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4.何も知らない。

あとがきの新作ラブコメもよろしく。







「何してるんだ、二人とも!?」




 俺が校舎裏にたどり着くと、そこには異様な雰囲気で睨み合う麗華と海晴。とっさに声を張り上げるのだが、彼女たちには聞こえていなかった。

 俺の存在など忘れているのか、海晴は拳を握り締めて――。



「ふざけんな! アンタはそうやって、いつもアタシを馬鹿にして!?」

「み、海晴……!!」



 叫ぶようにして、麗華へと殴りかかろうとする。

 寸でのところで海晴の身体を羽交い絞めにしたのだが、暴れる彼女を抑え込むので手一杯になってしまった。対して麗華はいくらか冷静になったのか、普段通りの表情でもがく海晴を見つめている。

 あるいは、観察している、とでも言えばいいのか。

 怒る相手の様子を眺めて楽しんでいるのでは、と思うほどの落ち着きだった。



「ふざけんな、ふざけんなぁ……っ!」

「………………」



 いよいよ感情の波に耐え切れなくなった海晴が、嗚咽を漏らし始める。

 しかし、麗華は顔色を欠片ほども変えずに言った。



「……それじゃあ、伝えたから」――と。



 そして、要件は済んだと。

 それ以上の言葉もなく踵を返し背を向けて、ただ――。



「……麗、華?」



 最後に俺は見た。

 麗華の瞳に、光るものが浮かんでいたのを。

 だけど、とっさに声は出てこなくて。俺は彼女の背中を見送るしかできない。すると海晴は俺の腕を振り解き、振り絞るようにこう叫ぶのだ。



「絶対に……アンタには負けないから、絶対に!!」



 そんな幼馴染みの言葉の意味すら、俺には分からない。

 彼女たちの間に何があったのか知らない俺は、あまりに無力だった。二人が涙しながら叫んでいるのに、何もできない自分が歯がゆくて仕方ない。

 ただ立ち尽くして、そして――。




「……くそっ!!」




 海晴が立ち去った後に、一人で壁を殴ることしかできない。

 コンクリートを打つと鈍痛が広がり、次第に痺れがやってきた。それでもこんな痛みは、苦しみは、二人の抱えている悩みに程遠いに違いない。

 俺はあまりに情けない。

 大切な二人の幼馴染みのため、力になりたいというのに……。




「ちくしょう……!」




 ただ血の味を知ることしか、できなかった。



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