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うろつく魔王  作者: こたつ布団
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100.考え事

 カール5世の激励を受け、タミルと官僚たちは真夜中にひっそりと王都を出た。

 数日後、カール5世から、国の内外へ向けノマダス王国と和平交渉を未統治地帯で行うことが発表された。


 約30年前、ノマダスを監視するクロム砦の兵士たちが事故により砦から転落し、重傷を負った。たまたま近くを通りかかったアンティノキアの住民に助けにより一命を取り止め、そこからクロム領民たちとの細々とした交流が始まった。その交流の話が代替わりしたノマダス国王の耳に届き、次第に両国の高官たちとの交渉が図られ、和平の計画が練られた。そして和平提案のシュマルハウトの使節がノマダスに派遣され、ノマダス王はそれを受け、未統治地帯での和平交渉の実現に至った_。

 というようなおおよその筋書きであった。

 無論これはタミルと官僚たちが練り上げ、ノマダスと連絡し両国が了承した対外向けの物語だ。


 そしてそれに呼応するかのように各国にノマダスから親書が届けられた。ノマダス国境付近を監視する各国の監視砦にポポロと名乗るアンティノキアが突如飛来し親書を預けすぐに飛び去っていったのだ。各砦は上を下への大騒ぎとなり、全速力で親書は王達の元へ送られていった。

 内容はシュマルハウトの発表と同様のものだったが、それに加え、どの国とも和平の交渉につく用意があることが添えられていた。各国の首脳たちの驚きは大きかった。シュマルハウトの英雄たちが魔王を倒して以来、次の魔王が即位していたことをその親書により初めて知ったのである。


 表立って祝意や批判の声を上げる国はなかったが、カール5世はタミル代理のコーネリアから各国より真意を問う書状が殺到し、王都の間者の動きも活発になったことが報告され、ワトビアからも王宮を守る結界への接触が一気に増えたことが伝えられた。

「パウル王国の軍隊が自国の国境付近に兵を動かしていると言う情報も来ております」

 コーネリアがカール5世に報告を行った。パウル王国は未統治地帯を挟み西方に位置する国である。シュマルハウトとは最も近い位置にある。

「ふむ。警戒は当然だろうな。それ以上の目立った動きがあるかどうか分からんが、注視してくれ」

「は」

 カール5世の言葉にコーネリアが答えた。この辺りはまだ想定内である。カール5世のそばで仕えるのはまだ緊張で慣れないが、とんでもない事態が起こらないことを祈るばかりであった。



「和平交渉の場所ってそういえばアールスの出張先の近くよね」

 アンナは自室で紅茶を片手にスコーンを頬張りながらマリアナに語りかけた。

「そのようですね」

 マリアナはふと「失礼します」と姿を消すとすぐに戻り、地図をテーブルに広げた。

「あ…ありがとう」

 いつもながら手際の良さには感心する。マリアナは10年前からアンナの侍女を務めているお気に入りである。年齢はアンナより3つ上だ。

「こちらがナティアです。そしてこの辺りが交渉の場所だったと思います。この距離なら国境から半日もかからないかと」

「ふ〜ん、アールスがナティアにいるのは和平交渉と関係あるのかしら」

「それは分かりかねますが…」

 アンナの疑問にマリアナは首を捻った。アンナは考えてもキリがないので機会があれば父に尋ねようと考えた。

「和平が決まったら大きなアンティノキアの人たちもこの国へ来たりするかもしれないのね。すごいわね」

「すごいですが少し怖い気もいたします。魔物の恐ろしさは子供の頃から聞かされてきましたから…本当に大丈夫なのでしょうか」

 目を輝かせるアンナに対し、マリアナは心配そうに眉を顰めた。


 ルーポト様は優しげで穏やかな方だったから、大丈夫じゃないかな、とアンナは呑気に考えた。マリアナはルーポトの存在を知らない。ルーポトと会っていたのはアンナが一人でいたときだけである。でも…とアンナは考えを巡らせる。魔道の国と呼ばれるこの国の王宮を自由に出入りするほどの力の持ち主である。その気なら父を操ることもできそうだし、もっと言えば…想像するのは恐ろしいが王家を根絶やしにもできるはずだ。ある意味いきなり国の中枢に攻め込んで来て、王の喉元に刃を突きつけたとも言える。そんな存在から和平を求められても脅されているのと変わらないのかも、とも考えられる。

 考えたら少し恐ろしくなってきた。和平とは名ばかりの圧倒的に不平等な条約を結ばされたら…。アンナはアドレーの軽口を思い出し身震いした。アンティノキアの貴族と結婚させられたりしたらどうしよう。

 今までは勉学に打ち込むことを許されてきたが、いつの日か結婚することになるだろうとは思っている。そして愛よりも政治的な都合で相手が選ばれるであろうことは想像に難くない。王家の娘である。そのことは覚悟している。しかしアンティノキアはあんまりだと思う。何倍も大きな身長、角や尻尾、翼の生えたトカゲみたいな相手だったら…たとえ良い人であってもどうしよう。


「アンナ様?」

「!なあに、何でもないわよ。考え事をしてただけ」

 急に黙り込んだアンナをマリアナが心配そうにみていた。

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