1話: 女神様と初対面
初投稿です。少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。
「……を正常に……なの。だから貴方には申し訳ないのたけど私の力となって貰いたいの。」
銀色の世界で目の前にいるのはこの世界の女神。らしい……。
透けそうな白い肌に藤色の髪と瞳。
とんでもない美人がとんでもない話を持ちかける。
薄らぼんやりする思考の中途切れ途切れに聞こえる声。
私の意識に何かの映像が流れ始めた。
穢れの森はかつて美しい女神の森だった。
女神が森に神力を注ぎ加護をかけ自然と人間と多種族に平等に加護を与えるために造られた森。
森の中心部には湖があり、女神の眷属やその系譜の魔獣が森を維持してきた。
加護の力は風に乗り、大地に染み流れるように世界に安穏をもたらしていた。
100年程前、欲を出した軍事国が女神の森に瘴気を溜め込んだ魔物を放った。
魔物は古代遺跡から魔術師により復活され森に放たれた。
彼の国は加護をこの世界から神を排除し魔術と軍事力で世界を支配しようと策略した。
女神様がなんとか侵略された森の攻撃を抑え込んだものの、直接世界に干渉出来ない女神様は瘴気や魔物全てを抑える事は出来ず世界に瘴気と魔物が放出されてしまった。
世界に生きる者は各々で討伐や浄化をして来たが未だ昔の世界には戻る気配を見せない。
女神様は聖女に新たに浄化の力を与え瘴気を祓える様に神殿に言を授けた。
女神様は世界の浄化や各国の聖女へ力を与える為、全ての調和を整える事に神力を使い果たし暫しの眠りについた。
聖女は元々治癒のみで浄化の力は無かった。
魔術や魔法で病気や怪我を治癒する事は出来たが重症者や重病のものには効かなかった。
聖女のみそれが出来たが、その上女神様から浄化の力まで与えられたのだ。
聖女は国によって縛られた。
搾取され虐げられる聖女もいれば、もて囃され傲慢に我儘になる者もいた。
人間以外には聖女がいなかった為また人間と多種族の争いにも発展した。
女神様は世界を見遣る神だが種族ごとに崇める神もまたいる。それが女神様の眷属なのだが、また眷属達も眠る女神様の側に侍る為に小さな争いを起こす。
だか神に近い者たちの争いは外界に生きる者には天災なのだ。
世界は長きに渡る長雨や雷雨に火山の噴火。海の眷属が荒れれば津波か押し寄せる。
世界は疲弊していた。
争いが起こり負の感情が増えれば瘴気も増える。瘴気や魔物は減るどころか着々と世界に蔓延り始めた。
眷属の中にも女神様の意志を汲み取り世界の調和に力を注いだ。
だが世界は疲弊していた。
眠りから覚めた女神様は眠っていた間の世界の全ての記憶を移した珠を両腕に抱く。
世界の記憶は美しい球体に記録されている。
女神様の絶望は計り知れなかった。信じていた眷属の諍いが世界に絶望をもたらしていたのだ。
女神様は直ぐに争いを起こした眷属を消した。言葉通り存在を滅したのだ。
また力を尽くした眷属に瘴気の深刻な場所に棲むように。
眷属の聖力で少しでもと抑えさせたのだ。
女神様の願いはあの女神の森を再興する事。
眠りにつき神力を蓄えた今、それをするのは簡単だった。
しかし再興した森には眷属達や魔獣が棲む事となる。
100年前とは違い、人間には魔獣と魔物が同じものとし攻撃する者もいるのだ。
共存とゆう考えはこの世界にはない概念だ。
森を再興した後の世界を森を眷属を理解し纏める者が必要と考えた。
頭の中に女神様の記憶が流ていく。
私は記憶をなぞり終えると目の前にいる女神様に目を向ける。
穏やかに微笑む彼女は何も言わない。
最初に彼女には「力になってほしい」
と、言われていた。
彼女の記憶の「纏める者」とはきっと私の事だろう。
暫く見つめ合うとまた新たな記憶か流てくる。
新たに流れる記憶は私の瞳を大きく見開かせるものでもあり、見たくない認めたくない、あの辛く寂しい私の記憶でもあった。
声を出そうとすると喉の奥が渇き声が出ない。
一度深く息を吸い込み言葉を伝える。
微かに震える声を懸命に絞りだす。
「女神様っ…。先ほどのっ。先ほどの記憶は信実ですか? 私はこの世界にっ。存在を認められるのですかっ。」
女神様の瞳を私はじっと見つめ懸命に言葉を紡ぐ。
「勿論です。 貴方は私の可愛い愛しい子ですもの。」
そう言った女神様は一瞬で私との距離を詰め優しく私を抱きしめた。
「沢山の理不尽に耐え私の元に還って来てくれました。 私の大切な可愛い愛しい子。 私と共に世界を正常にもどしてくれますか?」
女神様の腕に抱かれ優しく温かな神力に包まれ私の意識は落ちて行った。