西海道線爆破事件
轟音が響く。
走っていた列車が、段々といきなり横倒しになり、大きな音が響いた。近くに住んでいた人々が次々とやってきて、絶句と静止、そして沈黙した後やがて負傷者や遺体を運び始める。
車両のどこからか火が出、ぱちぱちと燃え出した。
PR関東の職員、警察、消防が次々とやってくる。消防隊員による負傷者の運び出しや、消火などが行われる。自分で動ける後部車両の人々は、車外へ避難していく。死者238人、負傷者1023人、行方不明者46人。
後に、「西海道線爆破事件」と呼ばれるようになる、日本史上最悪の列車爆破事件の発生であった。そして、犯人が分かった時、人々はみな驚愕した。
犯人はー近隣の、小学3年生の児童だった…
「こらっ、待ちなさい!」
ママの声が後ろから聞こえてくる。もう、嫌だ。この世の中が嫌だ。何もかもが嫌だ。すべて消えてほしい。学校では、ぼくはばい菌扱いされる。先生にも、クラスメイトにも。授業のプリントもぼくだけもらえない。嫌で嫌で逃げて家に帰っても、怒られる、怒られる。学校に行けと言われる。ぼくは何とかママの目をくらますと、路地に入った。白衣を着て、サングラスをかけたおじさんがいる。
「ねえねえ、そこの坊や。ちょっとこっちへ来てくれないかい?」
いわれて行ってみる。
「坊や、世界を滅ぼしたいって思わない?」
こっくりうなずく。
「じゃあさ、これ、あげる。消したいって思ったもののところにおいておいで。明日の8時にこれは爆発するから。」
そう言い、おじさんはぼくに二つの袋を渡した。ぼくはそれを受け取り、考える。どこに置こうか。一つはもう決めた。学校の、自分の教室だ。もう一つ。決めた。あの、先生とも呼びたくないババアの乗ってくる電車、西海道線に置いておこう。とりあえず、学校へは今置きに行き、電車の方は明日の朝置くことにした。そういったことを考えているうちに、忌々しい学校へ着いた。自分のロッカーへ入れておく。これでいいだろう。早々に立ち去り、河原で時間をつぶすことにした。
翌朝。ぼくは、いつもと同じ時間に家を出る。僕の通学路には踏切がある。
そこに、ぼくは爆弾を置いて、学校に行った。
かなりのクラスメイトが既に来ている。
「よお、ばい菌!お前、よく学校これるな!」
僕は彼を無視して、自分の席に向かった。
“バカ”とか、“死ね”とか“ゴミ”とかたくさんの落書きがあった。
最近はもう、何とも思わなくなった。
あと数分で8時。
8時になったら、あれが爆発して、ここが消える。
なんて素晴らしいことなんだろう。
僕は普段通りを装いつつその時を待った。
8時。
遠くの方から、とても大きな爆発音が聞こえてきた。
「え、今の音、何!?」
「怖い…」
「キャー!!」
「え、なんかあそこモクモクしてる!」
クラスメイトが大混乱に陥る中、ぼくは違うことで混乱していた。
爆発が起きない。踏切の方は爆発したみたいだけど、クラスに仕掛けた方が爆発しないことにぼくは混乱していた。
なんで、爆発しないんだろうか。
その時、一人の先生が教室に飛び込んできて、怒鳴る。
「全員、着席!」
みんな席に着いた。
それを見て、その先生は話始める。
さっきの爆発音は何者かによって電車が爆破されたものだということ。
それによって亡くなった人はかなりいる可能性が高く、怪我をしている人も大勢いること。
そして、今日はもう保護者の迎えが到着次第の下校になることが伝えられた。
家に帰って、ぼくはママが見ているニュースをこっそり見ていた。
僕が思っていたよりも大ごとになっていることにゾッとする。
ここまでするつもりはなかったのに。
でも、その一方で少し清々していた。
数日たっても、テレビは爆破の話ばかりだった。
100人以上が亡くなったこと。
犯人はまだ捕まっていないこと。
ぼくは怯えていた。
ぼくが起こした、事件の大きさに。
ぼくの行動が、バレることに。
そして、その時はついに来てしまう。
朝、ぼくが学校に行こうとした時、“ピンポーン”と、家のインターホンのベルが鳴った。
ママが出る。
「はーい…」
「朝早くにすみません。警察です」
「け、け、警察ですか!?な、何かありましたか?」
「…息子さんに話があります」
「は、はい…」
ママはそこでインターホンを切る。
「…あんた、なにしたのよ」
それだけを低い声で言って、ママは玄関に向かう。
ママがドアを開けると、そこには険しい表情をした警察が二人立っていた。
そのうちの片方がぼくに言う。
「…君、ちょっと署まで来てくれるかな。」
ぼくはおとなしくパトカーに乗り込んだ。
「では、夕方までには帰しますので」
警察がママにそう言い、パトカーは動き出した。
その日は地獄だった。
色々なことを聞かれた。
あの日の行動とか、あの事件について知っていることはないか、とか。
でも、ぼくは全部知らないと答えた。
ぼくが爆弾の入っている袋を投げている動画も見せられたけど、ぼくじゃないと言った。
そうやってやり過ごしていたら、その日は家に帰ることになった。
家に帰ってからはママに色々と聞かれた。
「なんか、同じクラスの子が関係しているかもしれなくて、それについて聞かれた」
と、嘘を答えた。
ぼくは薄々と察していた。
このまま“知らない”を続けることはできない、と。そして、多分、バレたらもっと大変なことになるな、と。
僕は勉強するふりをして、新しい計画を立てる。
翌日。
ぼくは、ママが起きるよりも早く家を出て、途中でマッチを三箱仕入れた。
そのまま学校の近くに隠れて、校門が開くのを待つ。
かなりの人数が登校したであろう時間に、ぼくは学校に入った。
そのまま自分の教室まで行く。
一つ、深呼吸をする。
ぼくはマッチで火を起こして、クラスのみんなの方に投げる。何本も、何本も。
悲鳴や怒号がいくつも聞こえてくる。
知らない。もう何も知らない。
建物はぱちぱちと音を立てて燃えていく。
何もかも、なくなっちゃえばいいんだ。この世の全ても、みんな消えちゃえばいいんだ。
火が周りに来る。
熱いよ。
とても熱いよ。
痛い、熱い、痛い、熱い、熱い、苦しいよ―。
これは、大げさに書いたものです。
ですが、いじめというのはここまで人を追い詰めるものです。
それは、変わらない。
いじめは人を歪めます。しかし、それはいろいろなところに存在する。やるせない思いを、物語にして綴りました。
また、この小説を読んで、何か思うことがあった人は、星5の評価をしていただければ幸いです。




