4話: 女神の森を守る国
女神の森を北に置いた国。
アルスタ王国。
女神様が目覚めて25年の月日が流れた。
1番に復興の兆しを見せ少しずつ生きる力を付けてきたのがアルスタ国である。
女神の森には神殿曰く、2匹の眷属が森を聖力で包み込み瘴気や魔物を抑えてる。
抑えてる今、早急な国の復興に着手しなければならない。
各国共に街に神殿を建て、人々が祈り女神様への感謝の祈りを毎日捧げた。
瘴気や魔物は人々が暮らす場所からは離れて行った。
人々の祈りが平和に繋がると信じ祈りを捧げる。
アルスタ王国の王都は活気に溢れ、人々はそれぞれ懸命に生きている。
神殿に希望の光を届ける。との女神様からの言があったのはその日の昼の刻。
神殿からの急ぎの使者がアルスタ王国の議会の間に突如現れた。
「急な謁見お詫び申し上げます。」
両の手の指を組み額に当てて深く腰を折る。
使者からは急いで来たであろう額には薄っすら汗を掻き肩が小さく上下する。
使者の異様な気配に王国の王が口を開く。
「面を上げよ。神殿よりの急ぎの件とやらを早速伝えよ。」
王は静かに使者を伺う。
「ナサニエル大司教よりエルドリック国王陛下に報告がございます。こちらの書簡にて確認を。」
使者は片膝を着き、恭しく書簡を掲げ上げる。
右に控える宰相が書簡を受け取り陛下に渡す。
陛下が書簡の文字を追い終わるや否や、歓喜に満ちた声で使者に問いかける。
「この事は真であるかっ。真であるならば是である。」
「ナサニエル大司教に急ぎ是であると伝えよ。期日通りこちらも動くとっ。」
いつになく声を張り上げ、興奮してるであろう事も隠す事なく陛下が伝える。
使者は陛下をこれも歓喜を押さえきれない表情のまま頭を下げ急ぎ議会の間を後にした。
陛下は椅子にドッと凭れ掛かると深く息を吐いた。
会議の間に揃う議員や貴族は不安にざわざわと囁きあう。
見かねた宰相が陛下に問う。
「陛下。皆が不安がっております。先程の神殿からの書簡には何と記されていたのですか?」
陛下1人で開けた書簡ならば直に問うなど不敬にあたる。
だか、あれ程の会話を聞けば宰相自身が陛下に問わずにいられなかったのだ。
陛下は再び深く息を吸い込み吐いた。
宰相を見遣り、また議会の間にいる者を順次する。
「神殿よりの書簡には、女神様より加護を与えし乙女が遣わされる。明日の花の刻祈りの儀式にな。」
暫しの静寂の後、歓喜に満ちた声が広がる。皆口々に喜びを現す。
「良いか。乙女は女神様からの大切な遣いだ。明日の花の刻祈りの儀式に間に合う様に各々準備をいたせ。」
「と、言っても何を整えばよいのか。」
「誰か何かあるか?」
皆は思案する。
女神様からの乙女の遣いは、遥か昔に一度だけあったと教会の文献には記されている。
文献にはこう記されていた。
『魔王なる者が現れ、世界を破壊すべき侵略を始めた。世界を救うべく女神様が黒髪黒目の乙女を顕著なされた。乙女は強く魔王を滅した。乙女は破壊された世界を死の間際まで周辺諸国を廻り再興に尽力された。』
乙女については容姿以外に記録はない。
世界を救った。と、どの文献を探してもそれ以外に記されてはないのだ。
「異世界の聖女召喚で来た女性も、黒髪ではなかったか。確か見目の良い令息を揃えたと文献で見たような……。」
そう漏らしたのは侯爵家の中でも筆頭となる家門の当主だった。
後に里奈と深く関わる令息の父親である。