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新しい始まりは大山鳴動して鼠一匹

アルティメシアとの戦いが終わり、世界は新しい未来へと歩み始めた.

セラフィとルシフェは地上に残ることを選び、

藪蛇先生の家から学校へ通っている。

静寂な日々が続いていたが、ある日それは綻び始めた。

「藪蛇先生、診てほしい子がいるんです」

尋ねてきたのカンパニャラで、ケージには一匹の鼠がいた。

紫色で、赤と青のオッドアイをしている。

「こんな鼠、見たことないニョロ。どこで?」

不思議そうに藪蛇先生は尋ねた。

「いつの間にか家にいて、弱っていたんです」

カンパニャラは経緯を説明した。

鼠は弱った声で鳴いている。

「ふむ。特に異常は見当たらないニョロ。言葉が分かれば話は早いニョロが……」

すると月が病院にやって来た。

「翻訳機を持ってきたよ。これで話せるようになるはずだ」

その翻訳機はまるで二つに分かれたカスタネットのようで、

月は鼠の耳にそれぞれの目の色に合うように装着した。

喋れるようになった鼠は話始める。

「お……お腹空いたでチュ……」

その意外な第一声に一同はズッコケた。

「単なる。空腹ニョロか。どうりで異常が見当たらなかったわけニョロ」

カンパニャラは家から持ってきたチーズを鼠に差し出す。

「鼠はチーズが好きだから、もしかしたら食べると思って持ってきたよ」

鼠はチーズを受け取ると美味しそうに食べ始め、感想を言う。

「美味しいでチュが、ちょっと人工的なエグ味があるっチュねぇ。

チューはプロセスチーズよりナチュラルチーズの方が好きっチュ。

これは個人の感想でチュ」

生意気な鼠に対して月は嫌味を言いながら本題に入る。

「小さい癖に随分と態度の大きい鼠だな。で、君はどこから来たんだ?」

鼠は戸惑い気味に答える。

「チューは気付いたら今までとは別の場所にいたでチュ。

そして、さ迷い歩いてここまで来たっチュ。

仲間に会いたいっチュ」

涙ぐみながら鼠は言った。

「きっと帰れるよ。それまで一緒に暮らそう」

セラフィは楽観的に言った。

「無責任なことは言わないで。それよりあなたの名前を聞かせて」

ルシフェはセラフィを窘めつつ尋ねる。

「リズムアニマルのカスタネッチュでチュ」

それを聞いたセラフィは納得する。

「だから青と赤のオッドアイの鼠なんだね。耳の飾りも似合っているよ」

だが音楽を司る譜の妖精のラヴィオラは不思議がる。

「カスタネットの鼠のリズムアニマルなんて初めて聞くラヴィ」

そこで月は一つの考察を話し始める。

「アルティメシアが消えて、閉じていた世界は開かれた。

それによって外からやってきたということじゃないか?」

話を聞いたカスタネッチュは悲しくなる。

「それじゃどうやって帰ればいいんでチュか……」

カンパニャラが落ち込んだカスタネッチュを励ます。

「セラフィも言っていたけど、帰る方法が見つかるまで一緒に暮らそうよ。

リズムアニマルとしてあなたに似合う服とカスタネットを作ってあげる。

美味しいチーズも毎日食べさせてあげる」

さっきの悲しそうな表情から一転、カスタネッチュは目を輝かせる。

「やったー!嬉しいっチュ!

美味しいチーズを食べられるなら、もう帰れなくてもいいっチュ!」

一同はカスタネッチュの現金な態度に苦笑いした。

(新しい始まりは大山鳴動して鼠一匹……だがこれからどうなっていくんだ?)

仲間が増えてみんなが喜ぶ中、月は思案した。

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