51.昼食会
「おい、ルーファス。お前何か知らないか?」
口の端についたソースをナプキンで拭いながら第一王子のアドレーが大きな体を乗り出し、声を顰めていった。
「何かって?」
第二王子のルーファスは端正な顔を傾げる。
「この頃父上や宰相がゴタゴタしてる気がする」
「いつものことじゃないの」
「最近じゃ、宰相が不例で休んだり、魔道士長も何日か王都を開けていたようだ。今はなんとサカキ将軍がいない。出張ということだが場所も明確じゃあないようだ。何か起こってるに違いないぜ」
アドレーは目を輝かせた。
「まあ確かに、王都を守る将軍の行方まで極秘っていうのは何かあるのかな」
サカキがいない、と聞いてルーファスは興味を持った様だった。アドレーは次にアンナを見たが、フッと小さくため息をついた。
「アンナは…知らないよな」
「なによ、ひどいわアドレー兄様」
アンナが口を尖らせた。
今日は3ヶ月に一度行われる、兄妹が集まる昼食会であった。兄妹同士各々のことにかまけ疎遠にならない様にと、カール5世が子供達に義務付けたものだ。3人は円卓を囲んでいた。部屋の中には3人しかいないが、外には次女や騎士達が鈴なりで待機している。
「まあ知らないけど」
「ほらみろ」
アドレーが勝ち誇った様に笑ったが、アンナは澄ました顔で紅茶を飲んでいる。
(でも兄様たちはルーポト様のことはご存知ないのだわ。きっとアドレー兄様の言うゴタゴタもルーポト様が関係している気がする。私が魔王と喋ったことがあると聞いたら、どんな顔をなさるかしら)
緩みそうになる口元を何とか抑え、静かにカップを置いた。
「でもアンナはすごいよ。セキ様と協力して王宮の結界を改善したんだよね」
ルーファスがアンナに笑顔を向けた。アンナから見ても惚れ惚れするほどの美貌である。女性達が見たら悲鳴をあげるだろう。
「今のところうまく行っているみたい。宮廷魔道士の人が手伝ってくれたのよ」
新しい王宮の結界はすでに本格運用を始めている。今のところ不備はアンナのところまでは聞こえてこない。宮廷魔道士たちはしばらくの間以前と同じ体勢で勤務に当たっていたが、ワトビアが王都に戻ってからは休みも増え、士気も上がっている様だと算術士長のセキから聞いている。自分の算術を活かした初めての国に携わる仕事である。アンナもそれを聞いてホッと胸を撫で下ろしたものだった。
(そういえばアールスを見ていない気がする)
アンナはふとアールスの顔を思い浮かべた。結界の仕事の結果宮廷魔道士たちとも顔見知りになり、王宮内でも挨拶を交わすことが増えたが、思い返すと最近彼を見た記憶がなかった。とはいえ考えてもわかるものではない、宮廷魔道士には宮廷魔道士の事情があろうし、たまたますれ違いになっているだけかもしれない。
(パパかワトビアに聞いてみようかな)
まさか魔王と将軍と一緒に遥か北にいるとは思っていないアンナは呑気に考えていた。
その頃アールスは伝説の場所に立っていた。
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