燈(18歳女性)の例:1.11
「あの、読んでて楽しい本て、ありますか?」
と、燈は自分の質問の仕方に恥ずかしくなった。
AI相手だと、ざっくりそのまま伝えても伝わる。
その為、ついついと雑な質問をしてしまう。
燈は、そんな自分が許せなかった。
AIが答える。
(はい、たくさんあります!いくつかおすすめします!
1,ツリー・トッターシリーズ 作者 エーデーランニングさん
魔法の世界が舞台で、主人公であるトッターさんの冒険や友情を描いたSF小説で、老若男女問わず大人気です。中でも…)と。
燈は、手元にある、3Dディスプレイに表示された本を、いくつかパラパラとめくる。
図書館だから仕方ない、と燈は肩を落とす。
「ありがとう。」
燈の言葉に、
(いえ、お役にたてていれば幸いです。)
と、AIが応答した。
外に出ると、風は少し冷たくなっていた。
「小説公募、、」
燈は、小説を書く事が好きだった。
しかし、それは人様に見せる事が出来る程の物ではない、
という自覚も燈にはあった。
下手過ぎて価値がない、魅力がない、
書き込まれないその優しい感想達にありがとうを、
燈は心で呟く。
今日もありがとう。
黄昏を見て、燈は大きく溜息をついた、
心の中も、その黄昏で焼き尽くして欲しい位だ、と。
寂しさに、燈は指に爪を立てた。
燈は唱えた。
「【空は堂々と青く、風は慎ましく柔らかく、温厚な銀色の陽に照らされた私は、
見知らぬ私を求める時と知る。】
、、こういう所だよね、きっと。
ま、いっか。」と。
この世界の何かが変わっても、
きっと私は変わらない。
そう燈は思った。




