12話 転生者?
騒がしい夕食が始まる。
里奈の隣に誰が座るかで揉めていた。
里奈は右にアルバート。左にヤービスを座らせ、さっさと席に着いた。
「早くしないと、食後のお茶の時間が無くなるわよ?説明しなくて良いのかな?」
里奈が女性陣に声をかけた。
我に返った女性陣は、里奈の席を確認すると両隣が既に埋まっていることに気が付きしょんぼりしている。
空いた席に座り、食事を始めた。
ナタリー達は、チラリとアルバートを見た。
里奈は視線に気が付きナタリー達に話しかけた。
「アルバートがまだ気になる?ちゃんと以前のアルバートだから。」
それだけ伝え食事を再開した。
アルバートは苦笑いをするも、気にせず食事をする。
ナタリー達は先に聞いてはいたが、半信半疑だった為ホッと安心し、食事を進めた。
夕食に間に合わなかった男性陣とサーシャが帰ってきた。
調度良いからと、食事が終わったら全員に話をする事を伝えた。
パトリック達三人衆と団長達四人。聖女一行は、アルスタ王国の西に位置する辺境に浄化と討伐に行っている。
西はアーグ達が早い段階で浄化をしているが、後の獣人国からの瘴気の影響を受けその残りを今回浄化して回る。
出立するまで、獣人国に接する領地を巡礼して貰っているのだ。
残っているのは、本来の側付き達だけだった。
少し遅れて食後のお茶会が始まる。
「心配かけてごめんなさい。アルバートは無事に目覚めたし、以前のアルバートだから。」
その言葉に遅れて帰って来た男性陣達はホッとした。
「アルバート!申し訳なかった。私達の責任は大きい。」
ライアンとギルベルトが謝罪した。
「いや、あれは仕方ない。彼の暴走が原因だから気にしないでくれ。」
ライアンとギルベルトはやっとアルバートに謝罪出来た事に安堵した。
「私には召喚された聖女リリカの、アルバートには恋人のルーカスの魂があったの。」
生まれ変わりの事
聖女が眠り、ルーカスが暴走して出て来た事
魅了されたのはルーカスだから仕方ない事
二人は白狐の神力で眠っている事
(眠る場所や魂の居場所は言わない。)
「今はただの里奈とアルバートよ。」
女性陣達は疑問に思う。
「今までと何か変わりますか?」
キャシーの言葉に、ライアンとギルベルトとアルバートが一瞬苦笑いした。
「少し厳しい里奈になった?」
三人は益々苦笑いだ⋯⋯。
((冷酷な里奈さんに色々言われたのね⋯⋯。))
女性陣達は里奈が冷酷でもあまり気にしない。以外と女性の方が物事にあっさりなのだ。
「私達は何か変わった感じもしないので、今まで通りですわ。」
ナタリーの言葉に同意する。
「出立まで後4日です。4日目の早朝の出立となります。」
「獣人国に向かう男性陣は、家族や会いたい人がいれば出立前に会いに行ってね。」
「恋人同士もいるから、明日全ての調整をして終わり次第そのままお休みに入ってね。明日から3日間の休日ね。」
「ナタリーもキャシーもエミルもサーシャも。ヨーク領をずっと支えてくれて、ありがとう。しっかり休んで、私達が不在の間。ヨーク領と国を頼みます。」
里奈はナタリー達の目を見ながら言葉を紡ぐ。感謝と信頼を込めて。
女性陣はしっかりと頷いた。
「ライアンにギルベルト。カールにカルロ。貴方達は一緒に獣人国に来てもらいます。何があるか解らないけれど、貴方達を信頼しています。一緒に戦ってね。」
男性陣も頷いた。
「ヤービスはお留守番ね!でもゴッドローブと対決する時は必ず呼ぶわ。その時はヤービスの本来の魔力を戻してね。貴方は相当な魔力持ちよね?公爵と一緒にゴッドローブや王妃をやっちゃえば良いからね!」
里奈の軽口にヤービスは苦笑いする。
「魔力量も解るのかよ⋯⋯。でもその時は宜しく頼む。」
ヤービスは軽く頭を下げた。
「さて!お休み明けたら獣人国に向かいます。宜しくね。」
里奈は席を立ち、ナタリー達女性陣のみを連れて退室した。
残された男性陣は、久々にチェスをする事にした。
ヤービスが罰ゲームを作ったり、男性陣なりに楽しんだ。
退室した女性陣達は、客間に集まりオセロ対決をしていた。
脳筋のサーシャが以外に強く、里奈と接戦を繰り広げた。
ナタリー達が領地の話や、王都の孤児院や事業の成功の報告をし、里奈の提案した事全てが順調な事を伝えた。
心置きなく獣人国に向かって欲しかったのだ。
合間に恋バナをして、皆の恋の進展の話をする。
キャシーに恋人も想い人もいないが、本人も気にしていない。皆の恋バナを楽しく聞いている。
「里奈さんは、アルバートさんとお休みは何をするんですか?」
キャシーが里奈に話かけた。
「決まっていないけど、明日は森にいくつもりよ。カズラとヒイラギにも会いたいから。」
里奈はナタリーと対戦しながら答えた。
「眷属様達が着けているあの鈴は、里奈さんが考えたのですか?」
「領民達から感謝されてますよ?鈴の音が眷属様がいる合図だから、今日は何回聞いた!とか、何個聞いたとか。皆喜んでいます。」
里奈は手を止め、話をするキャシーを見る。
「民達は眷属を受け入れてくれているの?」
キャシーは大きく頷き。
「勿論です!森はとても綺麗ですし、お花もずっと咲き誇っています。眷属様のおかげだとちゃんと理解しています。」
「そう。良かったわ。」
里奈の言葉は少ないが、小さく微笑んだのを皆見ていた。
安心なされたのだ⋯⋯。
里奈の心配事を一つ減らせた。
結局オセロ対決は、里奈の勝利で終わった。
里奈の不在の間に腕をあげる!と意気込むサーシャに。
仕事をしろ!
早く付き合え!
と、皆に弄られていた。
里奈は私室に戻り、白狐と青龍と共に眠りに就いた。
早起きした里奈は寝室を出ると、リビングで待つアルバートを目にする。
「おはよう。アルバート。」
「おはよう。リリ。」
お互いの頬に口付けをし、アルバートは衣装部屋に向かい里奈はバスルームに向かう。
リビングに戻るとアルバートが衣装の用意を終え、テーブルに朝食の用意をしてくれている。
向かい合い朝食を食べる。
「今日は森に行くのですよね?」
アルバートの問いかけに。
「カズラとヒイラギたちに会いたいし、眠っている皆にも挨拶したいから。」
「では、お昼はあちらでピクニックにしましょう。」
アルバートの提案に笑顔で頷き、朝食を食べる。
穏やかな日常を里奈はやっと取り戻した。
和やかに朝食を食べる二人を、こっそりと。しかし、強い眼差しで見る侍女達。
この穏やかな二人を目にしたのは初めてだった。
巡礼中も何度か目にしたけれど、空気が違うのだ。
ゆっくりと時間が流れるような⋯⋯。温かいような。
見ているだけで、癒されていく。
サリーとナミは目の前のありきたりな光景を見ながら、泣きそうな気持ちになる。
胸の奥が、ギュッと鷲掴みされる。
そんな二人に気が付いた里奈は
「サリーとナミも森に一緒に行かない?白狐も行くし。どう?」
サリーとナミは二人の邪魔をするのは良くないと思い、断りをいれようとしたが⋯⋯。
「「行きます!」」
王宮侍女としてであれば、断るべきだ。
でも、白狐様と里奈様の側から離れがたく自分の気持ちが口から出てしまった⋯⋯。
本音が先に出てしまい、気まずそうにする侍女に。
「貴女達にも慰霊碑に祈りを捧げて欲しいのよ。皆に紹介しなきゃいけないしね。」
サリーとナミは思い出す。
ヨーク領では多くの民が魔物の犠牲になったと⋯⋯。
「里奈様。私達は準備をして参ります。」
サリーが頭を下げ、ナミを連れ部屋を後にした。
「あの二人を気に入ったの?リリ。」
アルバートが問いかけた。
「私より白狐がね。」
里奈の答えにアルバートが白狐を見ると、ソファーで横になっていた。
白狐は尻尾をポプポプさせ、返事をする。
「そうか。」
アルバートが呟き、再び食事に手を伸ばした。
穏やかな1日が始まる。
食事を終え、お出かけの準備も終えた。
サリーとナミも準備を終え、部屋に戻ってきた。
里奈は神力を使い、カズラに声をかけた。
《カズラ。おはよう。もう直ぐ森にむかうわ。一緒に今日は遊びましょう。》
『行くぞ』
白狐の声と共に四人が転移した。
〜❀〜
慰霊碑のある公園は、朝から民達が祈りを捧げにやってき来る。
仕事に向かう前や、1日の始まりとして祈りを捧げにやって来るのだ。
その日公園にいた者は一生忘れられない出来事を経験する。
公園では祈りを捧げる者。
公園を散歩する者。
それぞれが好きに過ごしていた。
愛し子様の出立まで民達もお休みをするように、側付き達の話し合いで決まった。
リーン⋯⋯
眷属様の鈴の音が鳴った。
リーンリーン⋯リーンリーン⋯⋯
鈴の音が一斉に鳴り響く。
沢山の鈴の音がなると言う事は、それだけ眷属様がいらっしゃるのだ。
民達は立ち尽くし、美しい鈴の音に聴き入る。
鈴の音が一斉に大きくなると同時に、慰霊碑の前に人影が現れた。
慰霊碑の前には、黒髪黒目の愛し子様がいた。隣には婚約者のアルバート様。
愛し子様を見た民達は、大騒ぎだった。
少し体調を崩され、出立まで休養されると聞かされていたのだ。
「愛し子様!体調は宜しいのですか?」
「無理をなさらないで下さいね。」
「今日はお参りに?」
民達が一斉に話しかける。
驚いているのは、侍女達だ。
高貴な身分である愛し子様に、礼もせず一方的に話しかけているのだ。
王宮しかしらない二人は顔には出さないが、心の中はパニックだった。
「心配かけて、ごめんね!もう大丈夫よ。」
「今日はもう直ぐ出立だから、慰霊碑の皆に挨拶に来たのよ。」
民達に気軽に返事し、会話を楽しんでいる。
侍女達は、これが里奈様の普通なのだと理解した。
里奈は民達と会話をしながら、周りに咲きほこる小さな白い花を摘み始めた。
民達も自分用に摘み始める。
サリーとナミは、白狐の隣で控え里奈の様子を目で追う。
楽しそうに会話をしながら花を摘み、アルバートに渡している。
里奈とアルバートがこちらに向かってきた。
「貴女達の分よ。」
そう言うと、アルバートから花束を里奈は受け取り侍女二人に渡した。
「良かったら一緒に祈りましょう。」
花束を渡し、里奈は慰霊碑の前に立った。
アルバートは二歩ほど後に立ち慰霊碑を見つめる。
里奈は膝を突き祈りを捧げる。
民達も侍女も一斉に礼をとる。
リーンリーン
眷属様の鈴の音が鳴り響くと同時に、薄い紫の光が辺りを包んだ。
温かなその光と、鳴り止まない鈴の音。
そして、里奈の側には子供姿のカズラとヒイラギがピッタリとくっついていた。
数秒の短い時間だったが、初めて経験する事に皆呆然としている。
「この森には行き場をなくした眷属達が集まっているみたいね。」
「皆さんが祈りを捧げ、森を大切にしてくれる。眷属達はここを終の棲家に決めたみたいよ。」
カズラとヒイラギが、コクコクと頷く。
「この森を大切にしてくれれば、眷属達が貴方達を守ってくれます。慰霊碑と共に大切にしていきましょうね!」
話を終えた里奈が慰霊碑の前を離れ、アルバートと共に侍女の元に戻って来た。
硬直したまま侍女達は動かない。
里奈が目の前で手を振るが涙を流すのみ。
里奈が声をかけようとした瞬間、カズラとヒイラギが侍女に抱きついた。
サリーとナミは視線を下げ、カズラとヒイラギを見つめる。
里奈とアルバートは珍しい光景を目にした。
慰霊碑の前では、我に返った民達が先程の光景に大興奮していた。
騒がしい背後を無視して、里奈は侍女達を見ていた。
『お主らは高位眷属の生まれ変わりだな。』
白狐のその言葉に、里奈もアルバートも侍女達も白狐に視線を向けた。
『我がそなた達の魂を気に入ったのも、眷属の魂ならば気に入るだろう。』
『神はより美しい魂を好むからな。』
『カズラとヒイラギも引き寄せられるのであろうな。』
「サリーやナミも転生者って事?いつか眷属だった記憶が戻るの?」
里奈も聖女の生まれ変わりなのだ。
気になる事ではある。
『いや。輪廻転生する時は記憶は消される。だが、その者が持つ魂の輝きは消えはしない。魂は眷属のままだな。』
「生まれ変わりとしても、サリーはサリーだしナミはナミよ。何も変わらない。」
里奈はサリーとナミを見て、あるお願いをする。
「私が獣人国へ向かった後、時々で良いから慰霊碑に祈りを捧げて欲しいの。それと、カズラとヒイラギ達と遊んであげて欲しいの。」
サリーとナミは目を見開き驚く。
愛し子様からの命を賜ったのだ。里奈の口調は軽いが、それは愛し子様からの命であると侍女達は受け止めた。
「「畏まりました。」」
恭しい返事に
「時間がある時で構わないわ。無理矢理は意味がないから。」
侍女達は仕事ではなく、心からを里奈が求めている事を察し二人は深く頷いた。
「リリ。民達が後ろで固まったままですよ?」
里奈が振り返ると、また別の信じられない光景に意識がどこかに飛んでいるようだ。
里奈はクスクス笑いながら
「私の侍女がカズラとヒイラギに気に入られ、眷属達にも気に入られたのよ。時々二人がここに来るから、宜しくね。」
里奈の言葉に、呆けたままコクコク頷く。
「よし!今日は沢山遊ぶからね!」
カズラとヒイラギは喜び、民達も交え皆で遊ぶ。
里奈とアルバートでヒイラギや公園にいる子供達を浮遊魔法で飛ばす。
たまに大人も高く飛ばす。
はしゃぐ民と里奈の笑い声が森に響く。
リーンリーンと、美しい鈴の音との笑い声のハーモニーを奏でながら。
その日の出来事は民達により広まり、沢山の眷属達が森に棲む事を知る。
後日。侍女達が公園に行くと、民達に崇められ居た堪れず逃げ出した事はサリーとナミの黒歴史となる。
Merry-Christmas❀
幸せな1日を❀




