第71話 懐かし
ザクッ、ザクッ、ザクッ… 俺は今、人類と魔王軍が戦闘している隙をついて側面から人類側まで抜け、俺を知っているであろう人がいる場所まで歩いていたのだった
(・・えーと、今は大体一度目の反抗作戦で奪還した街近辺かな…)
そうしてしばらく進み、平原を歩いていると…
「ん?、、、、アレは、、城壁か…?」
双眼鏡でも城壁だということを確認して、歩き始めると無意識の内に歩くペースが早くなってくる
(やっと、、辿り着いたか…)
そうして歩き続けると肉眼でもはっきりと城壁が見える
「・・間違いない、ヴィンカース街だ…」
奪還してから見張り員などが到着したのか、城壁の上には少数ではあるが、人の姿が見えた
(一年も経たないのにひどく懐かしく感じるな…)
だがここには俺が探している人はいないので見張り員に見つからないようにしつつ迂回してさらに先に進んでいく
「・・あぁ、ここはちょっとした丘になってたっけ…」
長らく歩いて足はもう疲弊しているが、そんなことはもう気にせずただ丘の斜面を歩いていく
「ハァ、、ハァ、、もう、、ちょっと…」
そうして俺はとうとう丘の上にまで到達する
「おっ、、と、コレは…」
そうして俺は目の前にある懐かしい物を見る
(忘れもしない、、コレは俺が初めてタートル型と対峙したときに青銅の槍でタートル型の両手両足を串刺しにしたときの跡だな…)
そして勿論タートル型が発射した弾丸が着弾した跡も残されていた
「ここで一回吹き飛ばされたんだったな、、幸い味方が来てくれて助かったが…」
あの時味方が来てくれなかったと思うとゾッとするが、そんなことを考えている場合ではなく、さっさと目的地に近づいていく
「よし、、ようやく辿り着いたぞ、、アルヴェント砦…!」
眼科から見下ろすその砦には最後に見た姿と何も変わっておらず、まだタートル型に狙撃された城壁もまだ70%程しか修復出来ていないようだった
「ここにはイリアさんが居るはず、、あの人なら…」
そうして俺は丘を降りて、砦に向かう
ズズズッ…!「うわっ、、とと、小石で滑るなここ…」
足の疲れで足元がおぼつかず、何度も何度も転びそうになっては体制を立て直す、、それを延々と繰り返していた…
〜3時間後〜
「ハァッ、、ハァッ、、まさか登るより下るほうがキツいとは思っても見なかったな…」
なんとか丘を下れた俺だったが、流石に時間がかかり過ぎて太陽がもうすでに丘で遮られて見えなくぐらいにまで落ちていた
(夜か、、逆に夜なら侵入も楽そうだな、、だがその前にまずは休憩だな、、疲れた……)
〜5時間後〜
5時間も経てばもう体力も回復し、疲れも完全にではないがある程度は感じなくなっていた
「よし、、じゃあ侵入作戦開始だ…」
侵入の為持っていく装備は最低限にして、アルヴェント砦に近づいていく
(・・普通の世界なら気配察知とかの能力が無くて良かったんだが、魔法が当たり前にあるこの世界だとそうはいかんな…)
そう言いつつもなんとか城壁まで取り付く事に成功し、ひとまずそこで様子を見る
(「探索者」発動!、頼むから誰もいないでくれよ…)
そうして俺は「探索者」を使いながら見張り等の位置を把握し、視界に入らない場所を探す
(よし、、ここなら見られることは無いだろう、、あとは音だな…)
「探索者」を発動している今は「結界士」を発動させることはできず、音だけは注意を払わないといけなかった
(3、、2、、1、、今!)
パスッ! カチッ! ピシャア!
ロープ弾を城壁の上に撃ち、何処かに引っ掛けて城壁の壁を登っていく
「うっ、、コレ外れたらお終いだな…」
コツッ、、、コツッ…
そうして登り続けるとなんとか俺は城壁を登り切る
(まずは第一段階は成功、、問題はまだあるが…)
今度も俺はロープ弾を今度は反対側の壁に撃ち、城壁の内側までロープを逆に伝って降りていく
ブゥゥゥゥーン…
(空気を切る音が障害になるとはな…!)
スタッ… 俺は城壁の内側に辿り着き、街の中を駆け抜けていく
(・・・幸い皆眠っていて明かりは街頭のみだな、、しかし前に来たよりも人がいないな、、ほとんど前線に出向いたかな…?)
間もなく俺は目的の司令所まで到達する
カチッ…「・・・鍵が掛かっているな、、まぁこの程度ならなんとかなるか…」
カチャッカチャッ… 俺は一旦「探索者」を解き、「解錠士」に切り替えて鍵を開ける
(頼む、、これで…!)
カチャッ! (おっ、開いた!)
キィィィッ… 俺は司令所の中まで入っていく
「・・誰もいないのか…?」
司令所は静かに寝静まっていて、俺は再び「探索者」を使い、室内の人間を探知する
(おっ、、コレは、、イリアさん?、、司令所で寝泊まりしてるのかコレ…?)
俺はイリアさんと思わしき反応を目指して進む
(ん?、、これは、、ダクトか、王城と全く似たような感じだな…)
そうして俺はダクトの中を進み、反応がある部屋の上まで行く
(ビンゴだな、、ここから声をかけるか…)
「う、ううん、、旦那様ぁ…」
なんて寝言だと思いつつ俺はイリアさんに声をかけようとしたその時…




