15 真実のピース
目まぐるしい行程を終え。一息つくユーリは城の一室で項垂れていた。
「ごめん……ごめん、ラルカ」
別れ際に見た責めるようなラルカの視線がユーリの頭から離れない。
「こうするしか、なかったんだ」
ユーリは自分に言い聞かせるように頭を抱えつぶやく。
ユーリは夢を手に入れ、失った。
尊厳と友を。
会うことはおろか近づくことすら許されていない。
ユーリが項垂れている今も、ゴウはラルカから力を奪い続けている。
「七代目勇者様! 宝物庫の準備ができました!」
部屋の外から声がかかる。
ユーリはため息をひとつつくと重い腰をあげ宝物庫へむかった。
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パレードの一ヶ月ほど前。
「いつになったら実行するつもり?」
眉をひそめたとんがり帽子が不満を唱える。
ゴウは自室のソファから起き上がり口を開く。
「そうだな、一時金も受け取った。しばらく分の食料も確保した」
押し黙るパーティーはゴウの一声を待つ。
期待感にゴウの仲間の毛が逆立つ。
「始めようか帝国崩しを!!」
「よく言ったわ! まずは首都を叩きましょう!」
「バカが、それじゃあすぐ終わっちまうだろ? 端っこの村から全部俺のものにする。税を取り立てるしか能のない帝国の連中を震え上がらせてやるんだ」
「バカはあんたよ。帝国を舐めてると痛い目見るわよ?」
「そのために暗殺させてるだろ?」
ラルカを手に入れたあとゴウは仲間たちに暗殺を命じた。
帝国軍の指揮官や隊長クラスを夜な夜な複数人で囲って始末する。簡単な仕事だ。
「それでもよ。数は力よ?」
「そこは俺に任せておけ」
親指を自身に向けた右手からのびる鎖の先に虚ろな目をした少女。
風呂にも入れず身体中がすす汚れ異臭を放っている。
「クソガキ。お前の力をたっぷり使ってやるからな!」
ラルカの口は一文字に閉じたままだ。
「返事くらいしたらどうなんだ!」
不満をのせた拳がラルカの頭を強打した。
「どのみちお前は永遠に飼われ続けるだけなんだ。従順になった方が身のためだぞ」
ゴウの一言で固く閉ざされた一文字が開いた。
「ユーは本物の勇者なんだ。困ってる人を助けるんだ。だから絶対に助けにきてくれるの」
再び頭を強打された鈍い音が部屋に響いた。
▽
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「お好きなものを一つだけお持ち帰りいただけます」
「手に取ってみてもいいの?」
「結構です。また既に持ち出されたものはこちらの管理簿に詳細が記載されています」
「ありがとう」
宝物庫で分厚い本を受け取り即座に開く。
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『略奪の約束』
【効 果】
放出側に繋がれたものから吸収側に繋がれたものへ、力を移行することができる。
【持出者】 二代目勇者タルザリス
『記憶の器』
【効 果】
器から湧く液体を飲むことで自他問わず過去の記憶をみることが可能。
※液体の種類は使用者の好物となる
【持出者】 六代目勇者ゴウ
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「くそっ、本物か」
ゴウに見せられた記憶が真実であることに悪態をつく。
「適当に選んで帰ろう。あ」
相当まいっていたのだろう初代勇者が選んだ物を見ていないことに気づくユーリ。
「えっと」
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『悪の華』
【効 果】
悪意を華に貯蔵する。貯蔵量に応じて華が黒く染まる。貯蔵量が限界に達すると悪意に呑まれるため注意が必要。
【持出者】 初代勇者サイト
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言葉がでないユーリ。
それもそうだ。
ユーリはこの宝を目にしたことがある。
ラルカと出会った日。美しさに目を奪われた。
ラルカの髪飾りと全く同じ形状。
ダリアの花。
「なんで……ラルカが」
ふと目についた最悪の一文。
『貯蔵量が限界に達すると悪意に呑まれるため注意が必要』
「まさか俺が見た記憶は、魔王でもなんでもない」
悪意に呑まれたラルカ。世界の悪意を一身に受け続けたラルカ。
それを鎖の力で押さえ込んだ二代目。
ピースが繋がる。
ユーリがダグラスの憎しみから逃れられたのも詰まるところ華の力。
しかし、疑問が一つ残ったままだ。
途端。激しい音と共に扉が開いた。
「ユーリさん! ラルカさんが!」
「一号、どうして」
「そんなことはどうでもいいです!」
「この野郎止まれ!」
複数人の衛兵に取り押さえられながらも一号は話すことをやめない。
「六代目勇者がラルカさんを使って暴れています! ラルカさんは僕と同じ――――!」
「し、失礼しました。ごゆっくり」
一号は引きずられていってしまった。
最後のピースを残して。
勇者のゴーレムである一号が発した「僕と同じ」
「ごめん、ラルカ。今助ける」
ユーリは宝を一つ手にして宝物庫を飛び出した。
忌憚ないご評価をお願いします!




