病院
「先生!急患です!」
頭に羽の生えた少女を背負ったカンパニャラは病院へ駆け込んだ。
「すぐ診せるニョロ」
応対したのは藪の中にある、この病院を営む藪蛇先生だ。
緑の蛇が白衣と眼鏡を身に着けたような見た目をしている。
少女をベッドに寝かせると、藪蛇先生は体を伸ばして隈なく診察した。
そして叫んだ。
「もうダメニョロ~!手も足も出ないニョロ~!」
カンパニャラは両手を口に当て
「ええっ!?そんなに悪いんですか?」
とショックを隠せないようだ。
「慌てるな。いつもの口癖だ。見たところ怪我はないようだが」
月が呆れるように言う。このやり取りを何度も見ていてうんざり気味のようだ。
藪蛇先生より月の方が冷静に状態を観察できている。
「う~ん。ここは……」
どうやら少女は目を覚ましたようだ。起き上がって周りを見渡している。
「良かった。気が付いたのね。ここは病院よ。
あなたが空から落ちてきたのを助けたの」
カンパニャラは嬉しそうに言った。
「それはありがとうございます。それでは私は帰らなければ……。
黄色い輪っかを見ませんでしたか?あれが無いと翔べないんです」
少女はまた辺りを見渡し始めた。
「黄色い輪っかってのはこれか?真っ二つだ」
月が拾ってきたのを差し出した。
「壊れてしまっては帰ることはできません」
それを見た少女は涙目になった。
「私が何とか直す方法を探してみるよ。これでも多少は技術に心得があるんだ。
問題はそれまでどうするかだが……」
月が腕を組んで思い悩んでいると、藪蛇先生が
「それなら、しばらくここに住むと良いニョロ。
そして学校に通って同年代の子達と戯れて気を紛らわすニョロ~」
と親切に提案した。
「ありがとうございます!私はセラフィと申します」
セラフィは笑顔で提案を受け入れた。
「良かったね。私はカンパニャラ。セラフィ、よろしくね」
カンパニャラは新しい学校の友達が増えそうで嬉しかった。
「私は月。輪っかのことだけじゃなく、
他にも困ったことがあったら相談してくれていいぞ」
月は先輩風を吹かせながらちょっと偉そうに言ったように見えた。
こうしてセラフィの楽しくも波乱な地上での暮らしが始まったのだった。




