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一人ぼっちだった前世⋯⋯。今世は最強(最恐)愛し子として楽しく生きてます!  作者: おかき
ザイラー獣人国編

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23話 王宮はやはり伏魔殿

里奈と白狐は王城へと偵察に向かう。


白狐の背に跨り、王城の敷地へと入った。

白狐が姿を消している為、白狐に乗る里奈の姿も消えている。


堂々と正門から入る。

里奈は門の先を見て、絶句する。


至る所で、瘴気が立ち上っているのだ。

瘴気がある場所は特に悪しき欲があるのだから⋯⋯。

《白狐⋯⋯。》

《瘴気が酷いな。》

《瘴気が上に抜けているから、勤める獣人達は侵されていないのね。》


蝕まれたはいないが、すれ違う獣人の顔色は酷く悪い。


うろうろしていると、サロと同じ種族の獣人を数人発見。

彼等はやはり元気なようだ。


(瘴気に影響されにくいのかしら?)


白狐にお願いしてついて行く。

コボルト達が向かった先は文官室のようだ。

中を覗くとサロがいた。

机にかじりつき、書類を作っているようだ。

邸で見る可愛いサロではなく、キリッとした懸命に働く姿だった。


文官室を後にし、大臣達の執務室がある二階へと向かう。

一番奥の部屋の幾つかの部屋からは扉の隙間から薄い瘴気が漏れている。


あそこは、宰相や各大臣がいる部屋よね。

大臣達をどうするかが、厄介だった。

自ら王妃についたもの。

王妃に脅され、渋々大臣になった者。


それぞれ事情が違うのだ。

クーロ達が事後処理で、上手く対処してくれると期待する。


《白狐。ゴッドローブのいる宮と王妃の部屋を覗きましょう。》

《外に出る。窓からが見やすかろう。》


空を飛び、先ずは王妃からだ。

白狐が思考を覗き、里奈に見せる。


《嫉妬心でここまでやる王妃の性格の悪さに呆れるわね⋯⋯。》

里奈の念話を白狐が無視する。


白狐は王妃の部屋の窓の反対に顔を向けている。

白狐は美しい魂を好む。今まで顔を背ける程ではなかった。

王妃の魂は汚れすぎて見るに堪えないのだろう。白狐は顔を背けたまま、王妃の窓から離れた。


次にゴッドローブのいる宮に向かう。

またしても、白狐は顔を背ける。


思考を見せてもらう。

女神様と、何度も繰り返し口にする⋯⋯。


《ゴッドローブと女神様は関わりがあるのかしら?あれだけ執着するのは異常よね⋯⋯。》

白狐は答えてくれない⋯⋯。


《ゴッドローブを倒す事に女神様は反対していないから、気にしないで良いのかしら。終わってから女神様に聞けば良いわよね?》

《⋯⋯。》

《返事くらいしてよね!》

里奈は白狐が無視を続けるので、怒ってしまう。


《全ては終わったら解るだろうて。》


それ以上の会話はしてくれなかった。


最後に、この国の王であるシーヴァ王のいる宮に向かう。


着いて驚く。

宮の周りは沢山の花々が咲きほこり、美しい宮に住んでいたのだ。

同じ王宮とは思えない場所だった。


《この場所だけ瘴気が全くないわね⋯⋯。》

里奈は不思議な光景をじっと見つめた。


邸の三階を覗くと、昼間から寝台で抱き合う二人がいる。


(あれがシーヴァ王とセアラ妃ね。

この場所に瘴気がないのは、サロのように純粋だからではない。何も考えないで好きに過ごしているからね。

不満のない生活ならば、瘴気は来ないわね。)


阿呆らしい光景を見ていられず、二人の思考は見ずに離れた。


《あの二人がヤービスの両親なのよね。ヤービスと血が繋がってるなんて思えないわね。》


里奈と白狐は警備の様子を見たり、王宮にゴッドローブが魔道具を仕掛けていないかを確認する。


王宮を背に広大な広場にでた。

そこには、沢山の使用人や商人が何やら慌ただしく動き回っている。


《この広場が私達を迎える会場かしら?周りに魔道具の気配はありそう?》

上空から広場を見ながら白狐に問いかける。


《魔道具はないが、広場を覆うように四方に魔術が張ってある。侯爵に視せてみるか。》


仕掛けがあまりされていないのが、逆に気にはなる。

女神様の神力を警戒するかと思っていたけど、それもない。


《もっと仕掛けてあると思っていたけれど、以外ね⋯⋯。事が終わるまで何があるか解らないから、警戒はしとかないとね。》


《王城はこれだけ見ればよかろう。明日はヨーク領に行くのだ。アルバートと話を詰めて今日は早く休め。》


邸に帰る空の下。白狐が気遣いそう告げた。


明日はヨーク領の森の奥に行く。

決戦になるであろう日の話をしに。


ライアン達からは連絡はない。

頑張っているからこそ、連絡がないと判断する。

明日は森に行き、ライアン達に会って話を詰めよう。


寝台の中で明日の予定を考えながら、眠りに落ちた⋯⋯。



翌日の王都は雨だった。

明日の昼には止むだろうと、白狐が教えてくれた。


今日は私室でアルバートと朝食をとる。

紅茶は飲まず、身支度が整うとエイルの町の森の奥に転移した。


(国境の近いこの場所に、古代魔道具が埋められている⋯⋯。

私は見る事が出来ない。)

里奈は辺りを見渡し魔道具の事を考えていた。


突然何かが里奈の胸に飛び込んできた!

アルバートが片手で握り、遥か彼方に放り投げた。


「青龍だったのね。」

アルバートの行動から、青龍が飛びついて来たと解った。


里奈に抱きつきたいのではなく、青龍はアルバートに構って欲しいだけなのだ。

アルバートが大好きな青龍は、構って欲しくて里奈にちょっかいを出す。


里奈はそのうち帰って来ると、青龍を放置した。


アルバートにパトリック達や団長達。それに、聖女達を迎えに行って貰った。

里奈は魔道具に近付く事すら出来ない為、アルバートに集めて貰うのだ。


先に現れたのは、サーシャだった。

走り出して、里奈に抱きつく。


「里奈さん!里奈さんだー!」


はしゃぐサーシャの抱きつく力は、やはり強い⋯⋯。

痛いと言う前に、アルバートが引き離す。


「サーシャさん。リリが折れてしまいます。」

アルバートの冷たい視線を無視して、里奈に手を伸ばしジタバタしている。


遅れて、アーグとセシーがやって来た。

二人は里奈を見つけると、優しく抱きしめてきた。

「お久しぶりです。里奈さん。」

温かい抱擁に、里奈も抱きしめ返す。


サーシャに抱き返していないので、それを目にしたサーシャが崩れ落ちた。


里奈はクスクス笑い、地面に座り込むサーシャを抱きしめた。

「久し振りね。サーシャ。元気にしてた?」


サーシャは大好きな里奈の腕の中で泣いていた。決戦の日はまだだが、無事な姿に安堵したのだ。


遅れてパトリック達とやらかし聖女がやって来た。


「おかえりなさい。里奈さん。」

パトリックが優しく声をかけてきた。

やらかし聖女達も、里奈に礼をとる。


「とりあえず、座りましょうか。」


空間からシートとクッションを沢山出して、皆を座らせた。


「皆が元気そうで良かったわ。」

全員の顔色も良く、変わらない姿に里奈は安堵する。


「決戦の日は、明後日のお昼くらいになると考えています。

皆は朝から全員魔道具の側にいてもらいたいの。」


魔道具の周りで寝泊まりし、交代で見張っている。

「魔道具を動かすのは、その日で間違いありません。王城で白狐と確認しています。

私を殺しにかかる時に、同時に発動させるみたいね。

白狐の結界にゴッドローブの魔力が触れると同時に、カフスが熱を持ちます。それが魔道具の発動する時。」


「青龍の封じる魔道具は、王都に反転するので気にしなくて構わないわ。残り二つは発動させるしか解除する術がないの。貴方達の討伐に期待します。

エイルの街はナサニエル大神官達が結界で守ってくれます。安心して魔物討伐をして下さい。

私からは以上だけど、何か質問はあるかしら?」


騎士団長のバートンが手を挙げた。


「里奈さんは、大丈夫なのでしょうか。白狐様もアルバート殿もいるのですが。

やはり、残る私達は気になります。

相手は死んだ筈の魔術師です。何かあったらと心配します。」


以前敵対していた団長さんに心配されている。心が擽ったい。


「あちらは大丈夫よ。白狐が神力を使えば、消したい人を消すのは容易いと思うの。でも、獣人国の貴族も民も何が起こっていたのかを知らなければ、前には進めないし他国からも受け入れられない。

手間ではあるけど、王妃やゴッドローブを倒す様を見せなければいけないと思うの。」


「だから、大丈夫よ。」


全員が思う。

(この人に勝てる人はいるのだろうか⋯⋯?)


「解りました。十分お気を付け下さい。」

バートンの言葉に。

「ありがとう。」

里奈は心配してくれた事が嬉しく、お礼を伝えた。


「あ!忘れていたわ。

聖女達にやって欲しい事があります。」

里奈は聖女達に視線を向けた。


「獣人国は国境に近い場所は瘴気の影響を受けています。浄化と治癒をして貰いたいのよ。獣人国の聖女は王妃に聖魔力を封じられ毒を飲まされていたの。」


聖女達がざわざわする。

聖女を攻撃するなど、国としてありえないのだ。


「治癒をして回復してはいます。ですが、まだ地方に派遣するには負担が大きすぎる。

事が済んだら、貴女達にお願いしたいの。良いかな?」


「勿論です。」アーグが答えた。


「ありがとう。もう少しゆっくりしたいけど。他にも行く場所があるかから。」

里奈は立ち上がり、皆を見やる。


「貴女達も気をつけてね。」


全員でシートを片付けアルバートに渡す。

小さな作業を引き延ばせたい女性達⋯⋯。


「二日後が決戦の日。お互い頑張りましょう。」

そう言って、転移して行った⋯⋯。


アーグがポツリと呟いた。

「また会えますわよね⋯⋯。」


「大丈夫だ。頑張らなければならないのは私達だ。里奈さんにまた会いたければ、生き残るしかない。」

パトリックの言葉にアーグが頷いた。


里奈がいた場所を暫く眺めていた皆は、自分の持ち場へと戻って行った。



里奈達が次に転移したのは、ライアン達が詰めている邸の玄関だった。


以前助けたヤービスの従者達が里奈に気が付き走ってやって来た。


「愛し子様。おかえりなさいませ。」

執事のジーノが丁寧に礼をとり里奈達を出迎えてくれた。


「ライアン達に用事があるの。案内してもらえる?」

ジーノは礼をとり、里奈を邸の離れに案内した。

ジーノが離れの中を案内し、部屋の扉を叩く。


「ライアン様。愛し子様がお見えです。」


ジーノの言葉に、部屋からドタバタと大きな音がした。

扉が勢い良く開くと、身形が崩れたライアンがいた。

「里奈さん!どうしたのですか?何かありましたか?

あ!中にどうぞ。」

慌ただしく言葉を連ねる。


「伝えたい事があって来たの。中に入るわね。」

里奈とアルバートが部屋に入ると、その光景に驚いた。


部屋には側付き全員と、ヤービスに重鎮が全員ボロボロの身形をしていた。


驚いている里奈に、自分達の姿が見せられるものてはなかったと気が付いた。


部屋の中に沈黙が流れる。


「もしかして⋯⋯。お風呂も着替えもしてない?」

里奈の言葉に、全員がビクッとなった。


「役目を果たす事は大事ではあります。ですが、この状態はいただけない。

全員今からお風呂に入り、着替えて下さい。」

アルバートの指示に、後ろめたい皆は急いで従った。


皆が出て行った部屋を見渡すと、沢山の紙が床に落ちていた。

獣人国だけでなく、アルスタ王国へも話をし内容を詰めていた。


里奈とアルバートで書類を分類し、片付けて行く。

里奈が窓を開け空気を入れ替えていると、アルバートが転移して何処かに行っていた。

里奈は紅茶のカップや食器類を片付け、部屋を掃除して行く。


「こんなになるまで頑張らせてしまったのね⋯⋯。」

ポツリと呟いた言葉を帰って来たアルバートが拾う。


「ライアン達の顔をちゃんとリリは見ましたか?疲れてはいましたが、以前より顔がしっかりしていましたよ?

ライアンは一度は国を担う覚悟を持っていました。今は一から国を作る下準備をしています。政に関わる事でやり甲斐を見出しているのです。元王太子としてね。」


(王太子としての知識を発揮しているのね。)


「それはクーロさん達も同じでしょう。元宰相や大臣達です。身に染み込んだ仕事は中々抜けません。全員が昔を思い出して役目に取り組んだのでしょうね。」


アルバートが話しながらテーブルで何かを出し並べている。

並べている物を見て里奈もテーブルに近付いた。

「8番街まで行って来たの?」

アルバートが並べていたのは、スィートポテトとフルーツタルトだった。


「疲れた体には甘い物を。

リリがいつも言うでしょ?ライアン達にも、少しだけ休憩してもらいましょう。」


アルバートは話ながらも、テーブルにケーキを並べて紅茶を準備する。


身綺麗になった皆が部屋に戻ってきた。

綺麗になった部屋を見て、苦笑いをしながらもテーブルに並べられたケーキを見つけると急いで席に座って行く。


里奈はクスクス笑いながら、全員が席に着くのを待った。


これから更に頭を悩ませる質問をされるヤービスと重鎮達。


その前に甘い物で一息ついてもらう。


ヤービスや重鎮達は番をどう思うのか。

里奈の出すテイアをどう思うのか。


嬉しそうにケーキを食べるヤービス達を見て、里奈は不安を隠しケーキを口にした。


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