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一人ぼっちだった前世⋯⋯。今世は最強(最恐)愛し子として楽しく生きてます!  作者: おかき
ザイラー獣人国編

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28話 教会を変えて行こう

王宮の広場を後にした里奈と白狐は、神殿に来ていた。


門の前に立つが、神殿は静かだった⋯⋯。


門から神殿まで歩くが人の気配が外にはなかった。

気配があるのは、神殿の中。


神殿の扉からヒョコっと中を覗いた。


女神像の前で、額を地につけ謝罪を繰り返す神官達が見えた。


先頭には、聖女がいた。


謝罪する理由は里奈も解っている。

自分達も苦しんでいたが、更に酷く残虐な行為を獣人国は犯してしまったのだから。


知らなかったでは済まされない程の行為だったのだ。

特に教会の者には辛かっただろう⋯⋯。

(全ての民に視せた方が良いと思ったけど、間違いだったかしら⋯⋯。)


里奈の不安を感じ取った白狐が里奈に尻尾を絡める。


『里奈よ。罪を視せた事を後悔しておるか?里奈がせずとも、我が視せていただろう。獣人国を変えて行く為には知らねばならぬ。民に疑問を持たせてはならない。』


白狐の言葉に、里奈は返事の代わりに尻尾を抱き込む。

モフ毛の尻尾で落ち着きを取り戻した里奈が再び神殿の中に視線を向けた。


里奈と白狐に気付いた神官長と聖女が里奈を見つめていた。

ただ、静かに⋯⋯。


キシャール神官長が里奈に近づくと、里奈の足元で儀礼の礼をとり頭を下げた。

深く深く頭を下げたのだ。


「申し訳ありません。この国が犯した罪は住まう私達の責任でもあります。

愛し子様には心労をお掛けしました事を深く謝罪致します。」


キキシャール神官長と同様に、残る神官や聖女達が地に伏していた。


「違う!貴方達からの謝罪なんて欲しくない!違うわっ⋯⋯。」

里奈は白狐の尻尾に顔を埋め、泣き出してしまった。


キシャール神官長も皆も、突然泣き出した里奈にオロオロしている。


『里奈は謝罪が欲しくて視せた訳ではないのだ。亡くなった者がいる事実を知り、その死を悼むと共に新たな国を作る為に真実を知る事で、二度目と間違わぬようにして欲しかったのであろう⋯⋯。』


残る二つの尻尾で、里奈をポンポンと慰めている。


『心労もある。暫し二人にしてもらえるか?』

白狐の言葉に、神官達は静かに神殿から退出した。


白狐は尻尾で胸元に抱き込むと、ポンポンと里奈を眠りに誘う。


『少し休むのだ。』


里奈は尻尾を抱き込んだまま、意識を保っていられず手放した⋯⋯。


里奈が意識を手放すと同時にアルバートが里奈を追って転移して来た。


「どうしたのですか?」

神殿の入口で里奈を抱き込み横たわる白狐を見て、アルバートが焦って近づく。


『里奈がここに来たら、神官達に深い謝罪をされての。里奈は謝罪が欲しかったのではないと、泣いてしまったのだ。

里奈は全ての民に真実を視せた事を後悔しておる。

獣人国に来て忙しなかったのもあろう。心労で少し疲れておるのだ。』


アルバートはしゃがみ込み、里奈の髪を優しく撫でた。


「理の違う世界で対処するのは大変でしょうね⋯⋯。

リリは早く静かに暮らしたいのか、急ぎすぎていますね⋯⋯。

まだリメル大国の事もありますし、リリは何やら女神の森の事も気になるようですしね。⋯⋯。

まだまだ抱える問題は減りませんね。」


里奈の寝顔を眺めながら、白狐と話し合う。里奈を休ませる為に、この国で何から手を付けるのかを⋯⋯。


白狐とアルバートの話し声で、目が覚めた。

神殿の入口で眠るなど恥ずかしくて神官達に会いにくい⋯⋯。


『里奈が眠りに就いたのは、神官達が出た後だ。誰も見とらん。』

白狐の言葉にホッとする。


「リリ。大丈夫ですか?屋敷に帰ったら、ゆっくりしましょうね。」

アルバートが顔を覗き込み声をかけた。


「そうね。帰ったらゆっくりします。」


里奈は立ち上がると、神官達がいる聖女達の部屋へとやって来た。

扉をノックすると、「どうぞ。」と返事がした。


里奈が中に入ると、聖女達や神官達が慌てて立ち上がった。


「愛し子様。具合はもう宜しいので?」

キシャール神官長が側に寄り、里奈の顔色を確認する。


「ごめんなさい。大丈夫よ。ちょっと疲れたみたい。」

苦笑いする里奈だが、聖女や神官は今日の出来事を全て視ていたのだ。


愛し子様の心労を思うと、心配が先に来る。


「今日尋ねたのは、これからの教会の役割について相談に来たの。時間はあるかしら?」

里奈の言葉に神官長が笑顔で、

「勿論です。愛し子様のお話を聞かせて頂きます。」


そう言うと、里奈達をソファーに案内した。

紅茶を出され、里奈が口にする。

気持ちも落ち着き、早速話をきり出す。


「国境の瘴気についてなの。

瘴気は白狐の結界を解くと同時に浄化して貰ったわ。本当はね白狐の神力を使えば、この国の浄化は直ぐに済むの。

でも、それでは意味がないと思って。」


里奈は聖女であるオティとリティを見た。

「アルスタ王国の聖女を呼びます。そして、獣人国の聖女も一緒に浄化と民の治癒に出てもらうわ。」

 

オティとリティは顔を見合わせる。


姉のオティが里奈に問いかけた。


「あの⋯⋯。以前愛し子様が私達を浄化に行ってもらうと言っておりましたが⋯⋯。その⋯⋯聖女は神殿を出ても良いのでしょうか?」

聞きにくそうに問いかけられた。


里奈はその問いかけに、キョトンとする。

「獣人国の聖女は、神殿から出ないの?」


「聖女は神殿にあるべきと、ずっとそう言われておりますので⋯⋯。」

キャシー神官長が答えにくそうに話す。

獣人国は間違いを犯し過ぎた。

もしや、聖女の事も間違っているのか⋯⋯。と、不安で仕方なかった。


「アルスタ王国の聖女は、神殿に殆どいないわよ?魔物の討伐に同行するから。」


里奈の言葉に、全員が驚く。

「本当ですか?」

オティが問いかけた。


「本当よ。だって聖女達を一番こき使ってるのが、愛し子なのだから。

瘴気に侵された人を遠くの神殿まで動かせないし、時間がかかるわ。急いで治癒をしないと民が死んでしまうわよ?」


「「そうなのですね⋯⋯。」」


二人の聖女の声が重なる。


「獣人国の人々は、世界を知らなさ過ぎると思うの。自国から出る人がいないから、他国の事を知らない。

人族とのいざこざも理解しているわ。

でもね、リメル大国が特殊なだけでアルスタ王国で獣人を嫌う人は少ないのよ。

クーロ達も人族と一緒に仕事をし、食事をしてるわ。子供達とも遊んでいるもの。」


全員が信じられない思いだった。


「アルスタ王国の聖女達も獣人達のモフ毛の虜よ?貴方達の容姿をとても好いているわ!」

里奈の言葉に追加のようにアルバートが話しだす。


「アルスタ王国の聖女だけではないですよ?リリは、兎の獣人である聖女様達をとても好いております。」


アルバートの言葉に、里奈がギョッとした!

「な、何を⋯⋯。」

里奈は恥ずかしくて顔を赤らめた。

聖女達も釣られて顔を赤くする。


アルバートが涼しい顔で、

「違いましたか?」

そう問いかけてきた。


「そうよ!兎の獣人の聖女が可愛いわよ!真っ白なモフ毛が好きよ!いけない?!」


里奈が叫ぶように白状した。


キシャール神官長達は、一瞬驚いたが肩を震わせ俯いている。


「笑いたければ、笑いなさいよ!」


里奈のむくれ顔を見た神官達が、声を出して笑う。

その笑いに釣られて、キシャール神官長の我慢の糸も切れて笑い出した。


和やかな空気になり、話を進めやすくなった。


「教会の役割を一から見直そうと思うの。

国によって事情はあると思うけど、今回みたいに王族の権限で教会が蔑ろにされたら困るもの。」


「教会を独立した立場に置きます。

そして、貴族が納める税の一部は神殿に回るようにします。

寄付をどうするかは、またクーロ達と相談した方が良いから後回しね。」


「ここまでで、質問はありますか?」


里奈が神官達に問いかける。


「アルスタ王国は同じ仕組みですか?」


里奈は神殿が独立し、税の一部を王宮から回している事は知っていたが、運営までは解らなかった。


「ほぼ同じです。寄付は感謝の気持ちとして頂くようですが、魔術により全て記載されているので、教会側が不正が出来ない仕組みになっていますね。

寄付されたお金は、地方の神殿を優先に配分されます。」


アルバートの説明に、キシャール神官長が頷いていた。


「この国には、神官長の代表者。つまり、大司教は存在しないのですか?

他国には大司教を据え置いている筈ですが。」


キシャール神官長がアルバートからの質問に眉を潜めた。

何かがあったのだろう⋯⋯。

大司教の言葉に、反応したのだから。


「大司教はかなり昔におりましたが⋯⋯。権力を使い、教会内部を腐敗に導いた役なのです。それ以降、大司教は立てず各神殿の神官長が話し合い決めています。」


キシャール神官長が教えてくれた。


「では、大司教は立てず今まで通りに神官長達が纏め上げてね。」

里奈の結論は早かった。


「宜しいのですか?」

キシャール神官長は、愛し子様は大司教を置くと思っていたのだ。


「獣人は種族が沢山いるから、その方が良いかもしれないって思ったのよ。」


以前いた大司教も、一つの種族が牛耳った為に起きた事であったのだ。

愛し子様の判断に、キシャール神官長は感謝した。


「問題は聖女よね。聖女は獣人国ではオティとリティしかいないのよね?」


オティとリティが頷いた。


「アルスタ王国が多過ぎるのかな?

聖女が少な過ぎる理由が解らないし、理由はきっとあるのよね⋯⋯。」


「王都の貴族の中から選ばれますので、数は少なくなります。」

サラリと説明されるが、え?である。


「地方の貴族や、平民からは選定しないの?」

アーグやセシーは地方貴族だし、アルスタ王国の神殿の聖女候補には幼い平民の子供もいたのだ。


「それは⋯⋯。しておりませんね⋯⋯。」


キシャール神官長も、疑問に思ったらしい。

今迄王都でしか選定を行っていない事が、この国の当たり前だったからだ。


「聖女は少ないより沢山いた方が良いわ。救える民がもっと増えるもの。

地方から選ばれたならば、その地の聖女になっても良いし。地方の貴族や平民を調べれば聖女が見つかる可能性は広がるわよ。」


神官長や神官達は、アルスタ王国の神殿と獣人国の神殿の違いに驚くばかりだ。


「多くの国が、国をあげて聖女を探しているのに獣人国はなぜしないのか。

それは、他国の教会を知らないからよ。知る事って大事なの。」

里奈は自分の言葉にウンウン頷いている。


「獣人国の神官達も、他国の神殿を視察してみると良いかもね。」


里奈は紅茶に手を伸ばした。


「そうそう。リメル大国は見本にならないわよ。あの国は絶対的な身分で成り立つ国だから、下位貴族以下は聖女であっても虐げられるから。関わらない事を勧めるわ。」


サラッと恐ろしい事を伝えてくる。


「おおまかな内容だけれど、これを基準に教会を変えて行くつもりです。」


「人族と獣人は種族が違います。同じ女神様を崇めていても、全く同じ仕組みは出来ない事もあります。

だから、無理な事は無理だと教えて欲しいの。私が提案するから受け入れるのは止めてね。それをすれば、いつか崩壊してしまうわ。」


愛し子様に反対意見を出す事は少し恐ろしい⋯⋯。

だが、愛し子様が言う事は最もである。


「畏まりました。種族の違いによる意見がありましたら、きちんとお伝え致します。」


キシャール神官長が頷いてくれた。


「ありがとう。これから忙しくなるけど、教会も変わらなければならない事は理解してね。」


「それと、少ししたらアルスタ王国の聖女を呼ぼうと思っています。オティとリティにお願いする事になりますが、大丈夫?」


里奈は二人を心配したのだが、オティとリティは満面の笑顔だった。


「人族の聖女様と会えるのが楽しみです!」

垂れた耳を、パタパタさせる仕草は可愛い以外の言葉が見つからない。


里奈は聖女二人の喜ぶ姿を存分に眺めた。


この笑顔がいつまで続くかを考える。


オティとリティの聖魔力は、初めて会った時のやらかし聖女達より遥かに少ない。

アルスタ王国の聖女候補の方がもしかしたら上かもね。


(よし!オティとリティを鍛えてもらおう!)


この時の里奈の予想通り、やらかし聖女達によって鍛えられ、泣きながらもオティとリティは浄化の旅に出る事となる。



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