54話: 懐かしの家と幸せな時間
里山の家でアルバートは、里奈の手料理に感激していた。
この世界にはない〈日本料理〉を食べていた。
里奈は〈和食〉が得意らしい。
長く1人の生活だったのと本好きが功を奏し料理は得意だった。
メニューは白狐の好きな
・キノコの炊き込みご飯
・山菜の胡麻和え
・山菜の天ぷら
・キノコのお吸い物
山菜のお浸しはアルバートの口に合わなかったので、今回は甘めの胡麻和えにしてみた。
「初めて食べる味付けですが、とても。とっても美味しいです。」
里奈に話しかけているが、視線は料理に釘付け。
里奈は喜んでくれて、ニコニコが止まらない。
白狐も勿論美味しそうに、尻尾フリフリで
食べている。
(宮にいるより落ち着くなぁ〜。)
里奈も食事を初めた。
アルバートに料理の質問をされ、答えて沢山話をした。
お風呂を沸かし入り終えて気が付いた。
アルバートの着替えがないし、布団が無い事に!
「ごめんなさい。着替えと布団の事を忘れてたわ。」
ションボリする里奈に、
「着替えはいつも持ち歩いてますよ。服もね!帰らずに王城に泊まる事もありますし。私は、こたつで寝ますから大丈夫ですし。」
「それなら私がこたつで寝るわ。」
あーだこーだのやり取りをしていると、
『布団は用意してある。早く敷いて寝るぞ。』欠伸をしながら教えてくれた。
え!?そうなの?
里奈は急いで広い和室の押し入れを開けた。
そこには、数組のお布団が用意されていた。
『女神がお客が来た時に困らないように、いろんな物を増やしていたぞ。』
(食器棚の雰囲気が何となく違った気がしたのはそれかな⋯。)
考えながら食器棚に行くと、全ての食器が増やされていた。
流石女性よね。
和食は宮のお皿じゃなんとなく不格好になるし。
「女神様。ありがとうございます。大切に使います。」
居間に戻ると、アルバートがお布団を敷いていた。
白狐に教えてもらいながら、シーツを掛けていた。
「リリ。お布団敷き終わりましたよ!」
少し得意げなアルバートが何だか可愛らしい。
「アル、ありがとう。」
白狐は子狐の姿のまま、私のお布団に入り頭だけ出す。
アルバート、白狐、私と、川の字で並ぶ。まるで家族の様だと胸がくすぐられる。
「おやすみなさい。アル、白狐。」
「おやすみ。リリ、白狐。」
白狐は耳をピクピクでの返事。
幸せな気持ちに浸りながら、眠りに就いた。
目が覚めると、白狐とアルバートはまだ寝ていた。
起こさないように静かに起きて、朝の身支度をする。
最近は侍女に世話をされる為、自分1人の身支度は久々だった。
自分の事は自分でするのが楽だった⋯⋯。
でも、仕方ない。諦めは早い。
朝ご飯の準備が終わる頃に、アルバートと白狐が起きた。
「おはよう。リリ。」頬に口付けされる。
「おはよう。アル。」口付けを返す。
「朝ご飯の準備が終わるから、居間にいてね。」
今朝のメニューは定番
・根菜のお味噌汁
・だし巻き玉子
・夜の残りの山菜の胡麻和え
・鶏の照り焼き
照り焼きは、アルバートと白狐ようだ。
「いただきます」声が合わさる。
「このスープは何というのですか?」
「お味噌汁よ。黄色のが卵焼き。いつもは甘いでしょ?出汁が無かったから。
今日はだし巻き玉子よ。玉子焼きには色々味付けがあるわ。」
アルバートがだし巻き玉子に手を伸ばして一口食べる。
「リリ!とても美味しいです!!」
照り焼きも、だし巻き玉子も気に入ったようだ。
何よりです!!
後片付けも終わり、居間でお茶を飲む。
「この緑の物はお茶ですか?」
「緑茶って言うの。カップは湯呑みね。」
アルバートは緑茶が気に入ったようだ。
お昼まで家の中を見て回る。
アルバートは興味津々で質問してくる。
日本家屋に興味を持ったようだ。
「昨日隣にも建物がありましたが。あれは、記憶で見た中にありましたよね。」
白狐が耳をピクッとさせた。
「そうね。並び立っていたわね。」
里奈は少し考え。
「アル。隣の建物の話はいずれするわ。
それまで待ってくれる?」
アルバートは頷き
「勿論。無理に聞きたい訳ではないから。話せる時で大丈夫。」
里奈の頭を撫でながら答えた。
「ありがとう。アル。」
宮に戻るまで、のんびり過ごす。
そう言えば。と、気になった事を白狐に聞いてみる。
「白狐。調味料は無くなったらどうなるの?それに、電気が無いのに明かりもお風呂も沸かせたし⋯⋯。色々不思議なのよ。」
『電気の代わりに、女神が魔石に神力をこめてたな。
調味料は日本の神に女神が頼み込んで作らせたらしい。
命の神だから、食物も操れる。女神がその全てに神力をかけ、永久的に増えるようにしておった。』
里奈は呆然となる。
えっと?日本の神様が私の持ってる調味料を作ってくれた。
そして、女神様が神力を掛けた。
「えぇ~!!そんな大変な事になるなんて!!日本の神様、怒ってないかな⋯⋯。」
『なにかと日本の神は里奈を気にかけていた。理由は我にも解らぬがな。
しかも女神が頭を下げたのだ。あやつも気分が良かろう。心配ない。』
(女神様が嫌いな神様に頭を下げさせてしまった⋯⋯。)
気にしないどころか、逆にションボリする里奈に
『女神が里奈の為を思い行動したのだ。申し訳ないと思うより喜んでやれ。
女神は里奈の為に何かしてやれた事を喜んでおった。』
「解った。有り難く使うし、女神様にも感謝する。申し訳ない気持ちは捨てるわね!」
白狐は頷き寝てしまう。
「リリは神に愛されているね。」
そう言葉を伝え口付けを落とす。
「神に愛されてるのかは自分では解らないけど、白狐とアルに愛されてるのは実感出来るわ。
それに、女神様にも愛されてる。」
今度は里奈から口付ける。
仲良い2人に白狐は満足しながら、尻尾を揺らす。
里奈達の穏やかな時間は、もうすぐ終わる。
それまで、この時間を堪能する事にする。
白狐は絶対に覗いている女神が、天界で大喜びした後は大泣きしている様を想像する。
やれやれ、、。と思う白狐も里奈が喜ぶ様子に満更でも無かった。
〜❀〜
数日前⋯⋯。
突然、女神が話しかけて来た。
「白狐。お願い。一度天界に戻って来て欲しいの。里奈の事で相談があるの。」
里奈の為と言われれば断らない。
『里奈が寝たら行こう。』
「ありがとう。白狐。待ってるから、絶対に来てよ。絶対にだからね!!」
いつも通り、言うだけ言うと神力を切った。
白狐はうんざりしながらも、里奈の為だと天界に行く事にする。
『女神よ。用件だけさっさと話せ。』
現れて早々に白狐が言った。
「もう!!本当に白狐もあいつも、日本の神は嫌いだわ!」
怒り出すが、白狐は女神と絡みたくないのだ。
面倒臭いから。
『用件を話せ。』
「解ったわよ。里奈に何か贈り物をしてあげたいのよ。でも私は世界を造る代わりに、直接的には干渉できないじゃない?
白狐は里奈の側にいて色々助けたり出来るけど、私は出来て祝福くらいだし⋯⋯。」
女神は落ち込んでいた。
白狐は、側にいれるいれないを言われると弱い。
女神は里奈を見守るしか出来ないからだ。
気持は良く理解出来る。
『最近の里奈は落ち込む時に、必ず里山を懐かしむ。以前落ち込んだのを感じ側に寄ったら、里山は良かったと呟いていたからな。
記憶が戻ったから淡々と過ごした日々が懐かしいのだろう。』
「私も里奈の魂が沈み込むのを感じていたのよ。でも、思考は解らないから⋯⋯。頑張る里奈に何かしたいのよ。」
「それでね!1つ提案があって、それは白狐の承諾が必要だから来て貰ったのよ。」
白狐が何を?と、女神を見る。
「白狐が天界で棲んでた家を、里奈の住む宮に置きたいのよ。」
『そんな事出来るのか?出来るならば、里奈は必ず喜ぶ。』
「そうでしょ?白狐は棲んでないし、白狐にくっついてた眷属も全員外界だし。だから、白狐の許可が欲しかったのよ。」
『だが、我が造った家は中身は無い。子狐の姿でいたから、部屋を詳しく見れてはおらんから。』
「家の中は大丈夫。里奈の家に関する記憶を隅々まで見たから!」
自慢気に胸を張る女神に、隅々まで見た⋯⋯。の言葉に引く白狐。
「里奈は料理を作るのが好きじゃない?だから、調味料を鑑定してみたの。
でも、こちらの世界には無い物がかなりあるの。
そうなると、調味料を用意してあげられないわ。」
『女神よ。里奈の為に、プライドを捨てれるか?』
「?? 勿論よ!里奈の為ならば、どんな事でもやるわよ!」
握り拳をあげて、強く答える。
『ならば、命の神に頼むと良い。日本の調味料を作って貰い、それをそなたが神力を使って無くならない様に出来ぬか?』
「⋯⋯。」とても嫌そうだ。
『調味料がなければ、里奈が恋しがる料理は作れぬ。あやつに頭を下げれなければ、調味料は手に入らぬ。
神は買い物は出来ぬであろう?
それとも、日本のお店から調味料を毎回盗むか?里奈は喜ばぬぞ。』
「解ったわ!里奈の為、里奈が喜ぶのなら、あいつに頭を下げるくらい簡単よ。」
「じゃ~早速行ってくる。準備が出来たらまた呼ぶわ!!」
勝手に消えた。
はぁ〜。
白狐は呆れながらも、あの家が外界に来るのを期待した。
天界の平屋に入る。中はガランとしていて、何もない⋯⋯。
白狐は里奈と離れた事が寂しかった。
この家を眺め、里奈を思い出す事が何よりの楽しみだった。
白狐はあの時の寂しさを押し込む。
外界に家が来ても良いように、家の中の覚えている限りの間取りを造る。
白狐は初めて、女神からの声掛けを楽しみにするのだ。
だが、白狐は声掛けを楽しみにした事を少しだけ、後悔していた⋯⋯。
家の細かい作りを指示され、造り足す。
里奈が使っていた物を造る。
あれやこれやと、こき使われていた。
「楽しい!!」
女神は里奈が喜ぶであろう姿を想像し、あれやこれやで家の中を整えて行く。
白狐は横になり、女神を観察していた。
里奈を大事に思う気持は同じなのだと。
「よし!準備出来たわよ!」
家の外で2人並んで眺めている。
「白狐⋯⋯。社はどうするのだ?持って行くならば、一緒に降ろすけど。」
『里奈は社を大切にしてくれた。社もあれば、更に喜ぶだろうな。』
「解ったわ。社の中は、白狐が整えなさいね。」
じゃ~行くわよ。
女神の神力に包まれた。
光が消えると、宮の裏の森が綺麗に更地になっていた。
社と家が並び立つ。
白狐は周りを里山の風景に整える。
畑は里奈が自分でやるだろうから、更地のままにした。
女神は白狐の想像通りだった。
里奈が泣いて喜ぶ様を見て、喜び踊っていた。贈り物が出来て、良かったと満足だった。
里奈と白狐とアルバート。
この3人の仲睦まじさに感激していた。
アルバートを選んで良かった!
記憶の珠に感謝する。
もっともっと幸せになれ!!
女神の願いは世界の安定と、里奈の幸せだった。




