【1章2話:エルフの少女アマーサ】
「おにーさん変な服してるね! 最近ここ来たヒトー? 名前はー?」
きれいな金色の長い髪に青い大きな瞳。端整な顔立ちをしていて、なにより長く尖った耳が特徴的なかわいらしい女の子だった。
エルフの少女、アマーサ。
エルフは魔術に長けた種族であり、今の俺の足りない力を補うにはもってこいだ。
「俺の名前はカイト。ハジマリには最近やってきたんだ。俺の故郷ではこの服装は一般的なんだよ!」
普通こんなかわいい女の子にいきなり話しかけられたらドキドキが止まらなくなるだろう。
しかし俺の場合声を掛けられることは予想できてた。アマーサはいきなり声を掛けたと思っているだろうが、俺にとっては予定調和なのだ。
「君の名前は?」
本来は彼女の名前を知らないはずなので、俺は社交辞令のように名前をたずねる。
「私はエルフのアマーサよ、よろしく!」
彼女の笑顔は純粋なもので太陽のように眩しかった。まさに天真爛漫という言葉が似合う少女である。
「珍しい服装ね。でもハジマリには似合わない服装かなぁ・・・・・・」
彼女は苦笑いする。
俺からしたら彼女のブーツに白のニーハイ、そして上下の緑一式の服装の方が珍しい。下はミニスカートでいかにもエルフといった服装である。
しかしここはもう埼玉ではない。
海上要塞都市・ハジマリである。ここでは俺の服装の方が明らかに異端だった。
「そういえばどうやってここに来たの?」
「昨日、海上要塞都市・ハジマリへの転送があったんだよ。だからそれに乗じて来たんだ! ハジマリは平和で良い街だからね」
異世界キャプチャには彼女に質問されることなんか書かれていなかったが、何か聞かれたときの回答はあらかじめ考えていた。
海上要塞都市・ハジマリは孤島のため、転送魔術によってしか到達できない(まだ船の技術が発達していないため)。
よって平和を求めてハジマリへの転送を希望する人を規定の日に集めて、定期的に転送をしているのだ。
その転送日が昨日だった・・・・・・らしい。全ては異世界キャプチャの情報である。
「ふーん、昨日の転送者にこんな変な服装の人いたかしら?」
「・・・・・・」
「あと私、匂いで嘘を判断できるのよねえ・・・・・・?」
「・・・・・・っ!」
ぎくり。完全に疑われていた。アマーサは訝しげに俺のことを見つめる。
異世界キャプチャ通りに事が運ばないじゃないか!
今までは情報通りだったが、今回ばかりは上手くいっていなかった。
俺はなんとか平静を保っているふりをする。
ジー。
アマーサが俺を見つめているが、平常心、平常心・・・・・・。
「まあちゃんと確認してないし、いたって事にしときましょ! あと匂いで嘘判断できるっていうのも嘘だから、ごめんね!」
てへぺろ、という感じに軽く謝られた。
「そんな軽く嘘をつくなよ!」
俺も軽く嘘をついてるけど。
それにしても危なかった・・・・・・。
異世界キャプチャにアマーサが嘘を判断できるなんて情報なかったが、やはり嘘だったのか・・・・・・。
これから彼女に仲間になるよう申し込むのだが、異世界キャプチャにはそれ以前までの会話の情報が記載されていなかった。
数多くの攻略サイトを拝見してきた俺の予想からすると、おそらく、適当な流れでなんとかなるということだったのだろう。
基本的に攻略サイトも一挙手一投足きちんと書かれているわけではない。だからこれから少しイレギュラーな事態が想定されることも考慮しておかないといけない。
やはりゲームほど単純なものではないようだ。
そしてアマーサが天真爛漫と言ったのは撤回しよう。彼女は軽く嘘もつく!
状況が整理できたところでいよいよ俺はアマーサに仲間になるように提案する。
「なあアマーサ」
「なーに、カイト君?」
「実は俺はハジマリで修行を積んで、いつか魔王討伐を考えているんだ。でもそれは一人じゃできない・・・・・・。だから・・・・・・」
「だから?」
俺は一呼吸置いてアマーサに大きな声で言う。
「俺とパーティーを組んでくれ!!」
異端な服装も相まって大きな声によって街で注目を浴びる。
アマーサは少し照れているようだった。
「ちょっと、大声で恥ずかしいじゃない! あ、あなたの誠実さはわかったけど・・・・・・。ここじゃ注目浴びるから移動するわよ!」
アマーサは俺の告白じみた大声の提案に赤面していた。
これは俺の作戦通りである。というより異世界キャプチャの情報通りである。
提案をする前に一呼吸置くことで誠実さを与え、アマーサに真剣な提案だと思わせる(実際にそうだが)。
そして大声を出すことで場所の移動を促すことに成功した。
異世界キャプチャに従えば上手くいく。多少のイレギュラーに気をつければこのツールは最強である。
俺は確信した。
それにしてもアマーサの赤面した顔はとてもかわいらしかった。なんだか俺が恋愛マスターになったような気分だった。
そしてアマーサと移動して到着した場所は・・・・・・。
アマーサの家、海上要塞都市・ハジマリ内のエルフ一族の屋敷だった。
アマーサの家はとても広大な宮殿だった。煌びやかな景観は異世界キャプチャで見た以上に迫力があり、思わず息をのんでしまった。
「大災厄以降、一部のエルフはハジマリに居住を移したの。エルフは基本的な魔術の鍛錬に最低でも100年は掛かるから、その間じっくりと育成できる環境が必要だったのよ・・・・・・」
魔王を倒すためにね、とアマーサは神妙な面持ちで話すのだった。
「・・・・・・ちょっとまて、アマーサ今何歳なんだ?」
異世界キャプチャにエルフの年齢や鍛錬の話は書かれていなかった。変なところでプライバシーに気を掛けているのか、それとも作製者が知らないだけなのかどちらなのだろうか。
「私は今101歳よ。ちょうど基本的な魔術を覚えたところ! 私こう見えてけっこう優秀なんだから!」
「俺より84歳も上なのか、いや、なんですか・・・・・・」
エルフは長寿で、下手したら寿命で死ぬことはないらしい。それにしてもかわいい女の子だと思ってたのに101歳だなんて・・・・・・。
「敬語なんて堅苦しいからやめてよー! あとエルフは魔術修行中は他の人生経験をほとんど積まないから精神年齢はたいしたことないと思うわ! 一般的な種族で換算したら20歳くらいかなー」
精神年齢でも年上だったが、無駄に揉めそうなので敬語は使わないことにしよう。
しかし何でエルフの情報が異世界キャプチャに記載されていないのだろう。サイトが書き足し可能ならこの情報を記載しときたいものだ。
・・・・・・いや、かわいいエルフが101歳なんて、夢を壊してしまうような話なので俺でも書くのを遠慮するだろう。
おそらく作製者も似たような感情だったから書かなかったのだろうと思った。
異世界キャプチャの作製者が人か神かわからないが、どうやら作製者はしっかりとした倫理観を持っているようだ。
「・・・・・・まだいろんな経験もしてないしね・・・・・・」
「・・・・・・」
アマーサが赤面している。恥ずかしいので何のことか聞かないようにしよう。アマーサ、俺もだから安心しろ!
そんなこんなで俺はアマーサの家もとい宮殿の入り口の門くぐった。
広大な庭には芝生の上に噴水があり、いかにもお嬢様という感じだ。
アマーサは「こっちよ」と言って宮殿の中ではなく、宮殿の裏に案内した。そこにはあたり一面芝生の広場があった。
広場に着くとアマーサは俺に声を掛ける。
「カイト君、私とパーティーを組んでって言ったわよね?」
「ああ、言ったよ」
「私はエルフでもけっこう優秀な方なの。だから私より弱い人は嫌なのよね・・・・・・」
「・・・・・・」
「だから――」
「決闘、か?」
「ふふ、わかってるじゃない・・・・・・」
アマーサは微笑を浮かべる。
ああ、わかっているとも。俺がアマーサと決闘して勝ったらパーティーの仲間になる。
悪いが勝たしてもらうぜ・・・・・・。
だけど・・・・・・。
「・・・・・・その前に俺まだ武器持ってないんだった!」
ズコー。
「・・・・・・じゃあ武器の購入に行きましょう。お金はあるの?」
「ありません!」
ズコー。
次回いよいよバトル開始!
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