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うろつく魔王  作者: こたつ布団
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50.ノマダス王宮

 山の稜線に日が落ちかかり、あたりは仄暗さを帯びてきた。

 英雄一行は魔王の王宮を見上げていた。優美な美しい城は夕陽を受け、赤く染まっていた。王宮の両横から滝が凄まじい音を立てて流れ落ちている。近くから見ると、アンティノキアの体躯に比例し、巨大に造られており、ただ立っているだけで圧倒されるものがあった。


 ポポロが先導を務め、王宮の門の前に立つ。門の左右に立つ衛兵が敬礼し、小さなくぐり窓を開け、城内に声をかけると、巨大な門が音もなく開き始めた。パルはごくりと唾を飲み込んだ。この奥に全ての元凶、魔王がいる。

「行くわよ」

 ポポロが背筋を伸ばし、歩き始めた。正装に身を包み、きびきびとした動作で進む、一行が後に続く。

 ここに来るまでに一行も正装に着替え、武装も解いている。イプロスは難色を示したが、あくまでも他国の王との謁見だとパルは説き、城の周りを囲む城壁内の施設で着替えを済ませた。正装はグリエラの魔道で異空間から取り出した。無機物なら、多少の荷物はそこに保管できるのだ。簡単な技ではない。どこからでも連絡できる亜空間を作るのは世界の魔道士の中でもグリエラにしかできない高度な物である。


 門の奥は中庭になっており、そのまま城内へ至る扉まで真っ直ぐ石畳の通路が伸びている。通路の両端には衛兵達が槍を手に物々しく並んでいる。いずれも爬虫類じみた英雄達の上背を遥かに越す者達だ。

 衛兵達の背後にはよく手入れされた庭園になっており、見たことのない花々が咲き乱れていた。花々はそれぞれが譲り合うことなく一つ一つが主張しあい、我こそはと咲き誇っているように見えた。一見乱雑にも見えるが、奇妙な美しさをパルは感じた。

 庭に主題があり、調和する美しさを旨とする人間の作る庭園とはまた違う、アンティノキアの性格が反映された美的感覚をパルは垣間見た気がした。

「綺麗ね、私は好きだわ」

 グリエラがにこりとして言った。

「派手でいいな。俺も好きだ」

「俺が酔っ払った時こんな感じだな。悪くない」

 イプロスとナイルズが続けた。グリエラも賛意を示したのはパルには意外であった。「不粋な庭だわ」とでも言うのかと思っていたのだ。だが周りからは天才と謳われ、ずば抜けた能力を英雄達である。その気性や感覚は意外とアンティノキアと合っているのかも知れない。


 そんなことを考えながらも、次第に圧力が増すのをパルは感じていた。城から漂ってくる魔力だ。一歩進む毎に息苦しさが増すようであった。ポポロが城の扉に立つ衛兵にたどり着き、扉が開いた。その瞬間魔力が噴き出すように漏れ出してくるのを一行は感じた。

(…こんな魔力を持つ相手と戦えるのか…)

 パルの背中を汗が伝う。イプロス達の表情も固くなっているように見えた。今まで戦ってきた魔族達とは格が違う。

 ポポロは一行達に一瞥をくれ、無言のまま歩き出し、城内に入った。一行は顔を見合わせ頷きあい、意を決して足を踏み出した。


 玄関広間は息を呑むほどの巨大さであった。ここにも居並ぶ衛兵が並んでいた。

「あの奥が謁見の間よ。陛下がお待ちです」

 ポポロが広間の奥にある大階段の上を指差した。階段を登った先に意匠を凝らした扉がある。

「あそこにノマダス王が…」

「そうよ。無礼のないように。大丈夫よ、ただの顔合わせよ」

 ポポロが微笑み、歩き出した。そのまま大階段を進み登っていく。

 当たり前だが階段の一段が高い。一行の腰あたりまである。ポポロは普通に登っていたが不意に「あ、そうか」と立ち止まり一行に大階段の端を指し示した。そこに段差の小さな階段が作られていた。

「エルロフ用に作られた階段よ。そこを進むといいわ」

 パルは心遣いに礼を言い、階段を登った。


「では行くわよ」

 謁見の間の扉の前で、ポポロは一行に声をかけ、一つ息を吐いた。

「…私も陛下に会うのは緊張するわ。私が呼んだら入ってきて」

 ポポロがゆっくりと扉を開け、中に入った。扉はすぐに閉じられる。

 実際は数秒の間だったのかもしれないが、待つ時間は長く感じた。扉が開けられ、ポポロが姿を表した。

「お通りください」

 ポポロは改まった口調で言った。

 一行は扉の前に立った。パルはごくりと唾を飲み込んだ。扉は空いており、ポポロは横に跪いて控えていた。

 謁見の間の奥には3人いる様だった。いずれも巨大でポポロよりも上背があることがわかる。それ以外は衛兵も誰もいない様だった。2人は石の階段を持つ玉座の両脇に立っており、そして中央、一行の視線の先に一際巨大な姿があった。

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