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お題シリーズ4

その少女が生きのびた理由

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2022/07/27



 生き延びてしまった。


 最後の一人になるまで生き残ってしまった。


 私はこの施設の中で一番弱々しかった。


 一番生きられない人間だと思っていたのに。


 とうとう最後まで生き延びてしまったらしい。


 どうしてこんな大誤算が起きたのか分からない。





 私にはその実験場での記憶しかない。


 私が育った場所。


 その場所は何らかの実験をする施設だった。


 実験を行うのは人間で。


 その実験対象は、孤児だった。


 親のいない子供を狙って攫い、使っているのだった。


 実験場の目的は、禁術、とかいうのを成功させるためらしい。





 私以外にも集められた子供は大勢いたけど、私はその中で一番背がひくくて小さかったから。


 すぐに死んでしまうと思った。


 けれど、私は何度も生き伸びる事になった。


 私に実験の順番がまわってきそうだったら、誰かが私の前にでて、私の姿を隠した。


 私が飢えていたら、少ない食事を分けてくれる者がいた。


 私が病気で熱を出していたら、はやく治るように看病してくれた人がいた。


 それらの人達が自分の事だけを考えていれば、いま生き延びていたのはその人達だったかもしれないのに。


 いったいどうしてなのだろう。


 私には分からなかった。


 誰か理由が分かるなら教えてほしい。


 ぼうっとしていたら、騒がしくなった。


 いつもいれられている檻が開く。


 すると人が顔をのぞかせる。その顔は、なぜか見知った研究者の顔じゃなかった。


 その人物は「もう大丈夫だよ」と私に手を差し伸べてきた。






 数年前。


 年下の子は大切にしなければならない。


 この実験場に来るまえに、孤児でなかった頃、親から教えられていた事だ。


 生きていた頃の両親は、私の次に弟か妹を産むはずだった。


 だから、そんな事を言っていたのだろう。


 私はその事を強く覚えていた。


 親がいなくなって、孤児になり、実験場に攫われてからも。


 ある日、その実験場にとても小さな赤ちゃんがやってきた。


「おぎゃあ! おぎゃあ!」


 私だけでなく、他の子供達も驚いていた。


 今までなかった事だから。


 連れてこられた赤ちゃんは数人いた。


 禁術の実験では、様々な実験体が必要らしいから。


 だから、赤ちゃんも……と思って、研究者達が拾って来たのかもしれない。


 普通なら自分の事が大事だ。


 けれど、赤ちゃん相手にはどうしてもそれを貫けなくなってしまう。


 親に言われた事が理由だろうか。


 私はその赤ちゃんたちに優しくしていった。


 そしたら、他の子供も徐々にまねをするようになっていった。


 顔も名前も知らない孤児の集まりだったけど、私達は自然と団結して、赤ちゃんを守るようになっていった。


 けれど、そんな努力もむなしく、私達も赤ちゃんも一人ずつ犠牲になっていく。


 今生き延びているのは三歳になったこの子だけだ。


 せめてこの子は最後まで生き延びてほしい。


 私達より先に死なせたくない。


 この子を最後まで守りぬく事、それが大人達に命を弄ばれるしかない私達の抵抗だった。


 どうせ助けなんてこないだろうけれど、誰も助けてはくれないだろうけれど。


 せめて一分、一秒でも長く。


 私達より生きて欲しい。



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