69話: 安心を子供達に
私なりに考えた、孤児達を助ける案を話してみる。
「あのね。アルは私の記憶を見たでしょ?私はほぼ、自給自足で生活していたわ。作物を自分で作るだけで食費は浮くし、野菜は種を取れば次の年から買わなくて済む。
子供達に収入になる何かの仕事を与えて、自分達でやっていける仕組みを作りたいの。」
アルとヤービスは真剣に話しを聞いてくれている。
「ヤービスも何か日本での知識か何かないかな。あれば提案して欲しいの。」
2人は真剣な顔で悩み始めた。
とりあえず、土地ですよね⋯⋯。
ヤービスがアルバートに問いかける。
「あのさー。王都は増築したらいけない法律はあるのか?」
「どういう事ですか?」
「つまり、王都の街の円をもう1個作るんだよ。今ある街には場所がないんだろ!?それなら、外に広げればいだけだ。」
「ヤービス!その案、即採用よ!その考えはなかったわ!」
感心する里奈に、少しだけ不機嫌なアルバート。
「アルバートどうかしたか?」
ヤービスが気になり声をかけた。
「眼鏡も土地の話も、ヤービスが全部提案してリリの役に立っている。私はリリの役に立っていない⋯⋯。不甲斐ないと。」
里奈はアルバートの手をとり
「アルにしか出来ない事があるわ!これは、ヤービスには出来ない事だからアルにお願いしたいの。いいかな?」
里奈の可愛くお願い作戦だ!
「勿論ですよ!リリ。何でも言って下さい!」
(チョロい⋯⋯。)侍女2人にヤービスの心の声が聞こえそうだ。
「土地を広げる話しを陛下に一応通しておいて欲しいの。私が直接頼めば、許可はきっと直ぐに出るわ。でもそれでは駄目なのよ。自らの国を民を子供達を、どう未来に歩ませるかを国が考えて決めないと、後々贔屓だといつか反感を買うわ。」
「里奈さんの考え方って凄いね。そうだね。権力で作り上げるのは良くない。独裁的だしね!」
「アル。お願い出来る?とりあえず、愛し子の名前は使わないで案を議会に通して欲しいの。」
それと。
「城壁の外に街を追加する話は、アル達が魔術で造るとか誤魔化して欲しいの。城壁を造るのにお金がかかる事は、反対のきっかけになる。それは避けたいのよ。」
「解りました。ライアン殿下と話しをしてみます。数日かかると思います。」
「ありがとうアル。ヤービスも、ありがとう。」
そんな話しをしていると、子供達が家から出て来た。
申し訳なさそうに、
「ごめんなさい。何か食べる物を⋯⋯。下さい。」
俯き気味に少し怯えながら年長の子供がお願いをしてくる。
「気が付かなくてごめんね。夕ご飯は今から用意するから、お菓子を食べてて。」
喜ぶ顔が見たかっただけなのに、食べてくれない⋯⋯。
食べたそうなのに、食べない⋯⋯。
何故?
「君達は何でお菓子を食べないの?怒らないし、食べて欲しいんだよ?」
ヤービスが聞いてくれた。
「僕たちだけは、ダメだよ。お家もご飯もある⋯⋯のに、お菓子はダメだよっ⋯⋯。」
泣きながら伝える子供に、私は抱きついた!!
我慢ならなかった!!
「大丈夫よ!!街の子供達も、私がちゃんと見つけて連れてくるわ。だから、貴方達がちゃんと子供らしくいて!」
子供達の目を見て伝える。
「貴方達が遊んだり、お菓子を食べたり楽しそうにしてくれたら、連れて来る子供達も安心するでしょ!?だから、貴方達がお手本になって子供らしくしてちょうだい。」
自分で何を言ってるのか、解らない。
でも、子供らしくいて欲しい。
「解った。」
子供達は、オズオズとお菓子に手を伸ばし口にする。
甘くて美味しいクッキーを、噛み締めながら食べる。
全員の頭を撫でながら、夕ご飯まで庭で追いかけっこをして遊んだ。
夕ご飯は宮を拒否されたので、きのこの家に自分達で運び食べ終えると食器を戻した。
「アル。明日側付き達を全員集めてくれる?皆は家に帰ってるわよね。
それと、パトリックは呼ばなくて良いわ。リュカとサイだけで。」
「パトリックは何故良いのですか?」
「明日からパトリックはサーシャの剣の指導と、西の辺境の近くにまた大型の魔物が出たからそれを兼ねて討伐しに行くのよ。」
「西には何かあるのでしょうか。」
「ヨーク領の瘴気の影響で魔物が成長したのよ。ヨーク領が落ち着いたから、浄化と討伐を繰り返せば落ち着くはずよ。」
「そうですか。良かったです。」
アルの安心した言葉とは、裏腹にヤービスが「ごめん!俺の国のせいで⋯⋯。」
顔面蒼白で謝罪してくる。
「ヤービス!いい加減自分を責めるのは止めろ!お前は悪くない。絶対にだ。」
ヤービスの肩を掴み、アルバートが強い口調で話しかける。
「でも⋯⋯。」ヤービスは納得しない。
「ヤービス。間違えたら行けないわ。
貴方の命を奪おうとしたのは誰?
生贄にしようとしたのは誰?
貴方は悪くないのよ!絶対に!」
「⋯⋯。」グスッ。
「貴方を大切にしない国を私は嫌いよ?そんな国に申し訳なく思うヤービスも嫌い。」
ヤービスが涙を浮かべ里奈を見る。
「私はこの国に来れて幸せになる!!
そう女神様に誓ったわ。ヤービスも一緒に幸せになろう?私とヤービスと子供達⋯⋯。寂しかった分だけ、幸せになろうよ!」
「ヤービス。私達と共に幸せを掴もう。リリと必ず獣人国にはやり返してやるから。」
ヤービスは私とアルに抱きつき、大声で泣き出した。
泣くだけ泣いて、明日から幸せ探しを始めよう。
耳をペタンコにして泣きじゃくるヤービスの頭を、里奈とアルバートが撫でながら見守っていた。
耳はペタンコのまま、ヤービスは恥ずかしそうに顔をあげた。
「ごめん⋯⋯。ありがとう。」
照れながら言うヤービスが可愛くて、なでなでしてしまう。
アルはヤービスに対して私が優しくしても嫉妬しない。
アルの嫉妬する基準が解らないが、気にしないでヤービスを可愛がる事にした。
なでなで。
「アル。明日の側付き達との話し合いは、ヤービスの事も話すわ。」
ヤービスを撫でながら、そう伝えた。
「解った。」
一言だけの返事。
だけど、里奈には安心出来る一言だった。
朝から宮は忙しない。
子供達が朝食を運んだり、使用人のお手伝いをしたいと提案されたり。朝からバタバタしている。
側付き達が帰って来た。
が、里奈が子供達の世話に忙しそうにしている為、声をかけにくい⋯⋯。
(なぜ子供!?)で、ある。
「おはようございます。全員いますね。話し合いはリビングにて。」
アルバートの言葉に皆は移動した。
リビングでは、子供達の説明と里奈の案を話た。
全員賛同してくれ、後日話しを詰める事にする。
ヘロヘロの里奈と、獣人のヤービスがリビングに入って来た。
「おはよう⋯⋯。急に集めてごめんなさい。」
里奈とヤービスが椅子に座ったので、紅茶を出し里奈が復活するのを待つ。
「改めて、おはようございます。突然で迷惑かけてごめんね。」
「覚えてる人もいると思うけど、ヨーク領の討伐の途中で拾った獣人さんね。名前はヤービスよ。」
「初めまして。あのときは助けて頂き、感謝してます。」
ヤービスが軽く頭を下げた。
「どこに行ったのか気にはなってたけど、里奈さんが隠してたのね。」
「違うけど、違わないわね。」
クスクス笑い、改めて紹介する。
「この人は獣人国の第一王子のヤービスよ。つまり、王太子殿下ね。」
さらりと重大発見する里奈に、ナタリーが
「里奈さん!!軽く話さないでよね!!
王太子殿下って⋯⋯どうしたら良いのよ⋯⋯。」
「やはりそうでしたか。獣人国の三色持ちの王子が消えたと話は聞いていました。姿を見た時にそうかと⋯⋯。」
ライアン殿下は王家の情報を持っていた。
「行方不明ね⋯⋯。その理由は知ってますか?」
ヤービスが殿下に問いかける。
殿下は気不味そうに視線を外した⋯⋯。
「知っているのですね⋯⋯。密偵ですか?」
殿下は視線を戻さず、小さく頷いた。
「これから話す事は、秘匿性が高く自らの命の危険もあります。私とアルはこの事に関わって行くわ。でも、貴方達を巻き込むつもりはないの。一緒に来るか来ないかは貴方達の判断に任せるわ。」
「特にライアン殿下は王族。関わらない事をお勧めするわ。」
「私の他国に向かう1番最初の国は獣人国にします。これは決定です。皆はそれを踏まえて私の準備をしてもらいます。」
里奈から語られる話しを聞く。
腹を括っている側付き達は、里奈から離れる気などないのだから。
獣人国に行く事を了承するだけだ。
ライアン殿下の衝撃的な決意を知るのは、里奈から聞くヤービスの話しを全て聞き終えた後だった。




