因縁の戦い
「次の場所はこんな森の中ですの」
セラフィは周りの木々を見渡しながら言った。
「しかたないラヴィ。文句は言わないでほしいラヴィ」
ラヴィオラの言葉をセラフィは否定する。
「文句なんかじゃありませんわ。
空にいたら森になんてこれませんもの」
セラフィは嬉しそうだった。
「調子狂うラヴィね……。月がいないのが残念ラヴィ」
ラヴィオラは残念そうに膨れっ面をした。
「月には連絡してあるわ。後から来るはずよ。
この森は来たことがあるから。たしか奥に……」
カンパニャラが言いかけた時に、視界が開けた。
そこには、巨大な平べったいウツボカズラがあったが、
お湯が張ってあり、湯気が出ていた。
「ようこそカズラ温泉へ。って、みんな?
符集めはどうしたの?」
出てきたのはカズラだった。
「ラヴィオラが次はここだって案内してくれたの。
みんなは知らなかったね。
カズラはここの温泉の若女将だよ」
カンパニャラがセラフィ、ルシフェ、ラヴィオラに紹介する。
「若女将……素敵ラヴィ。カズラに似合ってるラヴィ」
ラヴィオラは目を輝かせた。
「うふふ、ありがとう」
カズラは微笑んだ。
「カズラ、ここの温泉の若女将なら、
この森にある符について知りませんか?」
セラフィが尋ねる。もう友達なので呼び捨てだ。
「そのことで話があるの。私の家に来て」
一行はカズラの家に案内された。
室内は緑色が基調になっていて落ち着いた雰囲気だ。
そこではレシアと子どもが一緒に遊んでいた。
「カズラ、お帰りなさい。みんなも来ていたのね」
レシアと一緒にいる子どもが一行に挨拶をする。
「僕はハエトリソウのフライトラップ。よろしくね」
緑のショートヘアにツインテールのようなハエトリソウ、
半袖短パンという出で立ちで一見すると男女のどちらか分からなかった。
「フライトラップがここの符の守護者なの。
隠していたわけじゃないけど、ごめんね。
まさか必要になる時が来ると思わなかったから」
カズラは申し訳なさそうに謝った。
「謝らなくていいですよ。
フライトラップさん、あなたも守護者だというのなら、
符を貰う為にあなたに認められる必要があるのですか?」
守護者に認められれば符が貰えると、
前に戦ったバーニングは言っていたが、
それは他の場所でも同じなのか確認したかった。
「カズラお姉さまの友達だからあげたいけど、
心の底から渡したいという気持ちの問題なんだ。
だから今はちょっと渡せないかな……」
しょんぼりするフライトラップをセラフィが慰める。
「友達になるのに時間は関係ないと言っても、
そんなに都合よくいきませんものね。
信頼を育むことも大切です。
私達、これから仲良くなりましょう。
そうすれば心が通じ合えるはずです」
そこに外から大きな雷が鳴ると同時に笑い声が聞こえてきた。
「残念だがそんな時間はね~んだな!」
一同が様子を見に外へ出ると、
黒い煙が立ち上りそこから人が姿を現した。
茶髪の蜂という見た目で、
背中の羽は稲妻のような形をしていて、羽音はうるさい。
両手にはドラムのスティックを持っている。
「俺様の名は撥蜂!昆虫族の一人で、司るカードはTOWER!」
カズラは驚いた。
「昆虫族……私達食虫植物とは不倶戴天の仲と言われる……」
撥蜂はカズラと違い、あっけらかんと言う。
「そういうことになってるみてえだな。
俺達個人の間じゃ、そんなこと知ったこっちゃねえが」
そう言うと、両手のスティックを交差させた。
するとスパークが発生し、雷が起こり、
それはフライトラップへ向かって飛んだ。
「危ない!」
セラフィはとっさに盾を取り出し防いだ。
「だけど守護者相手じゃ話は別だよな?」
セラフィは、撥蜂の言葉と先程の雷を見て気付いた。
「小さな子をいきなり襲うなんて!
守護者が狙いということはアルティメシアの手先?
そして雷……私が地上に落ちたのも雷に打たれたからだった……。
あれもあなたの仕業なの!?」
撥蜂はとぼけるように言う。
「アルティメシア……どうだろうな?
でもお前を堕としたのは確かに俺だぜ。
あの時のお前の悲痛な表情、傑作だったぜ」
それを聞いて怒ったのはセラフィではなく、ルシフェだった。
「ということは、前のループで私を堕としたのもお前ということだな!
私をこんな姿にした罪を償え!」
怒りのルシフェはレシアに使った四角錐を飛ばす。
しかし撥蜂は器用に上下左右に躱しながら電撃を飛ばし、撃ち落としていった。
撥蜂は余裕の表情だ。
「どうした、こんなもんか?DEATHのルシフェ!
もうお前らに対抗手段はあるか?」
その時、月が走って来た。
「セラフィ、これを付けろ!少しの間だけだが跳べるようになる!」
月が投げた半円状の2つの物はそれぞれセラフィの羽の付け根に装着された。
セラフィが地上に落ちた時に真っ二つに割れた物を応急修理した物だ。
セラフィは屈むと一気に跳んだ。
その早さは一瞬で撥蜂の目の前に届くほどだった。
「何!?」
撥蜂が躱す暇もなくセラフィの剣から半透明のピンクの刀身が伸び、一刀両断した。
「くそ、覚えてやがれ」
撥蜂は翔んで逃げて行った。
セラフィが斬った時に戦意、いや悪意は感じられなかった。
本当に悪い人なのか?
それとも悪いことも悪いと感じない人なのだろうか?
「ありがとうお姉ちゃん」
地上に降りたセラフィにフライトラップはお礼を言った。
その時、正の符が出現した。
フライトラップと心が通じたということだ。
だが、都合の良すぎる展開にセラフィは疑問を持った。
まるで撥蜂はこのために来たような……。
「みんな、今日は色々あったから、温泉に入ってゆっくりしていかない?」
カズラの提案に一同は喜んだ。




