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16 初期化


「勇者様どこへ!?」


「ちょっと女の子を一人助けてくる! 細かいことは後で!」



 城を出たところでユーリは驚愕する。



「うははははははは!! ついに来たぞ! 帝国の役人どもを恐怖させるこの日が!」



 宙に浮くゴウが凄まじい威圧感を纏い豪快に笑いあげる。


 帝国に火の矢が降り注ぎ、地形もめちゃくちゃだ。



「最初からこうしていればよかったわ。世界は私たちのものよ!」



 腐っても元勇者パーティー。その戦闘力は瞬く間に街を蹂躙する。



「そろそろいいか。お前ら……死ね」


「へ?」



 ゴウが冷たく発した言葉は仲間に向けられたものだった。



「ここまでお前らの力を見てわかった。俺一人で十分やれる。――――世界は俺だけのものだ」


「バカいってんじゃないわよ! 裏切るつもりなら容赦しないわよ!」



 とんがり帽子の合図でフードの男と筋肉ダルマが飛びかかる。


 巨大な火の矢が、せり上がった大地が、ゴウを潰した。



「土壇場で裏切るってどんだけバカなの? これからどうしよ」


「どうするもない。お前らは死ね」



 傷一つない身体から黒い矢が放たれる。


 不可避の速度で放たれた矢は、とんがり帽子たちを貫き、全身が黒く染めあげ、塵と化し霧散した。



「だはははははは! ゴミ! ゴミ! ゴミ!」



 もはや理性を失いかけている。


 それもそうだろう、ラルカから力を吸い上げるということは、悪意に呑まれる危険性を孕んでいる。




 愚かな父親を見つめるユーリの視線は冷たかった。



「やりすぎだ」



 街が蹂躙されるなか一人悪意の塊へ近づいていくユーリ。



「おぉ、ユーリィ。俺は最強になったぞ。もう何にも怯えることはないんだ! うはははは!」



 宙に浮かんでいたゴウは、地上へ降り立ち笑って見せる。


 鎖に繋がれたまま無造作に地面へ落下したラルカは意識を取り戻す。



「やっぱり……来てくれた」


「ごめんよラルカ。遅くなった」



「俺を無視するなぁぁあああ!!!!」



「まずはアンタからラルカを取り戻す」


「うはははは! お前に何ができる? 『与えるもの』だったか? 俺に何をくれるんだ?」



 嘲笑するゴウを一瞥したユーリは、懐から取り出し口へと運んだ。


 宝物庫から持ち出した宝を。


 一玉のリンゴを。



――――――――――――――――――――


『青い果実』

 【効 果】

 食すことで自身のスキル効果を反転する。効果時間は消化されるまでの間。


 【持出者】 7代目勇者ユーリ


――――――――――――――――――――



「何を悠長に食ってやがる!」


「今、助ける」



 武器を持たないユーリは散歩するようにゴウへ近づく。


 ユーリを侮るゴウは決して逃げない。


 そして触れる。




 ――――『奪うもの』




 ユーリの手が黒く染まると同時にゴウの右腕から鎖が外れた。



「なにぃ?」


「少し離れよう」



 そういってユーリから放たれた拳はゴウを容易に吹き飛ばした。



「ぐっ、なんだ、このパワーは!?」


「アンタから奪った」


「く、くそがぁぁあああ!!!!」



 とても人間のものとは思えないスピードでユーリへ迫るゴウ。


 ユーリは逃げない。



「バカが! 俺のスキルを忘れたか!?」



 『絶対両断』


 剣で切りつけたものを必ず両断する。


 ユーリを除けば歴代勇者のなかで最もしょっぱい能力。


 しかし、確殺のスキル、弱いハズがない。



「バカはアンタだ」



 ゴウの剣はユーリに触れると同時に砕けた。


 ユーリに奪われたのだ。一切の硬度を。


 切りつける前に崩壊したのだ。



「そ、そんな! バカな!」


「これで終わりにしよう」



 そっとゴウの胸へ手をあてがうユーリ。



「頼む! 許してくれ! 勇者なんだろ? 助けてくれよぉ」



 身体中から汗を吹き出し懇願する。



「あ、あいつだ。あのクソガキ、いや魔王が俺に無理やり変な力を植えつけたんだ」



 そういってラルカを差した指はへし折られた。



「ぎゃあぁあああ!!!! い、いたぃいい!!」


「もういいよ。――――さよなら。父さん」



 闇を孕んだてが黒く光り、ゴウの全身を包み込む。


 同時にラルカから奪った力――――悪意を吸い上げる。




「がっ! なんだ、コレ」




 おぞましいほどの憎しみ、殺意、欲望。


 負の感情が、世界の悪意がユーリへ流れ込む。



「ずっとこれに耐えていたのか」



 ユーリは小さい少女ラルカの強さを知る。



「だめな勇者だなぁ。なんにも気付けなかった」



 ラルカのいた場所へ視線を向けるユーリ。


 ラルカはユーリの元へたどり着いていた。



「へんなの。ユーは、勇者だよ。やっぱり助けに来てくれた」


「やめるんだ」


「ユーに悪意は似合わないよ」



 純白に輝くダリアの花が白さを失っていく。


 悪意を吸い上げ貯蔵する。



「わっちね。『記憶は器』の力で思い出したんだ」



 ゴウは面白半分でラルカの記憶を戻していた。


 ラルカは真実を知った。いや、思い出した。



「わっちは初代勇者のゴーレム。悪意を吸い上げて世界を守るために作られたの」


「もういい、もういいから」


「悪意に呑まれる前に、悪意ごと自分を初期化するハズだったんだけど、怖くてできなかったの」



 そして、暴走。



「でも二回目からはちゃんと、初期化したよ。偉いでしょ」



 いつものように胸を張るラルカ。


 ダリアの花が真っ黒になった時、悪意の吸収は終わった。


 ユーリは同じ感覚を知っている。


 ダグラスの悪意に呑まれそうになったときだ。


 サッとユーリからラルカは離れる。



「ユー」



 ひどく寂しそうに一度目を伏せ、ユーリを見つなおすラルカ。


 精一杯の笑顔を作り別れの言葉を紡いだ。



「楽しかったよ。さようなら」


「まっ」




 ――――――『初期化』




 伸ばされた手は届くことなく、小さい少女の意識は悪意とともに消えてしまった。



次回、最終話になります。


最後の応援よろしくお願いします!

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