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【第1話-②:バイト先のバーに担任教師が来た!②】

***


 強い酒をゴクゴク飲んで大丈夫なのか?

 ──という心配は見事に的中した。


 立て続けに4杯もカクテルを飲んで、どんどん饒舌になっている。


「で、私は高校の国語教師をしてるのですっ!」


 自分が高校教師だってことまでカミングアウトしちゃったよこの人。

 そして先生が語ったところによると、この店に来た経緯はこうだ。



 今日は学生時代の友達に誘われて合コンに来た。

 だけど参加者の男連中は見た目も話す内容もチャラチャラしていて好みじゃない。


 極めつけは趣味を聞かれて、ラノベやアニメって答えたら「ガキかよ」って鼻で笑われたってこと。


 趣味は人それぞれだから興味がないのは仕方ないけど、人の趣味をバカにする人とは絶対に仲良くなれない。


 そう思ったそうだ。


 そして二次会に誘われたけど、もちろんパス。

 むしゃくしゃしてこのまま帰る気にならなかったところに、目の前にあったバーの店構えになんとなく惹かれたそうだ。


「ラノベやアニメの良さがわからないってことは、人生の半分くらい損してるってことですよ。そう思っときゃいい」

「だよね! ホト君わかってるぅ〜!」


 ふわり先生、めっちゃ嬉しそうな顔してるな。

 どんだけオタクなんだよ。


「ホト君はどんな作品が一番推しなの?」

「えっと……」


 いきなり来たか。

 そんなにワクワクした目で見ないでくれ。

 天真爛漫な感じが可愛いくはあるけど。


 俺はバーテンだ。もしかしたらお客さんに合わせた会話をしてるだけかもしれないのに、俺が本気でオタク趣味だと信じ込んでのその質問。

 この先生マジピュアだな。悪いヤツに騙されずに生きていってほしい。


 ──って言うか17歳の生徒に純粋さを心配される22歳の教師ってどうよ?


 そういうとこだぞ、ふわりちゃん。


 だが俺はマジでラノベ・アニメ好きのオタクだから、全然いいんだけどね。


「そうですね。どれが一番なんて決められない。一番を決めるとそれ以外は良くないのかって聞こえてしまうから。多くの作品が自分を楽しませてくれて、それはもう尊いとしか言えないんだ」


 ──うわ、しまった。

 つい理屈っぽい、キモい語りをしてしまった。

 自分が大好きなことに大しては一生懸命になっていまうのが、俺の悪い癖だ。


 さすがにふわり先生もドン引きだよな……


「すごいよホト君。私もそう思う!」


 ふわり先生!

 目をキラキラと輝かせて、うっとりした目で俺を見つめてるよ!


「ホト君ってすごくカッコいい」


 ──え?


 生真面目だと思ってたけど、まさか初対面の男にこんなことを言う人だったのか!?

 いや、だいぶ酔ってるせいだよな!?


「今日はたまたま入ったバーでホト君と出会えて良かった。う〜ん大好き♡」


 やはり先生は、俺が自分の生徒だってまったく気づいていないようだ。

 もしもその事実を知ったら、きっとこの人、羞恥心で卒倒するな。


 それからふわり先生は、自分が生徒に舐められてるという愚痴を語り始めた。


「それはきっと舐められてるんじゃなくて、親しまれてるんでしょ?」

「うんにゃ、そんなことないよぉ〜 私、絶対に舐められてるもん。ヤツらめー」


 鼻息荒く生徒たちを愚痴ってる。


「やっぱ早く相手を見つけて、結婚退職したいなぁ」


 おいおい、現役教師がそんなこと言ってていいのか!?

 ──と思ったけど、先生はふと遠くを見る目になった。


「でもなんだかんだ言って、あの子たち、すっごく可愛いんだよねぇ」


 穏やかに目を細める姿は、やっぱ先生のソレだ。

 いやなにこの姿。ちょっとウルっと来たぞ。


 学校の話題になったから、もしかしたら俺の正体に勘づかれるかとビクビクしたんだけど。

 ふわり先生は店から出るまで、幸いにして俺の正体に気づくことはなかった。



 明日は月曜日だ。普通に学校がある。


 俺はいつも学校では、黒縁の伊達メガネをかけて前髪は下ろして、目立たない格好をしている。


 先生はかなり酔ってたし、これだけでも俺がホト君だと気づくことはないだろう。

 だけど念には念を入れて、あまり先生に近づかないようにして過ごそう。


 ──そう考えた。

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