38話 視察と称した冒険へ
今日から投稿します。
宜しくお願いします❀
ヤービスにイーロ、私にアルバート。
四人で国の視察をすることにした。
誰に伝えるか悩んでしまう⋯。
結果、陛下と宰相には伝える事にした。
三人娘には絶対に出立まで知られる訳にはいかないからだ。
絶対について行くと騒ぐに違いない⋯⋯。
ヤービスとイーロが自由に動くには、最少人数が良い。
陛下と宰相への報告はヤービスに頼んだ。
とりあえず、空間魔術の中を確認する事から始める。
里奈は色々と放り込んでいるが、何となく何を入れたかは把握している。
「以前作ったけど反対された野営用の道具も入っていたから、野営するのは大丈夫ね。
後は食料くらいかしら?」
里奈が準備する物を整理していると、ナミが大きな鞄を二つ持って来た。
里奈の横に、重い鞄をドンと置いた⋯⋯。
「里奈様。衣装を持って行かないで良いのですか?」
ナミの言葉に、着替えのことが頭に無かったことを思い出す。
「全く頭に無かったわ。ありがとうナミ。」
用意してくれた鞄を仕舞い、出しっ放しの野営道具もしまう。
「ナミとサリーはお留守番だけど、私がいない間は何か予定は入れたのかしら?」
折角こちらの邸に来てくれたが、視察に出るのでまた離れてしまう。
「サリーが本日ライアン様に呼ばれています。王宮の侍女達に私達に指導して貰えないかと、お話がきております。」
獣人国の侍女は、少しばかり大雑把で王宮侍女として粗が目立つらしいのだ。
「貴女達が指導者ならライアン達も安心よね!」
里奈に褒められ照れるナミは、可愛らしい。
「里奈様に相談なのですが、たまに慰霊碑に行きたいのです。慰霊碑にお花を捧げたいですし、カズラ様やヒイラギ様達とも会いたいのです。」
両手を組み、里奈にお願いをする。
「サリーとナミの魔力だとエイルの森まで転移出来ないわよね⋯⋯。」
里奈がどうするか悩んでいる。
『カズラかヒイラギに迎えに越させれば良い。ヤービスが作ったカフスとやらに魔力を込め、お互い交換すれば出来るはずだ。
お主らがあちらに行きたい時に魔力を流せば、カズラやヒイラギの魔道具に伝わるだろう。』
白狐の案はとても良いので、陛下達への報告から帰って来たらヤービスに作ってもらおう!
「他に何か希望や聞きたい事はあるかしら?」
里奈がナミに問いかける。
「里奈様は視察に出られたら、帰って来られないのでしょうか⋯⋯。」
眉を下げ、淋しそうに話すナミ。
「時々は戻って来るわ!ナミとサリーに会いたいし、帰って来ないと三人娘が煩いからね。」
黙って視察に行くのだ。煩くなるのは目に見えている。
「暫く会えないけれど、アルスタ王国の王宮侍女として獣人国の侍女達を鍛え上げてね。ナミとサリーなら心配は要らないだろうけれど。」
笑顔で伝えると、
「里奈様やアルスタ王国の恥になる事がないように、頑張ります!」
ナミは握り拳を突き上げ、意気込んでいた。
「後数日で出ると思うから日程が決まったら声をかけるわ。それまで内緒ね。」
ナミとクスクス笑い合い、旅の支度を続ける。
買い出しに行っていたアルバートが帰って来た。
「おかえりなさい。アルバート。」
こちらの世界の料理を作るのはアルバート。里山で料理をするのは里奈。と、何となく決まっていた。
旅の間はアルバートが料理を担当するらしく、食材を買いに行ってもらったのだ。
ヤービスは料理を作れない。
イーロは⋯⋯。
今度聞いてみよう!
旅の支度も終わる頃、ヤービスとイーロも帰って来た。
「陛下からは許可を貰えたよ。
快く承諾してもらえたし、宰相も内緒にしてくれるって。」
里奈達の視察を知る者はナミとサリーに、陛下と宰相の四人となった。
ライアン達に話すか悩んだが、ライアン達が事前に知っていたと三人娘に知られたらライアン達が責められる。
と、アルバートの提案で側付き全員に話さない事に決まった。
「陛下からは何時でも好きな時に出て良いって言われてるけど。いつにしようか?」
ヤービスが話しかけた。
『里奈よ。ヤービスに魔道具を先に作って貰え。』
白狐の言葉に思い出した!
「魔道具って?」
ヤービスが白狐に問いかけるその横で、イーロがキラキラした瞳で話を聞き始めた。
「カズラ達のいる森にサリーとナミが行きたいんだけど、二人は転移するだけの魔力が足りないでしょう?
だったら、カズラ達に転移してもらえば良いんじゃないか?った話になったの。」
白狐が提案した案をヤービスに伝える。
ヤービスはフムフムと考えながら、紙を用意し魔術紋を幾つか描いていく。
イーロはヤービスの描く門に興味津々で見ている。
「ヤービス。紋の説明をイーロにしてあげてくれる?」
里奈がヤービスに声をかけると、ヤービスはイーロの方を向いた。
イーロは子供のような顔で、ヤービスの描いた紋を見つめていた。
ヤービスがクスリと笑い、イーロの頭にポンと手を置いた。
「アルスタ王国にいる眷属様と、里奈さんの侍女を繋ぐのがこの紋。魔力を結びつける紋になる⋯⋯。」
ヤービスは自負が描いた紋の説明をイーロに細かく説明している。
イーロも真剣に話を聞き、時折ヤービスに質問をしている。
「侍女さん達はイヤーカフスをして大丈夫なのかな?」
ヤービスの質問に里奈も考える。
「侍女達がイヤーカフスをしているのを見た事はないわね。決まりがあるかは解らないわ。ザイラー国では見た事はあるの?」
里奈の質問にはイーロが答えた。
「ザイラー国の侍女はアクセサリーは基本禁止なんだ。獣人は時々だけど魔力が荒れると獣の姿に戻ってしまうんだ。獣化と呼んでいるけど、そうすると、アクセサリーや衣装を紛失してしまうから禁止になっているんだよ。」
「ヤービスは猫に、イーロは獅子になるって事?」
里奈の問いかけに、
「そうだね。私はまだ獣の姿になった事はないけど⋯⋯。兄上はあるの?」
「ないな⋯⋯。」
ヤービスも無いらしい。
「そうなのね。どんな姿になるのか、ちょっとだけ気になったの。きっと可愛いでしょうね⋯⋯。」
里奈はヤービスとイーロが獣化した姿を想像していた。
獣人にとっての獣化は弱った証なのだ。
余り良い事ではない。
「里奈さん。獣化は弱った証なので、他の人の前で見てみたいって言わないようにね。」
里奈は直ぐに謝罪した。
「そうなのね。ヤービスもイーロもごめんね。
教えてくれて、ありがとう。」
ペコリと頭を下げた。
「大丈夫だよ。知らない事だからね。
種族によって良い事や悪い事が違うんだ。これから知ってもらえたら良いしね。」
ヤービスの言葉に、
「色々教えてね!」
獣人の事を知りたいし、人族にも獣人の事をちゃんと知って貰いたかった。
「旅の目的が一つ出来たわよ。種族の違いや習慣とか獣人の事を知って纏めるわ。
人族に知って貰う為に、本とか資料とかを私が作るわっ!」
里奈は気合を入れてヤービスとイーロに伝えた。
二人は顔を見合わせクスクス笑う。
「ありがとう。里奈さん。人族に獣人の事をを知ってもらえるのは良いね!宜しく頼むよ!」
ヤービスの応援の言葉に、里奈は強く頷いた。
「さてと!魔道具が出来たよ!」
ヤービスがサラッと口にした。
「いつの間に作ってたの?」
里奈はヤービスと話しをしていたのに?
と、不思議にしていると。
「里奈さんが色々話してる間に作ってたよ?!里奈さんが気が付かなかっただけだから。」
ヤービスに笑いながら言われてしまう。
「イヤーカフスではなく、アンクレットにしてみた。侍女さん達もカズラ達も獣化しないからね。アンクレットなら見えないし、侍女さん達は王宮でも着けていれるからね。」
ヤービスが出来上がったアンクレットを見せてくれた。
小さな魔石が一つ嵌め込まれている。
「ここに魔力を込めれば出来上がりだ。」
どうだ!と自慢気に渡された。
「ありがとう。ヤービス。」
里奈の手に渡されたアンクレットを、やはりイーロはじっと眺めている。
「ヤービスの作る魔道具は凄いわよね?」
里奈からイーロに話ける。
「兄上は魔術の天才だよね!紋と紋を組み合わせて作るなんて凄いよ!」
イヤーがヤービスを褒めまくる。
仲良い兄弟を里奈は暫く眺めていた。
皆で食事をとり、里奈の部屋に四人が集まる。
今日はサリーとナミにも席に着いてもらう。
「ヤービスが森に行く為の魔道具を作ってくれたわ。サリーとナミは明日は何か予定はあるかしら?」
予定が無いなら、森に行ってカズラ達と会って交換したら良いと考えたのだ。
「明日から王宮に教育係として出仕する事になりました。出仕は、明日は午前中のみとなります。」
サリーの報告に。
「とりあえず、サリーとナミに魔力を込めて貰って明日カズラ達に渡すわ。
カズラ達の魔道具をサリーとナミが帰って来たら渡すから、一度ヤービスの前で使ってもらえる?」
サリーとナミはヤービスから説明して貰い、魔道具に魔力を注いで行く。
サリーとナミの魔力は、眷属からの加護が少しある為キラキラ輝いている。
加護があっても、本人の魔力は増えない。
ただ、サリーとナミは加護により災難からは護られる。
「ありがとう。明日は頑張ってね!」
サリーとナミに声をかけると、
「「はい!」」
と返事をし二人は部屋を後にした。
「明日は私はお留守番するわ。
私が行くと、なかなか帰って来れなくなるから⋯⋯。」
里奈は苦笑いしながら話す。
「里奈さんが行くと、お昼までに帰って来れる気がしないなよね。」
ヤービスは笑いながら答えた。
イーロが何か言いたそうにヤービスと里奈を伺う。
「イーロ?どうした?」
ヤービスがイーロに尋ねると、
「私も一緒に行けませんか?」
おずおずとヤービスに尋ねる。
ヤービスが里奈に視線を向けてきた。
「眷属達は警戒心がとても強いの。イーロが行くと、もしかしたらカズラ達が姿を出さないかもしれない。」
イーロは里奈の話をじっと聞いていたが、しょんぼりする。
「仕方ありません⋯⋯。」
「いつか一緒に行きましょう!明日は大事な用事だからね!いつかカズラやヒイラギをイーロに紹介するからね。」
里奈と約束をし、明日は二人はお留守番。
因みにアルバートはフィッセル侯爵家に魔道具を持って帰っている。
帰って来るのが遅いのは気にしないでおく。
聞かない方が良いと、里奈とヤービスは判断した。
明日は忙しくなるので早目に寝る事にする。
今日はサリーとナミの初出仕となるので、里奈は玄関まで見送りをしている。
「大丈夫だと思うけど、気をつけてね。貴女達ならきちんと指導出来るわ!でも、無理はしないでね。」
サリーとナミは一礼をし、邸の馬車で王宮に向かう。
アルスタ王国の騎士達が数人、護衛でついて行く。
「ヤービスもそろそろ行くかしら?」
ダイニングに向かうと、ヤービスとイーロとアルバートが朝食をとっていた。
「おはよう。ヤービス、イーロ。アルバートはお帰りなさい?かしら。」
笑いながら里奈は挨拶をする。
「おはよう。里奈さん。」
「おはようございます。里奈さん。」
ヤービスとイーロが挨拶を返す。
「ただいまリリ。昨日は深夜に帰って来ました。魔道具の調子を見ていましたので、遅くなりました。」
(魔道具の調子じゃないと思うけど⋯⋯。聞かない方が身のためよね。)
「ヤービスは森に行くけど、アルバートはどうする?私とイーロはお留守番よ。」
アルバートは少し考え、ヤービスと一緒に行くことに決めた。
食事を終えると、ヤービスとアルバートは森に。
私はイーロと白狐を連れて、こっそり神殿に向かった。
昨日、白狐にキシャール神官長に里奈が尋ねるので一人で部屋にいて欲しいと頼んでいたのだ。
キシャール神官長の元に転移する。
部屋に現れた里奈にキシャール神官長が挨拶をする。
「時間を取ってくれて、ありがとうございます。」
里奈が神官長にお礼を伝えた。
神官長は笑顔で受け入れてくれた。
ただ、隣にイーロがいた事には少し驚いていた。
「側付き達に頼んで、アルスタ王国の孤児院で使っている本や文字を書く紙を持って来たの。」
里奈は空間から沢山の本や紙を山盛りテーブルに出した。
その量に神官長が驚いている。
「これを使って、子供達に勉強をさせてあげてね!私は暫く来れないけど、また様子を見に来るわ。」
神官長はテーブルの山と里奈とを、行ったり来たり何度も見ている。
「こんなに沢山⋯⋯。ありがとうございます。子供達と大切に使います。」
神官長が深く頭を下げた。
「時間がないので行きますが、神官長も無理をなさらずにね!」
里奈は手を振り、転移で帰って行った。
邸に戻ると、白狐が里奈に話しかける。
『イーロが行った意味はあるのか?』
里奈は振り向き白狐に答える。
「イーロは民の支援に何が足りないかを知りたいと言ってたでしょう?話すより、私がやっている事を見た方が早いと思ったのよ。」
里奈の話に、『なる程な。』
白狐は一言口にすると、ソファーに横たわった。
「孤児達は学ぶ機会が無かったのですね⋯⋯。」
イーロは何やら考えているようだった。
「里奈さん。子供達に何が出来るか、私と考えてもらえますか?」
イーロが里奈に協力を求めた。
「勿論よ。私はアルスタ王国で孤児院を作ったりしたわ。私の経験がイーロが考える事に繋がるなら嬉しいもの!」
二人は暫く孤児院の話を語り合う。
ヤービスとアルバートが帰って来た事にも気が付かない程に子供達の事を考えていた。
ヤービスとアルバートは、白狐の横たわるソファーの対面に座り語り合う二人を眺めていた。




