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一人ぼっちだった前世⋯⋯。今世は最強(最恐)愛し子として楽しく生きてます!  作者: おかき
アルスタ王国編

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82話: 戦いを忘れて楽しい一時を

朝から里奈は忙しくしている。

前夜から里山の家に戻り、早朝からお弁当の準備をしている。


日本の調味料は使わずに、サンドイッチと

塩むすびと、もどきおにぎりを握る。

おかずは、唐揚げに卵焼きを入れる。


沢山作るので、料理上手なアルバートと2人で作る。


デザートが本日の主役になる。

この世界の材料で、日持ちをする日本で作ったお菓子を作るのだ。

とりあえず、パウンドケーキとバタークッキーを作ってみる!


バターはこの世界に無いので、手作りする。

ヤービスがシェイク出来る容器を作ってくれた。

生乳を入れると、勝手に上下にフリフリするのだ!

魔術って本当に便利!


ベーキングパウダーもないが、バターや卵白を泡立て代用品にする。


お菓子の焼ける様子を眺めていると、


「うわぁー!懐かしい香りがする!」

と、台所に寝起きのヤービスが走ってきた。


「エミルが異世界のお菓子を商会に出したいらしく、試作品として作ってみたの。今日のオヤツにもなるかなーと思って。」


オーブンから焼き立てのパウンドケーキを取り出した。

眷属達が女神の森から採って来てくれた、木の実を入れてみた。


「リリ。これはまだ食べてはいけないのですか?」

アルバートはケーキを見たまま聞いて来た。

「冷ましてからが美味しいから、もう少し後でね。待ってる間に、バタークッキーを作りましょうか。」

「簡単だから、ヤービスもやろう!」


生地をこねたり、型抜きしたり。

3人でワイワイ作って行く。


「クッキーの型抜きは、今日は私のを使ったけど。型抜きの種類をもっと増やしたいわね。それもエミルに伝えとかないと⋯⋯。」


「里奈さん。型抜きの話は後日にしよう。今日話したら明日から直ぐに動いちゃうよ。仕事を増やすだけになる。」


里奈はヤービスの言葉にハッとなり、

「そうね。私が出立してからヤービスが話してくれる?」


「解った。何か思いついても、必ず俺かアルバートに言いなよ。

三人娘に伝えたら、喜んで働き始めるからねー。」

ヤービスは焼けていくクッキーを眺めながら、そう提案してくれた。


アルバートが隣にいないと気が付いた里奈が、アルバートを探すとコタツにいた。

パウンドケーキをゆっくり風魔法と氷魔法で冷ましていたのだ。


ヤービスを静かに呼び、台所から2人でアルバートを覗いていた。

必死に笑いを我慢したが、その可愛らしい行動に2人は我慢出来なかった。


笑い声に気が付いたアルバートだが、無視してパウンドケーキに貼り付いている。


(パウンドケーキの味見は、アルバートが1番にしました。

とっても気に入ったようです。)


お弁当とオヤツの準備も終わり、ヨーク領の邸に転移した。


朝食の為にダイニングに行くと、沢山の人がいる。


「⋯⋯⋯。」(人が多くない?)


気になりつつも、席に着く。


「おはよう⋯⋯。今朝は人が多くないかな?」


ライアンが苦笑いしながら、

「ナタリー達とのお出かけに同行するらしく、パトリック達が連れてきた者が全員行くと⋯⋯。」

(ナタリーとサーシャがバチバチしているのは、それなのね⋯⋯。)


「全員って⋯⋯。」


「リリと一緒にお出かけですから、楽しみなのでしょうね。私も楽しみですよ。」


アルバートの言葉に反応したのは、以外にも側付きの男性陣だった。


「男性陣は留守番だろ?!

今日は、女性達が里奈さんと出かけるのだから。」

「アルバート。お前も留守番だ!」

ギルベルトとライアンがアルバートに伝えた。


それに反応したのはアルバートだけでなく、パトリックと団長達だった。

ガックリ感が半端ない⋯⋯。


(団長達も行きたかったの?!)


アルバートとライアンが言い合いを始め、サーシャとナタリーの睨み合いは続いてるし。

揉め始めたからか、聖女達がオロオロするし⋯⋯。

(カオス!!)


「あーもー煩い!!全員で出かければ良いでしょ!せっかくのお出かけを、無しにしても良いのよ!?」


全員が里奈に注目した。


「特にサーシャとナタリー!仲間なのよ。仲良くしないなら、置いてくからね!」

「朝食がまだなら、さっさと食べる!」


里奈は視線を向けずに朝食を食べ始めた。

全員が朝食をまだ食べてなかったのだ。

オズオズと席に座り、一斉に食べ始めた。


(朝食も食べずに何やってるんだか⋯⋯。)

「女性達は動きやすい服装でね。男性は帯剣しなくて良いわよ。団長達もね。」


団長達が顔を里奈に向け、不思議そうに見ていた。


「今日は全員お休みよ。だから、仕事に関する物は持っていかない。白狐がいるから安全だし。」

「パトリックもよ!武器を忍ばせて来たら、追い返すからね。」


パトリックは苦笑いしながら、忍ばせている武器がバレてる事に驚いた。


「ところでサイとリュカを見ないけど、どこにいるの?」

ヨーク領に来てから、一度しか顔を見ていないのだ。


「ちょっと問題事があり、急遽自国に帰ってます。もう数日で帰って来るかと。」


パトリックが答えたが、これ以上の話は今はしない空気を出した。


「解ったわ。一緒にお出かけしたかっただけだから、大丈夫よ。」


これ以上話さないパトリックと、それを理解し追求しない里奈⋯⋯。

2人の信頼関係の深さが見えた様だった。


「ご飯終わって準備出来たら、庭に集合ね。」


朝食を終えた里奈がさっさとダイニングから出て行った。

全員慌てて朝食を食べる。


〜 ❀ 〜


庭に全員集合!


人数の多さに驚くが、皆がお出かけを楽しみにしているのが解る。


「今から転移します。」


里奈は全員転移させた。


景色が変わったが⋯⋯。

目に映る光景は、女神の森だった。


出迎えてくれたのは、2頭の大きな魔獣⋯⋯。

2頭を知らない者達は息を呑む。

佇んで動けない。


白狐が先に2頭に近付いた。

『出迎えてくれたのか?』


〈愛し子様が遊びに来られるのなら、我々もと。〉


「女神様の高位の眷属のフェンリルよ。

女神の森を守護してるのがこのフェンリルね。」

里奈の説明に始めて眷属を見た者は驚く。

会話が出来るのは、高位の眷属だからだ。


「今日は頑張って働いてくれる人達にゆっくりしてもらいたくて、ここに来たの。

どこかお勧めの場所が森にあるかしら?」


フェンリルはお互い見合い、瞬時に全員を転移させた。


木々が無い草原のような場所だ。

「ありがとう。ここで走り回ったりしても大丈夫?!」

里奈の問いかけに、頷くフェンリル。

里奈は笑顔になり、


「今日はカズラもヒイラギも来てるから、皆で遊びましょう!」


ヤービスが里奈の側に来ると、遊び道具を出した。


「日本で昔の子供達が遊んでた物よ。」


竹馬、縄跳び、だるま落とし⋯⋯。

だるま落としは男性達用に、人より大きく作った。


「本当はまだ他に作りたい物はあるの。でも、お金がかかるおもちゃは平民には手が出せないし子供達が楽しめないでしょ?

貴方達でも楽しめるなら、このおもちゃを販売したいのよ。」


「簡単そうに見えるけど、かなり大変なのよ?」


「里奈さんは、このおもちゃは使えるのですか?」

ライアンが竹馬を不思議そうに見ていた。

里奈は早速足を乗せ、歩き出す。

軽く走ったりもした。


「重心の置き方が大事よ。剣術やるなら、出来ないとね!」

その言葉に、団長達が挑戦し始めた。

中々上手くいかず、手こずる姿は面白い。


だるま落としがとても好評だった。

上手く叩かないと、崩れる。

崩れても、それが楽しいらしい。

カズラとヒイラギは、縄跳びをしていた。

とても上手で、男性陣に身振り手振りで教えている⋯⋯。


これなら販売しても、楽しめるかな。


女性陣はシートを数枚敷いて、お喋りを始めた。

「異界の遊びは、体力使うのですね。」

マリアンネが男性陣を眺めながら、呟いた。


「ボードゲームと言って、頭をとても使うおもちゃもあるわ。でも、大人や貴族は楽しい事にお金を使えるけど子供達や平民は無理でしょ?

まずは、そっちからよ!」


「里奈さんは、民達を大切にされますね⋯⋯。」


聖女達が気不味そうにマリアンネに視線をやる。


「いえ!批判ではないのです。自然に弱き者を優先されるので凄いなと⋯⋯。」

語尾が小さくなっていく。


「貴女達は高位貴族として教育を受け、それが正しいとしてきた。この世界では普通の事でしょ?でも、どの世界にも弱者がいる事を忘れてはいけないわ。高位貴族なら、尚更ね。」


「でも、貴女達は大丈夫よ。ちゃんと強き者と弱き者をちゃんと理解してるわ。」

ね!!

聖女達は褒めてもらえて、顔を綻ばせた。


「側付き達も同じよ。貴女達は人として素晴らしいのだから、自信を持ってね!」


「やけに今日は里奈さんが褒めますね。」

ナタリーが胡散臭い視線で告げた。


「貴女達と一緒にいれる時間は限られてるじゃない?言葉で気持ちを伝えて、離れても信頼が崩れないようにしたいと思ったの。」

時間が限られている⋯⋯。

その言葉にしんみりとなってしまった。


空気を変えようと、里奈が遊びに誘う。

「カズラとヒイラギも一緒に遊びたいだろうから、鬼ごっこをします!」


側付き達はやり方を聖女達に教え、皆で走り回った。


楽しい時間ではあるが、流石にお腹が空いた。

「そろそろお昼ご飯にしましょ!!」


その声に、男性陣も勢い良く戻って来た。


「お弁当を沢山用意したわ。口に合うか解らないけど、良かったら食べてね。」


シートにお弁当をひろげる。

おにぎりと唐揚げに男性陣が食いついた。

聖女達は、おにぎりを不思議そうにしながら口にするが美味しかったのだろう⋯⋯。2個目に手を伸ばしていた。


勿論、フェンリルにもお弁当とオヤツを渡した。

白狐は、フェンリル達と一緒に食べている。


唐揚げの取り合いをする男性陣。

人目を気にしながらも、おかわりをする聖女達。

簡単な事しか出来なかったけども、少しは楽しんで貰えただろうか⋯⋯。


自分と関わる事で命の危険までも背負わせている事に、申し訳なさを感じていた。


「リリ。オヤツはまだですか?」

アルバートが、里奈にオヤツを要求してきた。


「忘れてた!!アル、ありがとう!」


オヤツの入ったバスケットを出した。

特大バスケットは、男性陣。

普通のバスケットは、女性陣。


蓋を開け、バターの良い匂いに全員が手に取り食べ始めた。


「クッキーなんだけど、味が違うわ。シットリで美味しい!」

エミルの言葉にウンウン頷きながら、手を休めず食べている。


「この世界にバターって物がなくて、自分で作ったの。誰でも簡単に作れるお菓子よ。」

「今度一緒に作る試作品ね。」


「ナタリーさん達と、このお菓子を作るのですか?」

脳筋サーシャが聞いてきた。

「そうよ。領地の特産の一つになればと話しをしてたの。」


ナタリーが少し自慢気な空気を出す。

サーシャが気が付き、里奈に自分も参加したいと言い始めた。

それを聞いた聖女達も参加を希望した。


ナタリーは少し嫌そうにしていたが、

「里奈さんと一緒にいたいのは皆同じですものね⋯⋯。」

キャロルとエミルが、ナタリーの言葉に同意した。


「お菓子の種類を増やすから、女性全員で作ってお茶会しましょ!」

全員喜んで、里奈の案を了承した。


午後からは、男性陣が魔術で遊び始めた。

カズラとヒイラギはボールのように飛ばされていて、楽しんでいる。

カズラとヒイラギを獣人国には連れて行けない。女神様の神力を受けた眷属は全員お留守番なのだ。

里奈はカズラとヒイラギを、団長達と仲良くさせたかったのだ。

寂しくならないように⋯⋯。


心配事が一つずつ解決していく。

その度に憂いがなくなる度に、報復へと近付いていくのが解る⋯⋯。

ヨーク領を離れ、女性陣と離れる寂しさを心の奥に隠す里奈。


白狐が里奈の後ろに横たわり、尻尾でポンポンする。

大丈夫だと、そう伝えているようだ。


「明日から聖女達に魔術を教えるけど、大丈夫?」

マリアンネが頷いた。

「大丈夫です。楽しみにしています。」

「セシー様が使う魔術は素晴らしかったですもの!凛とした空気で、素敵でした。」

ケリーが思い出し、感動した事を話す。


「ケリーはセシーみたいになりたい?」

「セシーの魔力操作は素晴らしわよ。貴女がそうなりたいなら、今のままでは無理よ。明日から特訓よ!!」


セシーを褒められ嬉しい里奈は、ケリーを鍛える決心をした。

ケリーは、指導してもらえる事に大喜びだ。


「ケリーさん。喜びたい気持は解るけど、地獄をみる覚悟はしといた方が良いわよ。」

ナタリーの言葉に、他の側付き達が同意の頷きをする。

少し臆するが、

「セシー様に近付く為にも、頑張ります!」

握り拳を片手に意気込むケリーを、側付き達は温かい目で見ている。

里奈に出会った頃の自分を思い出して⋯⋯。


「ヤービス!!大縄跳びをやろう!」


男性陣を引き連れ、ヤービスが大縄を出した。

里奈とヤービスが回し、皆を一斉にジャンプさせる。

誰かが引っかかり中々上手くいかない。

むきになり、どんどん白熱していく。


体を動かし、全員ヘロヘロ状態になった。


〈そろそろ時間です。〉


フェンリルの声に、日暮れが近い事に気が付いた。


「フェンリルさん。今日は森で遊ばせてくれて、ありがとう。

また、オヤツを持って遊びに来るわね!」


全員でフェンリルに頭を下げ、お礼を伝えた。

「またねー。」


里奈達は、日暮れ前に邸についた。

夕ご飯は、体力のある男性陣が作ってくれる。


森での遊びが楽しかったと、会話は尽きなかった。


古い遊びだったので心配していたが、楽しんで貰えたなら良かった。


「私から、貴方達に贈り物があります。」

「男性陣には、チェスを、女性陣はオセロを用意したわ。。

食事が終わったら、ヤービスに出して貰って遊んでね。」


それを聞いた皆は、急いでご飯を食べた。

ヤービスを中心にゲームの説明を聞いて遊び始めた。


里奈はこっそり席を立ち、部屋に帰る。

朝早くから準備して眠いのだ。


ダイニングから聞こえる笑い声を聞きながら、足取り軽く部屋へと戻る。


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