【1章6話:ラッキースケベ】
ツグミに部屋を案内してもらって俺はくつろごうとした。
しかし俺は手洗いうがいをしないと落ち着かない性分だった。
決闘によって手も汚れていることだし・・・・・・。
俺は武器を部屋に置いて、洗面所を探すために部屋を出た。
探すといっても異世界キャプチャによってエルフの屋敷のマップはわかるため、すぐに到着できた。
俺は洗面所の扉を開けた。
「・・・・・・っ!?」
「か、カイト君!?」
すると、そこには下着姿のアマーサがいた。
美しい金髪とは対照的にかわいらしいピンクの下着。
アマーサが上の下着のホックを外しかけている瞬間を目撃してしまった。
可憐で煌びやかな四肢に俺は魅了され、呆然と立ち尽くしてしまった。
アマーサの裸や下着の情報なんか異世界キャプチャに書いていなかった。
おそらくそれはR18だからだろう。
また、エルフの年齢を秘匿していた件から、異世界キャプチャは倫理観に気をつけて作製されている節が見られるためということもある。
だとしても洗面所に行くとラッキースケベに遭遇する、という情報くらい記載されていても良かったのではないのだろうか・・・・・・。
さらに、アマーサと別れた後、彼女が自室に戻るという情報も異世界キャプチャには記されていた。
決して入浴に行くとは書いていなかったのだ。
いや、今はそんなこと考えている場合ではない!
俺は即座に目を背けるように後ろを向く。
「ご、ごめん。部屋に戻ってると思ったけど、シャワーを浴びようとしてたんだね・・・・・・」
「え、ええ。決闘の最後で倒れたときに汚れちゃったから、着替えるついでにお風呂に入ろうとしたの・・・・・・」
お互いに気まずかった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
お互いに沈黙が続く。
どうにかしないと・・・・・・。
そうだ! 女の子は褒められたら喜ぶという情報をゲームの攻略サイトで読んだことがある。
「し、下着かわいかったよ。アマーサに似合ってた・・・・・・」
「そんなの褒められても嬉しくないよ! カイト君のバカっ! エッチっ! 変態っ!」
逆効果だった。
どうやらシチュエーションごとに攻略がないと、俺は恋愛マスターにはなれないらしい。
「もうっ、悪気はなかったみたいだから今回ばかりは許してあげる。次やったら容赦しないんだからねっ!」
「本当にごめん! もう出るね・・・・・・」
俺は洗面所から出た。
(まあ、カイト君だったら見られても嫌ではないけどね・・・・・・)
アマーサが何か呟いているようだったが、小さい声だったため俺には聞こえなかった。
◆ ◇ ◆ ◇
俺は他の水道で手を洗ってから自室に戻った。
下着に気をとられていたが、冷静になって情報を整理してみる。
アマーサは決闘の最後に倒れたせいで服が汚れてしまい、その結果すぐにバスルームへと向かった。
倒れたのは俺のワイヤーとナイフを使った作戦が原因だ。
つまり、アマーサが倒れるという、異世界キャプチャに記載されていない作戦によって生じた現象をきっかけとして、異世界キャプチャ通りではないイベントが発生した。
今回はラッキーなイベントだった。
しかし今後攻略通りではないオリジナルのアクションを行うことで、俺の知らない様々なイベントが発生する可能性がある。もしかしたら良くないイベントの場合もあるだろう。
異世界キャプチャ通りでないアクションはしっかりと記憶するようにしておかないといけないだろう。
しかしながら、俺は異世界キャプチャ通りの必然的な行動を心がけているのに、アマーサの下着姿という予想外のイベントが起きた。
まさに偶然にラッキースケベだったなと感じた。
そんな下らないことを考えながら俺は自室でくつろいでいたが・・・・・・。
「そうだ。ツグミの情報を調べておかないと・・・・・・」
アマーサの件で忘れかけていたが、俺はアマーサの専属メイド、ツグミのことを調べようとしていたことを思い出した。
俺は異世界キャプチャにある海上要塞都市・ハジマリの住民欄からツグミを見つける。
アマーサのような有名人とは違って、やはりツグミは小さく記載されていた。
初めにツグミのステータスを確認してみる。
〈ステータス〉
NAME:ツグミ
レベル:1
体術攻撃:5
武器術攻撃:5
身体防御:5
魔術攻撃:5
魔術防御:5
俊敏性:20
運:15
スキル:料理× 洗濯× 掃除× ドジっ子
ユニークスキル:天才の鍛冶職人
「なんだこのステータスは!?」
戦闘能力が極端に低いがそれはメイドだから仕方ないだろう。
しかし、メイドとして特に重要な料理・洗濯・掃除という、家事全般が適性ではなかった。
さらにドジっ子も相まって、まさしくツグミは「ダメイド」というやつだった。
ツグミは「アマーサが自分を好いていない」と言っていたが、それも仕方ないだろう。
ダメダメなメイドを専属にされるなんて、アマーサも良い気分なはずがない。
「後でアマーサにツグミをどう思っているか聞いてみるか・・・・・・」
ツグミはメイドの適性はからっきし。家事スキルはダメダメだが、鍛冶には長けているようだ。
ツグミが武器を作っている姿など想像できないが、ユニークスキルに書いてあるということは、相当なスキルを持っている可能性が高い。
俺やアマーサがそうであったように・・・・・・。
異世界の住民にはステータスが見えていないが、ツグミはまさに自分の才能をわかっていない人の典型だった。
×の付いているスキルばかり要するメイドという役職を選んでしまうなんて・・・・・・。
そういうところも本当にドジっ子なんだなと感じる。
「俺がツグミに本当の才能を教えてあげないと」
それがステータスを知っている者の使命だと俺は思っている。
「ツグミは絶対に鍛冶職人として武器を作るべきなんだっ!」
俺はツグミを鍛冶職人にすることを誓った。
コンコンッ。
ノックがなった。
アマーサが扉を開けて入ってきた。
「カイト! ご飯にしましょ!」
ツグミのステータスに夢中になっていたがもうそんな時間か。
俺はアマーサと一緒に夕飯を食べるために部屋を出た。
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