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学校ではモブな俺。ウラの顔は誰も知らない ~(担任の美人教師が自分の生徒と気づかずに俺に懐いてヤバい)  作者: 波瀾 紡


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【第15話:歪んだ愛だ】

 湯上ゆがみさんが俺に語ってくれた内容はこうだ。


 彼女は同じ文芸部の和田を好きだ。

 しかし和田は笑川えみかわを好きで告白し、そして振られた。


 湯上さんはすごく落ち込む和田を見て、彼をこんなに傷つけた笑川を許せないと思った。

 だから笑川を怖がらせて困らせてやろうと考え、ストーカーの真似事をした。

 同時に、笑川が他の男子と仲良くさせないために、脅迫の手紙を出したそうだ。


 ちなみに隣の俺の下駄箱に入れたのは、単純に間違えたらしい。

 湯上さんってかなりおっちょこちょいな様子である。


「笑川に他の男子と仲良くさせない……ってなぜだ? 笑川が他の男子と仲良くした方が、和田だって早く諦めるだろう。湯上さんにとってはその方がいいじゃないか?」

「それも言えるのだけど……私は……」


 笑川が他の男子と仲良くしているのを目にして、和田が悲しそうな顔をするのが耐えられないらしい。

 それともう一つ。和田を悲しませた笑川が、自分は他の男子と仲良く楽しそうにしているのを見ると、腹が立ったのだと湯上は言った。


 冷静な頭で考えたら、湯上ゆがみあいの言うことはおかしい。

 かなり歪んだ愛情だ。


 自分が好きな男性が他の女性に振られたら、普通は彼が自分を振り向いてくれる可能性が出てきたと喜ぶだろう。

 自分が好きな男性を振った女性を脅そうとは普通は考えないだろう。


 だけども、愛や恋は判断を狂わせるものだ。

 バーでも、いい大人が恋に破れて、理不尽なことをよく言っている。


「なあ湯上さん。怒りの感情を笑川にぶつけるんじゃなくて、優しさの感情を和田君に注ごうよ。キミの優しさで和田君の心の傷を癒してあげようよ」


 俺は湯上さんの目を見つめ、できるだけ優しい声と口調で語りかけた。

 彼女は唇を噛んで、自分の心と闘っているように見える。


「このことは和田には絶対に言わないからさ」


 この言葉で湯上さんは、フッと表情を緩ませた。


「……は、はい。わかりました。もう笑川さんに嫌がらせはしません」

「そっか。ありがとう」


 湯上さんは心から反省してくれたみたいだ。ホッとした。

 無理矢理脅してわからせるより、この方が絶対にいい。


 ──そう思った時に、部室の扉がガラッと開いた。

 そして室内に入ってきたのは……


「……あ、笑川さん……」

「こんちわ」


 突然現れた笑川を見て、湯上さんは弾かれたように後ろに飛び上がった。

 そして突然頭を下げて、ひたすら謝りだした。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」


 まるで壊れたように何度も同じ言葉を繰り返している。

 ヤバい。湯上さんはビクビクしてる。


 湯上さんは充分反省している。

 笑川がムカつくのもわかるけど、これ以上湯上さんを追い込まなくてもいいんじゃないか。


「ちょっ、笑川待って……」


 俺の言葉を無視して、ズンズンと湯上さんに歩み寄る笑川。


「あのさ湯上さん。あたしが湯上さんの気持ちを追い込んだんだよね? あたしの方こそマジごめん」

「……え?」


 湯上さんが、何が起こったのかわからないって顔できょとんとしている。

 いや、俺だってワケわからん。なんで笑川が謝ってるんだよ?


「あたしは告白されても、断らなきゃいけない時ははっきりと断わるようにしてる。それは仕方ないことだって思ってる」


 そりゃそうだ。笑川は間違っていない。

 湯上さんもうなずいてる。


「だけどそれで湯上さんを悲しませたのは事実だから謝る。マジごめん」


 なんと。笑川が真剣な顔で、ガバっと頭を下げた。

 笑川が湯上さんに謝る必要なんて1ミリもない。だけどコイツは、心底申し訳ないと思ってるみたいだ。ホントに優しいんだな。


「笑川さん、悪いのは私の方です。頭を上げてください。そして私の方こそ本当にごめんなさい」

「あ、ありがとう湯上さん」


 湯上さんも笑川の優しさを感じ取ったみたいで、瞳を潤ませている。

 俺は笑川の耳元で囁いた。


「笑川。そろそろ帰ろう。そろそろ和田が部室に来るかもしれない」

「あ、そだね。行こ! じゃあね湯上さんっ!」

「あ、はい。こちらこそ、ありがとうございます」


 俺と笑川は文芸部室を後にした。

 湯上さんは思ったよりも素直に認めてくれたし、反省もしてくれた。

 この事件は解決だ。これでもう、笑川のボディガードをする必要はなくなった。


 ──うん、よかったよかった!


 これでまた今日から、のんびりと一人で登下校できる。

 学校でも笑川を見張る必要はなくなる。


 俺はホッとして、笑川を置いて、久しぶりに一人でのんびりと駅までの道を歩いた。

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