フラグを建ててから思い出す
また性懲りもなく書いてしまった。
最低、月イチで更新します。
「イツキ、悪いがあなたにはパーティーを抜けてもらう」
リーダーのあまりにも突然すぎる言葉に驚き、声も出なかった。
呆然としながら他のメンバーを見るも誰もが無言で反対しない。
「___お、俺たちは仲間じゃなかったのかよ。いきなりなんで」
絞り出した言葉は最後まで出てくることはなく、息が洩れるだけだった。
「あなたは自分勝手過ぎる上、協調性がない。今までの戦闘ですらしっかり協力できていなかった。そんな者に背中を預けられるわけがない」
伝えられた理由に思わず歯を食いしばる。
たしかに端から見れば俺はあまり協力できなかったかもしれない。でも、それは俺のスキルが人に見せられないものだったからだし、戦闘以外の旅の手助けもしてきた。それに仲間だから、信頼してもらっていると思ってたんだ。それが嘘だったこと、信じてもらえなかったことを知ってしまった。
努力は無駄だったのだ。
空間を沈黙が支配する。
行き場のない感情は体の中を暴れまわり、しだいに「怒り」という明確な理由を作り上げた。
しかし、ここで噴火させるわけにはいかないと、ぐっと飲み込んで一言だけ言った。
「そうか。じゃあな」
これ以上ここにいたら自分は何をするかわからなかった。だからすぐに背を向けて部屋を出ていく。
自分にも責任がある分、暴れるわけにもいかなかったからだ。
扉を締める瞬間に見た彼はこちらに目を向けてすおらず、そういえば彼と目があったことすらなかったなと最後になって思い出していた。
___________________
_______________
________
____
とある一室、ベッドに腰をかけた男が一人頭を抱え、全身を使ってこれでもかというほど大げさにため息を吐いた。さきほど冷静に言葉を紡いでいた面影はどこにもない。
部屋を照らす暖かな光にさらされ、やけに陰鬱な表情が強調されていた。
「ああ、どうしよう」
男は時折そうつぶやいてはため息を付くことを繰り返していた。彼がここまで絶望を顕にしているのには理由があった。それは遡ること数時間ほど前のこと。
彼はとある使命を背負ったチームのリーダーであった。
彼はそれは人一倍責任感が強く、また役目には似合わないほどビビりであった。
さて、そんな中、使命を遂行するにあたって最大の敵はなんだろうか。強大な敵か、困難な試練か、それとも権力の壁だろうか。違う、最大の敵は味方の中にいる。味方のフリをした敵が一番恐ろしく、手強いのであると彼は考えていた。だから、彼は我慢できなかった。常々怪しいと感じていたパーティーの一人を相談もなくやめさせてしまったのだ。
やけに周りの誰も反対しないし、言われた方も最初は言い返していたもののあっさりと辞めたものだから何か変だとは感じていた。怪しく、信じ切ることのできなかった彼であるがそれでも仲間だったということもあり、罪悪感がなかったわけではない。けれども、これでようやく安心して旅ができると考えていた彼は緊張のせいか部屋に戻るとすぐに寝てしまったのだった。
が、目を覚ましてから気づいた。否、気付かされてしまった。
己はとんでもないことをやらかした後だったと。そう、彼は立派にフラグを建ててしまったのだ。
最後にちらっと視界にはいったこちらを睨みつける表情が忘れられない。
何故、起きただけで気づくことが出来たのだろうか。
それにはこんな事情があった。今までびみょうに濁して来たことだが彼は世界を救うという崇高なる使命を背負っている。が、そのために彼は使命を果たせなくなるような失敗をつい先程してしまったのだ。いわゆるフラグである。これには困った。主に神様が。それに神様は人には理解しきれない存在だ。いい迷惑である。だからこれはきっとしかたなかったのだ。余計なことだったとしても。直接手を出すことの出来ない神様の対処法がたとえ前世の記憶を思い出させて意識改善を図るというものだったとしても。もう一度言おう。仕方のないことだったのだ。
だから彼は思い出した。何かの怪我でも決定的な出来事でもなく、痛みとともに思い出したわけでもない。
神様らしきものから「前世の記憶を使って俺強えええでもやるがよい」的なありがた迷惑な言葉で思い出したのだ。本当にいい迷惑である。やつは神は神でも邪神に違いない。もしくは遊び心がたっぷりだから日本のサブカルチャーを司る神だろう。
さて、思い出したはいいがフラグを建ててしまったことに変わりはない。前世を思い出しても性格の変動も無い。どちらかと言えば共感、覚えの有る知識が増えた程度だろう。これで強ええができたら苦労しない。
契約のせいで世界を救わなくてはならないし、
残ったパーティーメンバーは女子しかいないし、
というか思い出したから今ならわかる。あいつ絶対に日本から来ただろ。召喚されたタイプだろ。知ってて当然の常識は無いくせに計算だけは早かった。そういえば文字は違うのに読めていたのだろうか。いや、待て。そんなことはどうでもいいい。今問題なのはいかにしてこのフラグを打ち破るかだ。
そう、「パーティーから追放されたけど実は最強でした〜から始まる勇者ざまぁを添えて〜」というフラグを。
しっかりは見ていなかったがあれは絶対恨んでいる。復讐されるかもしれない。というかその確率が高い。
オレにフラグなんて折れるか?
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次話も読んでくれると嬉しいです。