表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

忘れた少女と忘れられた少女

       「      」


 その言葉を聞いて私は病室から逃げた。


 ぼろぼろと溢れる涙を見せたくないから?

―違う


 変わり果てた親友の姿を見たくないから?

――違う違う


 その言葉に絶望したから?


―――違う違う違う


 この出来事を 悪夢を 現実を 忘れたい。

 忘れたいから。

 

 その願望…いや、欲望を抱いた瞬間、私の体は巨人に投げ飛ばされるように吹っ飛んだ。同時に狼の群れに喰い殺されるような激痛と衝撃が襲い掛かる。


いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい!


 心が叫んでいる中、ぼんやりと見える先にはトラックと慌てて降りる中年の運転手。…いつの間にか外に出てたんだなぁ…とようやく頭で理解が出来た。

 もうじきに意識の糸が切れると思った時、視界のさらに奥。電柱のすぐ下にたんぽぽがみえた。

 咲いたばかりなのかまだ小さい。見慣れているのになぜか目が離せない。

 傷だらけでぴくりとも動かせないはずの腕が。

 手が。

 痛みに逆らいながらたんぽぽに向かって伸ばそうと努力する。

 なぜそんな事をするか私だけが知っている。

 

 それは


「…ま"……り"ぃ…ご、…ごめ」


 道を歩いていた男性が、咲いているたんぽぽに気づかないまま、踏んだ時。


 私 秋川紫音の意識の糸は 切れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ