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学校ではモブな俺。ウラの顔は誰も知らない ~(担任の美人教師が自分の生徒と気づかずに俺に懐いてヤバい)  作者: 波瀾 紡


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【第19話:こうしてみたらどうかな】

「じゃあさ、こうしてみたらどうかな」


 ふわり先生が決して舐められてるわけじゃないってことを、納得してもらうためのアドバイス。


「な、なにかな?」

「もしも授業中にみんなが騒ぎ始めたら、真剣な顏と口調で言うんだ。『お願いだから私の話をちゃんと聞いて』って。ふわりちゃんの真剣度合いが生徒に伝わったら、きっとみんな静かになって聞いてくれるよ」

「そっかなぁ……」


 先生は不安げな顔をしている。


「そうだよ。そうなったら、生徒達がふわりちゃんを舐めてるんじゃないってことがわかるだろ?」

「うん、まあそれは」

「ふわりちゃん、前に言ってたでしょ。生徒達がホントに可愛いって」

「うん。ホントにそう思ってるよ」

「だったらその気持ちが生徒に伝われば、きっと彼らもわかってくれるって。だからやってみようよ」

「あ……うん。ホト君がそう言うなら」

「よし、決まりだ。そうしよう」


 よかった。


 今まではふわふわした雰囲気で『聞いてよぉ』とか言ってたからダメだったんだ。

 ふわり先生が真剣に訴えたら、必ずみんなは聞いてくれる。


 マジでこの先生、みんなに好かれてるからな。

 舐められてるんじゃなくて、親しまれてるってのは間違いない。


「でもなんか不思議だなぁ」


 ふわり先生はカウンター席で頬杖をつきながら俺を見ている。


「なにが?」

「ホト君が言うと、ウチの教室内のことをちゃんとわかって言ってるみたいに聞こえるんだもん」


 ──うわヤバ。ちょっとマジで語りすぎたかも。

 だって真剣に悩んでる先生を見て、放っておけなかったんだもんな。


「そっかな」

「うん。……あ、そうだ。ついでにもう一つ、いいかな。ホト君の意見を訊きたい」

「なに?」

「私ね、一人の男子生徒に色々お願いしちゃってることがあってね」


 ──ん? なんの話?


「ストーカーにってる女子生徒を助けてあげてってお願いしてるの。その彼が案外真面目で、しっかりと助けてくれてるんだよね」

「……あ、ああ。そうなんだ」


 ヤバ。やっぱ俺の話だ。

 案外真面目ってなんだよ。今まで俺を不真面目って目で見てたのかよ。


 いやそんなことより、まさかふわり先生、俺が穂村ほむら ワタルだって気づいてるのか!?


「その彼に、どんなお礼をしたらいいのかなって。男の子の気持ちってイマイチわからなくてさ。ホト君ならわかるかなって。どんなお礼なら嬉しい? お菓子とか?」


 いや。ホト君と穂村渡が繋がってるわけじゃなさそうだ。

 ホッとした。


「あの……お菓子ってちっちゃい子供かよ?」

「あ……変かな? 男の子の気持ちって、それくらいよくわかんなくて」

「それってお礼をする必要があるの?」


 俺はお礼をしてほしいなんて、全然思ってないぞ。


「ん……どうだろ? でも本来彼がする義務のない面倒なことを押しつけたんだからさ。それを嫌な顔一つしないでやってくれてるんだからさ。お礼しなきゃ申し訳ないって、ずっと考えてるんだ」


 なにそれ。ふわり先生、いい人すぎだろ。

 ちょ、俺、感動で打ち震えそうだぞ。


「なるほどわかった。じゃあ俺なら、どんなお礼もらったら嬉しいかを言うよ」

「うん、お願い」

「今ふわりちゃんが言ったみたいな、心からお礼の言葉」

「……え? どういうこと?」

「さっき言ったことだよ。『本来はキミがする義務のない面倒なことを押しつけたのに、それを嫌な顔一つしないでやってくれてありがとう』。これだけで充分でしょ」

「そう……かな?」

「そうだよ。相手はモノが欲しくて協力したわけじゃないし、ふわりちゃんがさっきみたいな心のこもった言い方でお礼を言うなら、それはきっと彼に伝わるよ。彼も喜ぶと思う」

「そっか。ホト君がそう言うなら、間違いない気がしてきた」


 うん、本人が言ってるんだから間違いないぞ。


「ホト君ってホント不思議な人だよね。たまに冷たいことも言うけど、全然どエスじゃないよ。すごく優しい」


 それは相手がふわり先生だからだよ。

 他のお客さんにはもっと毒舌も吐くし、冷たい態度も多い。

 だけどふわり先生の純粋すぎる姿を見てると、あんまり突き放したことを言えなくなるんだよなぁ。


「いや、気をつけた方がいいよ。実は俺は心の中で。すごく酷いことを思ってるかもしれないぞ」

「そうなの? こわーい」

「そうだ。怖いんだからな」

「うふふ、やっぱりホト君って面白いね」


 ふわり先生はやけに嬉しそうだ。

 今夜の酒も美味しいと言って、またクピリとグラスに口をつけた。


 ふわり先生はそれからしばらくお酒を飲んでから「じゃあそろそろ帰るね」と言った。

 俺はあえて「また来て」とは言わなかった。


 さすがに、こう頻繁に顔を合わしていたら、身バレするリスクは高くなる。「もう来るな」とは言いにくいけど、また来てよとは言わない方がいいかなと思った。


 ふわり先生が店を出て、カウンター席の片づけをしている時に気づいた。


 ──あ。ふわり先生忘れ物。


 先生が座っていた隣の椅子の上に、ピンクのケースのスマホが置いてある。先生が持ってるのを見たことがあるから間違いない。


「今なら間に合うな」


 俺はふわり先生を追いかけるために店を出た。

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