあけて欲しいのよ。」


里奈の言葉に、「愛し子様が仰るなら⋯⋯。」と、了承してくれた。


「だからね、今日と明日は聖女をこき使う許可を与えます。好きに使ってね!」


え?!


「いやいや!いくら何でも、わしが聖女さまをこき使うなんて出来ませんよ!」

マークに、大反対された。


「解ったわ⋯⋯。ならば、この私がこき使うからね。」

「あ!肝心な話しを忘れてた。まだ職が見つからない家庭はあるかしら?」

6番街に就職先を優先して回している。


「はい。まだ数件は見つからないようで⋯⋯。本人達も周りが仕事に就くので焦っています。」

「まだ若い家庭なので、優先されずに⋯⋯。」


「解ったわ。仕事を作るから畑の方に仕事に就けない人を集めてくれる?」

マークは人を呼びに、里奈達は畑へと向かった。


畑は広大だった。王都にこんな広い畑があるとは、驚きだった。

「この畑は、8番街の人達の食料と販売の為に作ったのよ。王都では手に入りにくい野菜を作ってるから、収入も十分にある。」


里奈が畝から草をズズッと引き抜いた。

草の根っこには、赤紫っぽい大きな実が付いていた。


「これは、私の世界ではサツマイモって呼んでるの。ヨーク領にある野菜みたいね。」


聖女達は、これが野菜なのかと見入っている。


「お菓子の材料になるから、これから沢山収穫してもらうわよ!」


里奈が率先して鍬を担ぎ、畝からサツマイモを掘り出す。

土の中からコロコロ出てくる様子が楽しくなったのか。

聖女達が里奈の掘り起こした畝から、手が衣装が汚れるのも気に留めず、自らサツマイモを必死に掘り出している。


合流したマークが聖女達のその姿を見て、本当に改心した事を理解した。


「家族を連れて来ました。」

マークの声に里奈が振り向いた。


「ありがとう。悪いけど、先にこの野菜を孤児院の厨房の外に一緒に運んで欲しいのよ。」


里奈と聖女達の周りには、カイヌ(サツマイモ)がゴロゴロ転がっていた。


連れて来た家族も参加して、沢山のカイヌを運んだ。

外にカイヌを広げると、里奈が水魔法でカイヌを洗い、風魔法で乾かした。

「これを、厨房の中に運ぶわ。」


またもや皆でカイヌを運ぶ。

重いカイヌで、聖女達はヘロヘロだった。


「定職を貴方がたに割り当てようと思うの。このカイヌを使って、お菓子を作って販売して欲しいのよ。」


職に就けると聞き、若い家族達は皆喜んでくれた。


「今日は試作品を作ります。この区間と6番街までの人、全員に配るから沢山作るわよ。」


里奈の指導のもと、皮を剥き水に晒す。

蒸し器を沢山並べ、何度も蒸し熱いうちに潰す。

バターは、男性達に任せた。

手伝ってくれる人も来たので、バターも沢山出来た。


バターとてんさいで作った砂糖を加え、牛乳を少し加えた。

型がないので、皆で色んな形を作り焼いていく。


良い匂いに釣られて、孤児院の外には沢山の人垣が出来ていた。

焼き上がると、皆に配って行く。


美味しい!と、大好評だった。


マークを呼んで、工場を増やすから人手をお願いする。

勿論、バターを作製する道具をヤービスに作ってもらう。

この工場で、フルーツタルトも貴族向けとして作る。

フルーツは温暖で果物が沢山あるヨーク領から、転移で運ぶ。

貴族向けを作る理由は、愛し子様は貴族も気にかけてますよ!アピールだ。


お菓子の工場や販売は、エミルに任せている。

実家の商会に販売するお菓子を持って行って貰い、価格等を決めてもらうのだ。


日が暮れる時間まで、里奈は8番街の為に働いていた。


アルバートが、孤児院にエミルと一緒に迎えに来てくれた。

「リリ。そろそろ宮に帰りましょうか。」

里奈は聖女達に、

「私の宮に今日は泊まってね。実家には帰れないし神殿にも居辛いでしょ!」


里奈の気遣いに感謝し、皆で宮に戻る。

白狐も王宮から帰って来ていた。

夕食後のお茶の時間。

エミルからの商会での報告を聞く。


「スイートポテトと、フルーツタルトは父に大変好評でした。

フルーツタルトは、母から王妃様への贈り物としてお茶会に持参するそうです。

砂糖の話は他の商会との話し合いで決まるでしょう。野菜の販売も順調ですし、8番街の収入は安定しています。」


エミルからの説明に、安堵する。

「離れていたから心配だったけど、皆頑張ってくれたのね⋯⋯。

8番街は、もう大丈夫ね。」


エミルは里奈の言葉に頷いた。


「王都でのやり残しは無くなりましたか?」

アルバートの問いに、里奈は頷いた。


「貧民街と呼ばれなくなった時が、私の本当の願いが叶う時ね。身分や収入の格差はどの国にも、世界にもあるわ。でも、その差を少しでも小さくする事は出来る。

私はその力を持っている。ならば、存分に使うだけよ。」


(里奈さんは貴族が嫌いだと思っていたけど、違うのかしら⋯。)

里奈の性格をまだ把握出来ない聖女達は、少しだけ困惑する。


白狐が突然声をあげた。


『厄介な代物が来るぞ!!』


白狐は自身がかけた結界を瞬時に解いた。

それと同時に、中庭にドーンッと何かが落ちた様な音が響いた。


白狐が全員を直ぐ様転移させた。

白狐が宮の結界を強化し張り直す。


庭先にいたのは、サイとリュカを両脇に抱えたパトリックだった。

パトリックは膝を突いたまま、2人を抱えていた。


パトリックが2人を横にする。


聖女達は、ヒッ!!

と、悲鳴をあげた⋯⋯。


サイとリュカは、全身の肌を隠すくらいに黒い紋が刻まれている⋯⋯。

パトリックは、全身から血を流し虚ろな目で里奈を見ている。


「里奈さん。お願いします。

二人を⋯。二人を助けて下さいっ⋯。」


それだけ伝えると、パトリックは意識を手放した。


里奈がサイとリュカに近付こうとしたが、アルバートに制止される。

里奈はアルバートを睨みつけたが、アルバートが

「この紋が女神様の神力に反応する物であれば、二人は死にますよ。」


アルバートの言葉に、魔道具の件を思い出す。

里奈は後ろに下がり、アルバートに二人を任せた。

その間、聖女達にパトリックに治癒をお願いする。


アルバートは紋を確認しながら、魔術鳥を放つ⋯のでは無く、転移させた。


直ぐに現れたのは、アルバートの父である侯爵だった。

「これは⋯⋯。」

侯爵は二人の紋を見た瞬間に、答えを導き出したようだった。


「侯爵。この二人の紋はなんなの?」


「二人に刻まれた紋は、一つではありません。幾つもの紋を重ね掛けしてます。」


「奴隷紋に魔力封印紋に、四肢の束縛紋⋯⋯。」

侯爵が里奈の瞳をしっかりと見て、


「暗殺依頼紋もあります。普通の暗殺依頼は、書面にて誓約を交わします。

身体に刻む等、本来あり得ない。それ程この紋を刻んだ者は暗殺対象者を亡き者にしたいのでしょう⋯⋯。」


里奈は、暗殺対象が自分である事を侯爵の話しで理解した。


「そう⋯⋯。」

そう呟く里奈は、自分の体を真っ白な神力で覆った。


「女神様の神力に反応するようになってる?」

侯爵が頷いた。


「皆動かないでね。白狐はサイとリュカ以外に結界を張ってくれる?

アルバートは、青龍の神力を込めて強力な封印紋を作って欲しいの。」


里奈が伝え終えた瞬間、ヤービスが里奈により強制的に転移させられてきた。


いきなり景色が変わり、里奈を目にしたヤービスは文句を言おうと口を開こうとしたが

「ヤービス。文句なら後で聞くわ。今は時間がないの!

大きな空の魔石があるわね。ソレを出して、どんな魔術にも耐えれるように魔石を

強化して!早くっ!!」


声を荒らげ必死な里奈。

ヤービスが周りを見渡す⋯。血を流すパトリックに、真っ黒い紋に覆われた人⋯⋯。

考えが纏まらないが、とりあえず里奈の指示に従って魔石を強化した。


里奈はヤービスから魔石を受け取ると、白狐を連れて二人の側に膝を突いた。

隣にいるアルバートに声をかける。


「刻まれた紋を、白狐の神力を使い剥がすわ。でも、紋は消さない。浮き上がらせるから、アルバートの白魔術で紋を捕まえて欲しいの。そして、青龍の神力を纏わせて魔石に入れて欲しい。」


アルバートは頷いて、いつでも使えるように白魔術を展開する。


里奈が真っ白な神力を両手に集めた。

横たわる二人に、神力を纏わせる。

二人の姿は、里奈の神力で見えなくなる程に濃く神力をかけていく⋯⋯。


白狐がサイとリュカに近付き、まずサイの額に白狐が額を合わせた。


紋が浮き上がり始めた。

完全にサイから剥がされたのを確認すると、アルバートが白魔術で紋を捕まえ神力で包み、ヤービスが作った魔石に流し込んだ。


リュカも同様に行い、二人から紋を剥がす事が出来た。


サイとリュカの顔色は戻ったが、目覚めなかった。


『精神的疲労が限界を超えていたようだな。暫くは目覚めまい。』


パトリックも同様のようだ⋯。


聖女達は、状況を全く理解出来ない⋯。

目の前で行われた事は、とんでもない事で人間が出来る事ではない⋯⋯。

困惑を隠せない聖女に、里奈が少しだけ説明する。


「サイとリュカは誰かに私の暗殺を指示されたみたいね。多分二人は拒否した。だから、強制的に体に刻んだ。

パトリックは状況を把握し、二人を助け出し私の元に来た⋯⋯。」


「白狐はね貴女達には言ってないけど、私がいた世界の神の一柱で高位の神なの。

この世界の全てに影響しない神力を持つの。私は女神様と白狐の二人の神力を扱えるの。」


話しの内容は理解出来た。

出来たが、神がもう一人存在する事。

その神が目の前にいる事。

聖女達は腰を抜かしてしまった。


「側付き達や私に近い人達は知ってるわ。貴女達にも話すつもりだったけど、こんな形で話す気はなかったわ。」


辛そうに話す里奈に、聖女達は腰を抜かしている場合ではないと気が付いた。

愛し子様が大切にしている近衛3人が、この有り様なのだ。


横たわる3人を見る里奈の目は、悲しみで滲んでいた。


白狐とアルバートは、里奈の報復相手が増えたことを認識していた。


3人が目が覚めるまで、皆で待つ事となった⋯⋯。




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