表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】魔王なのに、勇者と間違えて召喚されたんだが?  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第4章 愚王の成れの果て

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/439

90.狼を守るという建前の使い方

「魔獣だ!」


「群れが下りてきたぞ」


「逃げろ」


 様々な悲鳴と怒号が響く村は、あっという間に狼達の餌食となった。サタンの命令を受けて監視役に回ったリリアーナは、ばさりと翼を揺らして空から状況を見守る。本当は自分がブレスを放ち、主の敵となった人間を排除したかった。


 ドラゴンが出ると過剰戦力になると言われ、諦めたリリアーナはくるくると上空を回りながら狼達の保護を優先する。複数の群れを率いるマルコシアスやマーナガルムのように強い個体は問題ないが、魔狼や銀狼に被害を出さず守れと言われた。


 人間の中にも狼を狩る強者が紛れている可能性がある。その場合はさらなる強者であるドラゴンが出て、人間を排除して構わないと許可を得ていた。そのため、何とかして戦闘行為に交じりたいリリアーナは目を皿にして探し回る。誰か、狼を虐げていないか……。


「見つけた!!」


 群れからはぐれたのか、2匹の狼が人間5人に囲まれていた。圧倒的な数の違いと、武器を手にした人間達……これならば手を出しても叱られない。嬉々としてリリアーナは舞い降りた。ばさりと羽ばたく風で、埃から目を守る人間の足元を狼が逃げていく。


 弱者の保護は終わった。あとは人間の排除! 機嫌よく降り立ったリリアーナは、ドラゴンのまま着地した。爪を振りかざそうと前足を持ち上げた途端、人間は蜘蛛の子を散らすように建物に逃げ込む。


「え……」


 どうしよう。逃げた相手も追いかけていいのか。判断に困って前足を下す。獲物を見失ったリリアーナは、半泣きだった。せっかく戦いに参加できる条件が揃ったのに、何もしないうちに敵が消えてしまった。ドラゴン姿でしょんぼりと首を項垂れた彼女の耳に、狼の声が届く。


 危険を知らせる遠吠えに、今度こそ! と気合を入れて舞い上がった。次は舞い降りる前に人化して、少女の姿になろうと心に決める。遠吠えした狼はすぐに見つかった。組織だった抵抗を見せるのは、村の監視と管理を兼ねる役人の屋敷だ。


 狼達の高さでは目視できないが、空から見れば敵の数も配置も丸見えだった。狼を阻むために村人を見捨てて立てこもった人間達は、剣ではなく槍を手にしている。あれは棒の部分が長いので、狼が飛び掛かる前にケガをする恐れがあった。


 狩りで仲良くなった狼の中には、子供が生まれたばかりの父狼もいる。さすがに母子は森に残ったが、早く戻ってやりたいだろう。戦いたいと思う反面、自分だって早くサタンの元に戻りたいリリアーナは、空中で器用に人化しながら飛び降りた。


 今までは地上付近で人化していたが、ドラゴンを恐れて逃げられるミスを二度繰り返さないため、かなり高い位置で人化する。背に翼を出すが、勢いを殺しきれずに落下した。


 ドンッ! 激しい音で大質量を受け止めた地面が凹む。手を広げたくらいの直径がクレーター状になり、大量の埃が舞い上がった。


 ドラゴンは瞼が二重になっている。猫の瞬膜に似たものだが、性質はかなり異なった。鱗がある外側の膜と違い、内側の膜は透明で光を通す。埃や物理的な攻撃を防ぎながら、獲物の姿を追うための膜だった。上手に膜を使って視界を確保する。


 突然の爆発に混乱する人間を、近い者から掴んで引きちぎった。悲鳴が周囲に乱反射し、飛び散った赤い血が手足を濡らす。いつもの癖で白いワンピースをまとった褐色の肌の少女は、長い金髪を尻尾のように揺らしながら、にたりと笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ