32話: 図書館に出かける前準備
里奈は朝から張り切っていた。
今日はこの宮にお客様が沢山来るからだ!
朝から侍女やメイドと忙しく、庭園でのお茶会の準備をしている。
ライナス司教やガルズ司祭も勿論お手伝いをしていた。が
司教と司祭はやや呆れた視線を向けていた。
鉄壁を誇る近衛が、里奈と笑い合いながら、椅子を両脇に抱え歩いている。
近衛の笑顔⋯⋯。
(人たらしの里奈さんらしいか⋯。)
準備が終わる頃に、選定者の6人が来た。
里奈が出迎え、庭園に案内する。
席に着くと、司教と司祭も6人に挨拶をした。
里奈はあるほんの小さな異変を察知した。
エミル男爵令嬢の様子に少し異変を感じたのだ。
エミル自身も無意識だったようだから、里奈は(後にしよう。)と、気をそらした。
そこに、ライアン第1王子と第2王子のリチャード殿下も来た。
皆は慌てて礼を取ろうとしたが、制された。無礼講らしい。
里奈は次々来るお客様にニコニコしている。しかし、この宮にずっといる者は里奈が不安気なのを感じていた。
昨日は1日里奈は元気が無かった。
宮の者は心配をし、全員で朝食後のお茶会に参加した。(近衛の3人も⋯⋯。)
里奈に話しを聞けば、微笑ましい話しだった。
王妃様に「アルバートがいないから寂しいのでは。」
と言われて、実感出来た事
いつも優しいアルバートに何かしたい事。
明日の茶会に来てくれるか、不安な事。
侍女が「お気持ちをそのままお伝えすれば、とても喜ばれるかと。」
一同思った。
(愛し子様とアルバート殿の恋を見守ろう。)
この日、見守り隊が結束されメンバー10人で陰ながら奮闘する。
因みに、会長はガルズ司祭。アルバートと1番仲良し?だからだ。
と言う事が昨日あったので、アルバートが来るのか不安なのだ。
ライナス司教がアルバート殿がお茶会の翌日まで、フィッセル侯爵に宮に出入り禁止を受けてるのを知り、大司教に相談。
侯爵も愛し子様の為ならと、禁止を解いてくれた。
話しに花を咲かせている里奈に、ガルズ司祭が「里奈さん。お見えになりましたよ。」
里奈が振り向くと、笑顔でアルバートが手を振り歩いて来た。
里奈は勢い良く立ち上がり、アルバートに駆け寄った。
そんな里奈にアルバートは驚くが、それ以上に衝撃を受けたのは選定者6人と王子2人。
アルバートが笑顔⋯⋯。(逆に怖い…。)
里奈が自ら抱きつき、アルバートを見上げる。アルバートは優しく腰に手を回す。
あのね。と里奈が話し出す
「あの事件?があった後王宮にいたでしょ?でも何だか段々居心地悪くなったの。そうしたら王妃様が、〈アルバートがいないから、寂しいのでは?〉って言われたの。」
「その時はそうなんだ。と答えが出ただけなんだけど。
昨日アルバートさんが来なかったでしょ?寂しいって事が実感?出来たの。」
アルバートが固まり動かない。
里奈が腕をポンポンするが動かない。
アルバートは驚きと嬉しさに溺れていたのだ。
里奈の2度目のポンポンに気が付いた途端。里奈を抱きかかえた。
ギュッと抱きしめる腕は震えていた。
アルバートは嬉しくて涙を堪えていた。
その様子を温かく見守る者と、驚愕の光景を目にし微動だにしない者とで別れた。
アルバートが落ち着き、里奈をいつものお姫様抱っこで席に近付いて来た。
「いつもの事ですし、これからいつもの光景が始まります。免疫の無い貴方方には刺激が強いでしょうが耐えて下さいね」
ニコリと笑顔のガルズ司祭。
戦々恐々の8人は、里奈達を待つ。
お姫様抱っこのまま、アルバートは椅子に座り里奈を膝抱っこしたのだ。
「殿下達も居たのですね。」
と1言告げると、里奈を抱え直す。
お菓子を手に取り里奈の口に運ぶ。
里奈の様子を見て、紅茶を渡す。前に⋯⋯温度を確認する為、自ら一口飲んだ。
熱かったのだろうフーフーして冷まし、里奈の口元にあてる。里奈はアルバートの手に手を添えて飲む。
毎回恒例の甘々作法なのだ。
絶句していると、フィッセル侯爵と大司教が来た。
手で挨拶を先に制し、2人は呆れた目をアルバートに向けた。
大司教が「毎度毎度⋯⋯。」
フィッセル侯爵はただニコリと。
里奈とアルバートだけが通常運転中でいた。
全員がテーブルに着くと、大司教が
「選定者の6人の方々に感謝する。これからは、愛し子様のお側でその能力を振るって頂きたい。」
6人はお礼を言われ、慌てて頭を下げた。
「殿下達もありがとうございます。」
殿下達は軽く頷いた。
少し場が和んで来て、若者達は趣味等を語り合っていた。
カルロが、「里奈さんの趣味は何?」と質問した。
里奈は、う〜んと悩み「本を読むのを向こうの世界でしてた。何でも読んだわ。」
それを聞いてキャロルが「王宮図書館には里奈さんをお連れ出来ないのですか?」と、大司教に聞いてきた。
ベールを被り側付きが居れば大丈夫と了承した。
喜んだのは里奈だ!
「聞いてくれて、ありがとう。キャロルさん!」笑顔でお礼を伝えた。
キャロルは頰を染め頭を下げた。が⋯⋯。
可愛い!!と里奈の頭をなでなでするアルバートに、また驚愕する。
(大人達が言う覚悟とは、アルバートの事か⋯⋯。)納得した皆でした。
「さて。楽しいお茶会でする話ではないですが、一同揃う機会が合ったので今お話をしたいと。宜しいですか?」
フィッセル侯爵が聞いてきた。
皆了承する。
「先日、愛し子様が狙われましたね。その対策の為に、ここにいる8人には私が高度魔術を教えます。」
「特級魔術です。」
8人は驚いた。特級魔術と⋯⋯。
ギルベルトが「ここにいる8人は特級が使えるのですか?」
「いえ。特級魔術はその人の繊細な魔力操作が必要になります。
魔力量は大丈夫のようですし。
貴方がたは術式や紋の知識は直ぐに吸収出来る筈です。」
「操作は見てみない事には……。ね。」
ニコリ
センスが有るか無いかだ。と……。
8人は即答で 「お願いします!!」
と答える。侯爵は笑顔だ。
里奈だけが気落ちしていた。
私のせいなのだ。と⋯⋯。
やはりアルバートは里奈の変化に気付くのだ
「里奈さん。貴女は自分の所為と思ってませんか?そうではないのですよ?」
全員がリナを見る。
「確かに特級を教えるのは、里奈さんの為であるのは確かです。ですが以前のような事か起きた時、里奈さんだけでなく側付き自身も身を守る力となるのです。周りにいる者を助けれるのです。」
「そして、特級魔術を使えるのはとても名誉な事です。
家門にも栄誉が称えられます。」
里奈はアルバートを見上げた。
「それでも里奈さんは自身を責めますか?」
首を横に振り皆を見た。
里奈は涙を堪えて「お世話掛けます。」
となんとも可愛いお礼を口にした。
アルバートが声を出し笑う。
「本当に里奈さんは可愛らしい。」
笑うアルバートに、皆は驚く事を放棄した。
あの⋯⋯。と手を挙げたのはキャロルだ。
「先程、図書館の話しの時に幾つか質問と提案が浮かんだのですが……。話しても良いでしょうか。」
大司教と侯爵が頷く。
「里奈さんは、私達をさん付けされます。それは禁止していただきたいのです。
里奈さんは他国の高位のご令嬢として来た事になってますよね?私達には呼び捨てでないと。
後、お名前をお披露目するまで変えた方が良いのではないでしょうか。名前でばれそうですし。」
大司教も侯爵も驚いた。
その通りだからだ。「とても良い案ですね。」
全員で名前を考えてみる。
またもやキャロルが
「リリアーナ様はどうでしょうか。」
アルバートが即答で「採用ッ!!」
と声を張る。
里奈さんはどうですか?侯爵に聞かれた。
「綺麗な名前で嬉しいです。その名前が良いです!」と喜ぶ。
アルバートが リナ、リリ。
うん!可愛い〜。ブツブツ呟く。
そのリリの呼び名に里奈が
「この前のお茶会で、里奈、リリって呼んだでしょ?その呼び方嬉しいです。」
大人達が(里奈さん!その台詞はダメ!)慌てた。
アルバートは里奈をギュウギュウ抱きしめ、髪にキスを落としまくる。
やはりこうなった。
アルバートと里奈を放置し、良い考えがあれば何でも相談するように伝える。
カルロが
「6人と殿下方2人が集まれる場所があればと。無闇に話せないですし、集まりやすいと思って。」
侯爵がガルズ司祭に、宮に部屋は沢山あるかと聞かれ「お部屋は充分ありますし、今日からでも使えます。」そう答えた
「そうですね。男性と女性で1部屋ずつ。殿下方に2部屋。会合用に1部屋用意下さい。司祭達も宜しければ。」
一同。え?!
この宮に住むのかと⋯⋯。
「愛し子様は息子のせいで今忙しいので、後で説明します。
実際、貴方がたに魔術を教えるのに便利ですし。
この宮には誰も侵入出来ませんし、外部からも見られない。」
「明日は皆さん準備をして明後日には宮に来るように。」
8人全員が了承した。
各々この先を考えると、怖くもあり。楽しみでもあった。
明日から図書館に行けるのを里奈が知るのは皆が帰った後となる。
今日も朝からソワソワしている。
ベールを被り外出の準備万端で側付きを待つ。
今日の側付きは提案してくれた、キャロルだ。
「おはようございます。リリアーナ様。」
「おはようございますキャロル。」
呼び捨てした里奈は居心地悪く。
呼び捨てされたキャロルは、良く出来ましたと。ニコリ。
図書館迄歩いて行けなくもないが安全の為に馬車になる。
この時キャロルも里奈も思いも寄らない事に巻き込まわれると思っていなかった。
ここから始まる辛い日々を里奈は1人耐える事になる。
アルバートが死ぬ程後悔するまで、あと数週間⋯⋯✿




