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5.状況整理させてください。






「ふんふんふーん♪」

「…………」



 これは、どういう状況だ。

 昨日の一件でさえ、夢だったのではないか、と思っていたのに。いま俺の目の前で起こっている出来事は、さらに現実味というものから逸脱しているように感じられてしまった。

 それもそのはず。

 疎遠になった幼馴染み、高嶺の花となった有栖麗華がまた俺の部屋にいる。

 しかも、鼻歌交じりに部屋の片づけをしていた。それだけではない。何故かエプロン姿になっている彼女は、いそいそと夕食の準備を始めているのだった。


 まるで状況が呑み込めない。

 しかし、いつまでも黙っていては話が前に進まないのも事実だった。



「なぁ、麗華……?」

「どうしたの、律人」



 勇気を振り絞って声をかけると、麗華はあっけらかんとした表情で首を傾げる。

 俺は幼い表情の幼馴染みにドキリとしつつ、訊ねた。



「……どうして、戻ってきたんだ」

「え? んー……」



 昨日の話では『願いごと』を叶えたら、身体に戻る……ということだったが。

 こちらの質問に対して、麗華は少しだけ考えて――。



「だって……とりあえず一度は、身体に戻ったから!」

「つまり、嘘はついてない……と?」

「うん!」



 まるで幼い少女のように無垢な笑顔で、迷いなくそう答えるのだった。

 それを聞いて俺は、思わず苦笑してしまう。つまるところ、彼女曰く『願いごと』一つにつき、身体に戻るのは一回ということらしい。あまりにも謎の理論過ぎて、こちらは笑みを浮かべつつも軽い頭痛を覚えた。

 眉間を押さえつつ、必死になって麗華の言葉の真意を考える。

 だが結局、答えには至れないままだった。



「ねぇ、律人!」

「……ん、どうしたんだ?」



 そんなこんなで、こちらが頭を抱えていると。

 麗華は相も変らぬ様子で、冷蔵庫の中を確認した後に明るく言うのだった。




「晩御飯、私が作ってあげる!!」――と。







「えーっと……ニンジンは、こっちか」



 ――十数分後。

 俺はアパートの程近くにあるスーパーへ足を運んでいた。

 片手には買い物カゴ。もう一方には、麗華から手渡された買い物メモ。それと睨めっこしながら、普段はカップ麺しか買いに訪れない場所で右往左往していた。

 不慣れにフラフラしていると、どうにも自分が悪目立ちしているのでは、と考えてしまう。もっとも、実際はそんなことないのだろうけど……。



「というか、流されるがままに買い物にきているけど。昨日といい、今日といい、いったい何がどうなっているんだ……?」



 そこでふと、俺はため息交じりに買い物メモを確認しつつ呟いた。

 あまりにも予測不可能な事態ばかりで混乱しているけど、ここらで一度状況を確認するべきかもしれない。とはいっても、手元にある情報といえば――。



「疎遠になった幼馴染みが『生き霊』になって、俺の部屋に通っている。……いや、これを冷静に分析なんてできないっての!」



 何もかもがイレギュラーすぎて、どうしようもない。

 俺は思わずそう口に出しつつカップ麺の山に、やや乱暴に手を突っ込んだ。



「まったく、どうしてこんな状況に――」

「こんな状況って、どんな状況さ?」

「いや、それがさ……ん?」



 すると、そのタイミングで耳馴染みのある声。

 もしかしなくても、と思いつつ振り返るとそこには……。



「この時間に律人が買い物なんて、珍しいじゃん!」

「お、おう……」




 言わずもがな、幼馴染みの海晴の姿があった。



 

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