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一人ぼっちだった前世⋯⋯。今世は最強(最恐)愛し子として楽しく生きてます!  作者: おかき
アルスタ王国編

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70話: ヤービスは悪くない!許すまじ獣人国

里奈が側付き達に獣人国について語り始めた。


「獣人国は、今は最低の国家に成り果てているわ。ヤービスが関係してるから嫌っている訳ではないの。王族や貴族が腐ってる。」


側付き達は黙って里奈の話を聞く。


「ヤービスを最初に見たのはヨーク領の討伐に向かう最初の時ね。」


ヤービスがこれまでの事を掻い摘んで話し始めた。


ヤービスは獣人国の第一王子として誕生した。

毛色が希少な三色持ちとして、周囲からはそれなりに大切にされていた。

だが、ヤービスの母は第二妃(側室)セアラであった。

身分は獣人国のアクトン公爵家の令嬢だった。


ヤービスの父でるシーヴァ王の王妃は、西にある人族の大国のアリーシャ第二王女だった。

アルスタ王国よりは格下ではあるが、世界で三番目に位置する強国である。

因みに獣人国は四番目である。


そのアリーシャ王女がシーヴァ陛下に恋をし、番であるセアラ令嬢を権力で蹴落とし王妃の立場に就いたのである。

シーヴァ王の番であるヤービスの母セアラは、妃の順位など気にしなかったのだ。


しかも、息子であるヤービスには全く関心がなく、夫である陛下のみに執着する。

父であるシーヴァ王も、ヤービスには興味を見せなかった。

ただ、三色持ちの事だけは誇らしかったようだ。

たがそれも息子に対してではなく、産んだセアラに対してのみだった。


番同士だから仕方ない事ではあるのだが、余りにも放置が過ぎる為に宰相たちにより、両親から離された。


また、王妃は立場はあるが番ではないため獣人国では肩身が狭かった。

第二王子イーロを出産したが、二色持ち。

二色持ちでも凄い事だが、第一王子のヤービスが三色持ちだった為に更に下に見られる事になる。


アリーシャ王妃は執拗にヤービスの暗殺を目論んだ。

宰相達は、ヤービスを不憫に思い懸命に庇い育ててくれた。


暗殺者達を回避しながらの王宮暮らしも、慣れてくれば普通に過ごせた。

三色持ちは特殊な体質で、毒は効かない上に怪我をしても回復が異常に早い。

魔力も豊富で、何より頭がきれる。

しかもヤービスが秘密にしているが、転生者である。

転生者は、三色持ち以上の価値があるとされている。

産まれた時から記憶のあるヤービスは、何となく隠す事を選んでいた。


今の獣人国を嘆く重鎮達は、謀反を起こす寸前にまで追い詰められた。


そこまでは世界の王族によくあるお家騒動だ。

里奈が怒りを持つのは、王妃達のその後の行動だった。


王妃はある日

「三色持ちとは、魔物を呼び寄せると知っておるか!?」

ある夜会で、突進アリーシャ王妃が発言した。

会場中がその言葉に騒然となる。

「根拠も無くその様な発言は、止めて頂きたい!」

宰相がそう発言する。


「根拠か⋯⋯。では、証明してやろう。」

「ヤービス。ここに。」

と、アリーシャ王妃がヤービスを自身の前に呼ぶ。

ヤービスが前に立った瞬間、左腕を深く斬られた。

ボタボタ流れる血に、会場が騒然となるが。次の瞬間、魔物が会場に現れた。


会場が大騒ぎになる中、王妃の側のローブを被る男が魔物を討伐した。

ヤービスの腕を回復させると、王妃の後ろに控えた。

「見たであろう!?ヤービスの血は、魔物を呼ぶ。なぜなら、三色持ちの希少種は魔物の好物だからな!!」

会場は騒然となった。

今まで崇めていた王子が、魔物の好物だったなどと⋯⋯。

王子が血を流す度に魔物が来るのか⋯⋯。

その未来を考えると、恐怖でしかない。

皆が不安になり、恐怖に怯えだす。


ヤービスは何も言い返す事はしなかった。

もう、どうでも良かったのだ⋯⋯。


会場からは、王子を罵る声まであがり始めた。


これを好機と踏んだ王妃が、

「ヤービスを魔物の生贄にする。アルスタ王国の国境に魔物が発生するとこの者が予言した。

魔物が発生したなら、生贄としザイラー獣人国には手を出さぬ様にするとな。」


会場は王妃の国を護るその案に賛同した。

宰相達が懸命に反論するも、逆賊として捕らえられてしまった。


ヤービスはその光景を見て、王妃と交渉した。

素直に生贄になる故、宰相達の解放を取り引きしたのだ。


宰相達の牢の前にヤービスは連れて行かれ、入れ替わりでヤービスが牢に入った。

「宰相。今までありがとう。私の事にこれ以上関わってはならぬ。一族連座は避けなければならない!解ったな。」

宰相達も家族や一族を思えば、これ以上は何も言えなかった。


宰相達は逆賊として、役を降ろされ貴族籍も抜かれた。

素直に受け入れる代わりに、家族や一族への処罰を無しにしてもらった。

宰相は最後にシーヴァ王とセアラ妃に職を辞す挨拶に行く。

さりげなく、ヤービスの生贄の話しをしたが気にも止めなかった⋯⋯。


宰相達は最後にヤービスの面会が許された。

「アルスタ王国に愛し子様が顕現されました。冗談だと思い調べました所、黒髪黒目の本物の愛し子様でした。

アルスタ王国には知り合いがおります。連絡をとり、何としても殿下を助けますからね。待ってて下さい。」


小声で伝えられるその言葉に、少しだけ興味を持つ。

(日本人か?異世界転移か⋯⋯。)

そんな事も数日すれば、忘れていた。


アルスタ王国の国境に、予言通り瘴気と魔物の群れが発生した。

それを受け、王妃はローブの男と共にヤービスの生贄を強行した。


森に向かう道中の会話を盗聴の魔術を使い聞いていた。

ずっと退屈に過ごしたヤービスは、前世の知識を使い色んな独自の魔術を作っていた。


「これで私はザイラー獣人国を手にする。ゴッドローブ殿は、愛し子のいるアルスタ王国を滅ぼす手筈が整う。お互い良き日じゃ。」

「アリーシャ様のお力添えです。メイソンは多分処分されたのでしょう。魔力を感知出来ませんからね。

ま、この瘴気を使い領地を侵しS級やSS級に成長した魔物をぶつけますよ。」

2人の笑い声にある事を思い出す。


それよりも、愛し子様にザイラー獣人国の策略を伝えねば!!

と、到着するまでに何パターンも想定する。

前世の彼はIQ180を超える天才だった。

個人でネット会社を設立し、会社を大きくしたやり手だった。


策は練った。

一人置いて行くように誘導するのは、簡単だった。

王妃やローブの男も簡単に誘導した。

だが、魔力感知の言葉で自分が生きている事が知られたら行けないと、自身の魔力を魔術で隠す術式を作った。


魔物の中に放り出されてからが問題だった。

魔術は少し時間が過ぎてから、徐々に消した。

魔物に殺されたと見せかけるために。

魔物からひたすら逃げ回り、アルスタ王国を目指した。

国境を超え街道沿いを歩き、愛し子を目指したのだった。



「こんな感じかな。」


信じられなかった。あの魔物や瘴気は自然発生ではなく獣人国が放ったものだったとは⋯⋯。

皆は驚き、声を出せないでいる。


「ヤービスは自分は悪くないのに、ずっと謝るの。頭を下げ、涙を流して謝るのよ。」


「謝るべき人物はヤービスではない。

ヤービスは私に伝える為に魔物に襲われていたわ。あと少しで食べられてた。

魔力を消せるなら、そのまま逃げれば良かったのにそれをせず、私に会いに来たの。」


「私は、獣人国を許さない。

ヤービスだけじゃない。ヨーク領では沢山の人が亡くなったのよ!あの惨状を見て、許す訳ないじゃない。

やり返してやると、この事に関わった者全てを許さないと。

私は、あの森の石碑に誓ったわ。」


里奈の言葉に側付き達は、

「里奈さんは私達に選択する権利を渡しましたね。私は獣人国に同行しますよ。」

と、手をあげたのはギルベルトだった。

他の5人も手をあげた。


「ちょっと良いだろうか。」

ライアン殿下が発言の許可を求めた。


「私の話しが終わるまで黙って聞いて欲しいのだが。良いだろうか⋯⋯。」

殿下の言葉に、全員が了承した。


「リチャードには承諾を得ている事だが、私は王太子にはならない。リチャードが王太子となる。

私は愛し子様の側付きとして尽力し、リチャードか即位したと同時に大公の位を賜る。宰相や大司教にも相談し、両陛下との交渉に立ち合って貰う手筈だ。王族からは一時的に抜け、公爵となる。」


側付き達は驚き、固まっていた。


「私も獣人国に同行する。」


殿下が里奈の目を見て発した言葉は、強い決意を秘めていた。


「殿下の決意は受け入れます。全員で獣人国に殴り込むわよ!」

「でもその前に、孤児の事や女性の立場の向上を整えてからね。ヤービス。それまで少し待っててね。」


ヤービスは泣いていた。

アルバートに背中をさすられなが、「ありがとう」の言葉を繰り返していた。


殿下が突然、

「もうすぐ王族ではなくなる。殿下ではなく、ライアンと呼んでくれ。年は皆より少し上だが敬語も要らない。同じ側付きだからね。頼むよ。」


側付き達は殿下の立場に遠慮があり、少しばかり丁寧に接していた。

殿下は距離を感じてしまい、寂しかったのだ。

「殿下を丁寧に扱う必要がないなら、ライアンと呼びますよ?」


さらっと口にするのは勿論アルバートだ。


「アルバートに丁寧に扱われた記憶は一度もないぞ?名前もそれで良いよ。」


「そうね。アルは兎も角、私も殿下の名前以外は丁寧にしてなかったなー?こき使ったし、勝手に地獄の討伐に加えたし⋯⋯。もしかして、アルより酷い?」


側付き達も、そうだなぁーと同意した。


仲間になるのだ。殿下の提案に否はなかった。


「ライアンは陛下のとこに話し合いでしょ?説明が早く出来る様に、ヤービスも連れて行ったら?」


ヤービスは懸命に拒否をしたが、ライアンが強引に引き摺り転移して連れて行った。


「さて。白狐達には獣人国を調べて貰っているわ。早く孤児の事をやり遂げるわよ!!」


やる事は沢山あるのだ!

アルバートが紅茶を淹れ、お菓子を出した。

皆で話し合いを始める。

子供達への道を作る案を練り上げて行くのだ。


「そう言えば、明日は里奈さんお茶会じゃなかった?」

「そう。明日は大切なお茶会ね。女性の地位の向上に向けての布石を打つわ。王妃様が密かに調べ上げてくれた女性達よ。絶対に逃さないから。」


「明日はエミルに同行してもらうわ。実家の商会の話も通したいから。」


「後は⋯⋯。サーシャがどれだけの功績を持って帰ってくるかで、先の未来が変わるわ。その辺は上手くいく流れに勝手になっちゃったから丁度いいわ。」


ナタリーが話しの内容が解らず、

「勝手になったって、話が見えないけど⋯⋯。」

全員から説明を求められた。


「今サーシャはパトリックと討伐に向かってるのは聞いてるわね?

そこにはS級が2頭いるの。それをパトリックの指導を受けたサーシャに討伐させる予定なのよ。」


(((フムフム⋯⋯。)))


「で、証人が欲しいからライナスさんに同行してもらってたの。本来はライナスさんだけで証明出来るんだけど⋯⋯。」


(((だけど⋯⋯?!)))


「その討伐に勝手について行った人がいるのよね。有り難い事に。

パトリックや私からすれば証人が増えるだけだからだ良いけど。サーシャが1番大変かもね!」


里奈は楽しそうに言った後は、誰がついて行ったのかは教えてくれなかった。


女性陣はサーシャが帰って来てからの楽しみにしよう!

と、孤児の話も終わった為明日のお茶会の下準備に取り掛かる。

切り替えの早い女性陣に、置いてけぼりをくらう男性陣だった。


なんとなくだが、里奈さんが増えた気がする⋯⋯。

それはきっと気のせいだ。と、思考から放り出した。


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