気がつけばここは異世界 side???
妖精ほのぼのスローライフ♪はまだ始まりません(真顔)
鉄臭い匂いが鼻をついた。
「……ぅ……ぐ、ぅ…………?」
ここはどこだ?
体が痛む。
手を着いて起き上がろうとすると、ぬるりとした液体が触れた。
「っ、!?」
────こりゃ死んだな、勿体ない。
────あーあー、このお綺麗な顔なら売り飛ばせたのによォ?
────ひひ、ひひひ……しょうがねぇよォ、皆殺しにしろ、ソレが命令だったしなーァ?
────無駄口はもう良いだろう。金目のモノ、後は身元の分かるモンを回収したらズラかるぞ。
────了解ッスよォ、頭ァ。
「……頭が、痛い……」
「 」
声が掠れた。
そろそろ体を起こすのもキツい。
足音が近づく。
「中に居るな? 今のうちに大人しく────」
ギギ、ギギギィ────ガチャり。
もうダメだ。
「投降しやが──って、子供!?」
自分の倒れた音も聞こえず、ドアを開けた相手を確認する間もなく意識が切れた。
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
「………………?」
目が覚めた。
木で出来た、知らない天井だ。
と言うか知らない天井とかテッパンすぎじゃないか?
(テッパン? なんだそれ。しかも木で出来たとか当たり前じゃないか)
「起きたみたいだな、坊主」
声の方へと目をやった。随分とファンタジーめいた恰好の男だ。
「ッ! …… … ……」
(ファンタジーめいたって、唯の兵士服じゃないか)
「そう警戒すんなって。ほら、水」
苦笑して陶製? のカップを渡された。違いがよく分からないから定かじゃないが。
(陶製? って……間違いようがないだろ。これが陶器のコップじゃなきゃ何だってんだ?)
「そんな凝視したって何も入ってやしねーよ。ただの水──でもねぇな、回復ポーションだ」
回復ポーション? コレが?
言われてみれば確かに、薄蒼いような? 気がする液体を一口含む。
……美味しくはないと言うか寧ろマズい。
「そこまで嫌そうな顔すんなよ。一応、薬も兼ねてる」
……ぐぬぬ、仕方あるまい。
えぇい、何でこんなしみじみとマズいんだ。
「おー…………一気飲みかよ。もうちょいゆっくりでも良かったんだぜ? なんせコレから事情聴取だ。────なぁ、あの場所で何があった?」
「あの、場所って…………」
痛い
「お前を見つけた所だ。お前以外全員──」
聞きたくない。
熱い、苦しい
思い出したくない────思い出せない
「 、 」
────許せない。
「おい?! 大丈夫か!?」
焦ったような声を最後にまた意識が切れた。
◇ ◇ ◇
ふらりと力尽きたように倒れた子供を支えながら、ベルを鳴らして医療術士を呼ぶ。
警戒心が強いクセに、視界に入るモノ全てが物珍しいような目。
子供とは思い難い振る舞いをするクセに、見た目も嫌そうな顔も子供そのもの。
「厄介事だよなぁ、どう考えても」
どうにもチグハグなあの子供はこう呟いたのだ。
「皆殺しにしろ、ソレが命令だ」