第76話 行商人との面会
「ハァ、、、ハァ、、、ッ、、まさか殆ど眠れないとは思わなかったな…」
今俺はギルドの近くにあった宿の部屋で寝て、朝になったので起きたところだった
(夜から朝までどんちゃん騒ぎってどうなってるんだ…)
ギルドは一律朝7時〜朝の2時までになっており、5時間の間に職員の交代や新たなクエストの更新作業等をやるらしいのだが、夜に騒いでいた奴らが閉まるギリギリまで騒いでいたせいでロクに寝れなかったのであった…
「えーと、、今は5時か、、、眠たいな…」
そんなことを言いつつ着替えて宿を出る
ガチャッ、、ギィィ〜
(まだ空が薄暗いな、、それに夜の騒ぎが嘘みたいに静かだ…)
おそらく皆寝ているのであろうか、外には誰一人としておらず、ただ静かな街並みが目の前に広がっていた
(さてと、集合地点は、、、南門だったな…)
そうして俺は南門に向かい、そこで待機中の馬車に向かう
(あれ?行商というから複数の馬車があるかと思ったが意外と少ないんだな…)
目の前にはたった1両の馬車だけが見えるだけであった
「あっ!こっちですよー!」
(・・・えっ?、、、うーーん、ありゃどう見ても、、子供、、だな…)
俺が馬車に近づくとおそらく出発の準備をしていたのだろうか、馬車の奥からどう見ても男の子が荷台から降りてこっちに手を振ってくる
「えーと、、君が、俺の依頼主で合ってる、、、のか?」
「そうだよ!いや〜正直誰からも受けてもらえないかと思ってたんだ!ちょっと賃金が少ないからね…」
「あれ?そうだったか?」
「え?まさか見ずに受けたの?そのやり方はあまりオススメ出来ないよ〜」
そう言われて俺は荷物からクエスト表を取り出して賃金の欄を見る
「あぁ確かに、他のクエストよりも低いな」
「でしょ?それに僕まだ子供だから、、受けてもらっても「勘違いした」って言って逃げちゃう人もいたんだ…」
「そりゃまた酷いもんだな、それで君は何か重要な事でもやってるのか?子供に行商させるなんて正気とは思えんが…」
「親は代々行商人をしてきてね、それで僕も将来行商人になるだろうから子供の内に経験させておくって言ってるんだ…」
「なるほど、だいぶスパルタだな」
「でも僕も将来行商人になって困っている人に物資を届けたりしたいから嫌だとも言えないんだ…」
(あぁ、断れないありがちなパターンだな、将来の為とか言って辛さを我慢するやつだな)
「・・おっと、もう時間だ」
そう言ってその子供は馬にまたがって馬車を進ませようとする
「よ〜し、良い子だ、、さぁ乗って!出発するよ!」
そう言われて俺は荷物で狭い荷台に乗る
「ちょっと窮屈だと思うけど我慢してね」
「あぁ、ちょっと質問なんだが、これまで行商に行ったか同行した経験は?」
「うん、多少は両親と行ったことがあるよ」
(なら心配は無さそうか…)
そうして出発した馬車は検問を通過して王城に向かう道に入っていく
「大丈夫?だいぶ揺れるけど…」
「心配ない、それよりも前を見ていろ」
「ああっ、ごめんなさい…」
そんな会話もありつつ、馬車は王城方面に向かって進んでいく
「そういえばお兄さんは王城に行ったことあるの?」
「あるな、そこまで大した思い出はないが…」
「本当?僕が行ったときは高い建物ばっかりで興奮したんだけどなぁ…」
「そうか、それよりこの荷物は何だ?」
「それ?それはあそこで取れた穀物だったりだよ」
「ふーん、なかなか目の付け所が良いな」
戦争中の今は食料の価値は高騰しており、兵糧ともなる穀物等は価値は何倍にも跳ね上がるものだった、おそらくあそこの畑仕事等の賃金が良かったのはそれもあるだろう
「交渉には苦労したよ〜」
「そうか、、、そういえば名前聞いてなかったな」
「あっ、そうだった!、僕はマナカ、タカマナサ・マナカだよこれからよろしくね!、、、えーと…」
「祐也、白石祐也だ、あだ名は適当につけてくれ」
「じゃあお兄さんで良いや、その方が手っ取り早い、これから少しの間よろしくね!お兄さん!」
(まぁ、そういうのも良いか…)
こうして俺は子供の行商人であるマナカと行動を共にするのであった…




