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12 生きる意味


 ゴウの捨て台詞から三日後。

 装備を整えたユーリたちは、馬車を乗り継ぎたどり着いた。



「ここが『いにしえの魔窟』か」



 ボーッと魔窟の入口を眺めるラルカ。



「どうした?」


「なんだかとっても……ううん、行こ!」



 ダグラスいわく「何の意味もなく魔窟を作るハズがない、魔王関連の何かがあってもおかしくねぇ」とのことだ。



 魔窟は初代勇者が作ったと伝承され『新・勇者冒険譚』にも記されていた。

 しかし、何のために作ったかは分かっていない。


 他のダンジョンとは違い中は快適な環境が維持されている。

 適正な温度と湿度、地面には凸凹なく、狭い通路もない。

 そしてなにより明るいのだ、壁自身が発光し魔窟を照らしている。



「とても魔王うんぬんが関係しているようには思えないよな?」



 問いかけに対して無反応のラルカは、またボーッとしている。



「本当に大丈夫か?」


「う、うん! あ! ゴブリン来たよ!」



 苦もなくゴブリンを片付ける二人。

 更に魔窟の奥へと歩を進め、一時間が経過するころ。



「……似てる」



 不意にポツリとラルカがこぼす。



「似てる?」


「この魔窟ね、わっちが居たダンジョンに似てるの」



 ユーリは記憶している魔窟の地図と西のダンジョンの地図を比べる。



「確かに、似てるな。それどころか完全に一致している」



 小部屋の大きさ、通路の長さ、階段の配置。


 偶然とは言えないほどの酷似に何らかの因果関係を感じざるを得ない。



「ってことは、裏エリアも」



 西のダンジョンにあった通常踏み入れることが出来ないエリア。


 ラルカが繋がれていたエリア。


 オルトロスがいたエリア。



「試してみるか」


「まっかせてよ!」




 ダグラスからもらった大槌を振り上げる。


 ユーリは気付く、裏エリアにいた怪物を。



「ラルカ待っ――――」



 粉塵を巻き上げ魔窟の壁は粉砕された。


 ガラガラと瓦礫が崩れ落ちるその奥で四つの眼光がラルカを狙う。




「オルトロスだ!!!!」



 叫ぶラルカの喉を巨大な爪が襲う。


 衝撃で飛ばされるラルカは身をひるがえし反撃の体制をとる。



「へへーん! 効かないよっ!」



 跳躍。


 大槌がオルトロスの顔面めがけて振り下ろされる。


 しかし、後ろに下がり躱すオルトロス。


 大槌は空を切ると思われたその時。



「もう一回跳べ!」



 足元に現れた障害物を叩きつける反動でラルカは空中で加速する。



「くっらぇぇええええ!」



 空中で再度放たれた大槌の一撃は、オルトロスを完全にとらえる。



「なっ!」



 次の瞬間にはオルトロスの顔面は形を失っていた。


 B級を一撃で破壊したのだ。


 異常なほどの威力。



「ふぅ。オルトロス弱くなったね!」


「いや、ラルカが強くなってるんだよ。武器の性能もあるけど常軌を逸してる」



 A級、いや魔王にすら届く力だと感動する一方で、ユーリは己の力のなさに肩を落とす。



「ユーがサポートしてくれるから、わっちは飛べるんだよ!」


「そっか、ありがとう」



 礼を言うユーリの顔に笑顔はなかった。



「先に進もうか」



 西のダンジョンにもあった泉で身体を癒し、ラルカがいた大部屋へとたどり着く。



「誰かいるよ?」



 視線の先には片腕の無い少年が佇んでいた。



「あ、お客様ですか?」



 小綺麗な青髪碧眼の少年がユーリたちに駆け寄る。



「もし、よろしければ。――――僕を殺してください」



 予想外の要望に固まってしまうユーリだったが、ラルカは興味津々といった面持ちだ。



「なんで殺されたいの? て言うかあなたは誰?」


「あっ、申し遅れました。一号と申します」



 一号と名乗った少年は青い頭を深々と下げる。



「変な名前だね! わっちはラルカ! 固まってるのがユーだよ!」


「ラルカさんとユーさんですね。よろしくお願いします」



 やけに丁寧に話す一号に対して、やっとユーリがやっと口を開く。



「いやいや、突っ込みどころが多すぎるよ。一号って人間の名前じゃない」


「失礼しました。僕は人間ではありません」



 一号は上着を脱ぎ捨て背中をユーリに向ける。


 そこには小さく『サイト作』と文字が刻まれていた。




「勇者サイト様によって作られた――――ゴーレムです」




「初代勇者のゴーレムなのか」



 勇者にサイトと言う名前は一人しかいない。



「すごーい! 本物の人間そっくり!」


「サイト様は天才ですから、これくらいちょちょいのちょいですよ!」



 一号は腰に手をあて鼻息あらくドヤ顔をする。



「僕の家もサイト様がお作りになったのです」


「家ってまさか」


「ここです!」



 いにしえの魔窟は一号の家だった。



「勝手に入ってごめんなさい。ほらラルカも」


「ごめんなさい!」


「お気になさらず。家主のサイト様はもういないので」



 乾いた笑いと同時に一号はうつ向いてしまう。



「それが死にたい理由なの?」



 ラルカが不躾に問う。



「いいえ、僕はサイト様の作品です。家も服も、そして命さえもサイト様からいただきました」



 そっと胸に手をあてる一号。



「僕は何もしていないのです。左腕を失い、更に何もできなくなり、今はただ生きているだけ。サイト様の作品と知れわたる前に存在を無かったことにしたいのです」



 顔を上げ、力無く笑顔をつくる。



「百二十年はあまりにも長すぎました」



 死にたい理由。


 ユーリは少し共感してしまう。


 ゴウに浴びせられた言葉を思い出す。



『誰が服を与えた? 誰が飯を与えた? 誰がベッドを与えた? ――――全て俺だ。お前はずっと俺に生かされていた。俺の金で!』


『お前は俺に従う義務がある』




「ただ生きていることは悪いことなのか?」



 ユーリは自身に問いかけるように一号へ問う。



「みんな誰かに支えられて生きている。生きていれば誰かを支えることもあるだろう。生きているだけで喜ぶ人もいるだろう」



 ユーリは『自分にはいないけど』と心の中で唱え、続ける。



「勇者サイトはそういう人だろ?」



 ひとすじの涙が一号の頬をつたう。





『はじめまして、僕はサイト』


『君の名前は……ごめん、考えてなかった。一号でもいい?』


『生まれてくれてありがとう。君のお陰で自信がついたよ』


『勇者に選ばれた! 一号のおかげだ!』


『腕をやられたのかい? ごめんね、僕には修復してやる力が無いんだ』


『僕はもう長くないようだ』


『一号、思い出をありがとう』





「…………そうでした、サイト様は僕が生まれただけで喜んでくださいました」



 涙を拭う一号。



「しかし、腕の無いゴーレムを作っただなんて汚名を着せるわけには」


「これならどうだ」



 ユーリは一号に触れ発動する。





 ――――『与えるもの』





「う、腕が!」


「どうだ、これなら言い訳できないだろ。だから俺は君を殺さないよ」



 左腕を失ったユーリは微笑み、一号を抱き締める。



「生きるんだ。勇者サイトのためにも」



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