表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】魔王なのに、勇者と間違えて召喚されたんだが?  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第11章 戦より儘ならぬもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

405/439

402.努力を一瞬で蹴散らすなんて許さない

「もうっ! 仕方ないわね」


 着飾った宝石類を外して、近くにあった机に置いた。オリヴィエラの様子に、事情を察したロゼマリアが駆け寄る。


「敵なの?」


「空と地上は問題ないわ。地下よ」


 食料配給はまだ定期的に続けている。民に土地を分配したからといって、すぐに収穫が出来るわけではないからだ。農民が1年間必死に働き、天候や害虫と戦ってようやく得られるのが実り。最後の収穫前に台風が来て台無しになることも珍しくないのが、農業だった。


 常に自分達の手が届かない天候や虫の発生に悩まされる民に、まともに食べて欲しい。痩せた腕で振るう鍬は大地に届かないから。耕す土地と水路を用意し、種も与えた。一生懸命耕す彼らが収穫を得るまで、炊き出しは続ける予定だ。そのための予算も許可も得ていた。


 その大地の下を荒らす者がいる。かつてのオリヴィエラなら、地上に出てくるのを待って戦っただろう。グリフォンは本来空にいてこそ強い。鷲の羽と鋭い爪で、いくらでも敵を屠れる。


 しかし今の地上に呼び出すことは、民の努力をすべて水泡に帰す行為だった。地下を荒らす魔物はまだ深い位置にいる。奴らが浮上すれば、地表にある麦畑も野菜の苗も台無しになるだろう。


「誘き出す必要があるわ」


 荒野はかなり開拓された。王都となったバシレイアには、魔王城がある。ドワーフが作る堅固な城は地下にもノームの加護があり、倒れる心配はなかった。だが周辺地域は別だ。ノームの加護はそこまで及ばない。


「何か方法はないかしら」


 足の裏をぞわぞわと撫でられるような不快感が、オリヴィエラを襲った。魔王サタンならどうするかしら? 黒竜王アルシエル、吸血鬼王ウラノス、女王のようなアスタルテなら……。


 思いつきそうな作戦を探るも、圧倒的な魔力がなければ使用できない作戦ばかり。私が扱える魔力で足りる作戦でなければ、実行不可能だわ。唸るオリヴィエラへ、ロゼマリアが宝石類を片付けながら首をかしげた。


「地下にいるのよね。溺れたり、潰れたりしないのかしら」


 無力で無知な人間だからこその疑問だった。土は重いのだから、重さで穴が潰れてしまわないのか。地下水を掘り当てて水が流れ込んだらどうするだろう。そんな子供のような疑問……目を見開いたオリヴィエラが手を叩いた。


「そうよ、それ! それにしましょう」


「え、ええ」


 なんだかわからず、手にした宝石類を侍女のエマに預けた。手を握るオリヴィエラに引っ張られ、ロゼマリアは炊き出しに集まった民の間を走る。少しして立ち止まった。


「あそこに水路があるわ」


 彼女に連れられてたどり着いたのは、外壁の上だった。階段を上らずに、グリフォンに掴まれて舞い降りる形だ。一瞬で人に戻った親友は、濃茶の髪をかき上げながら地図を取り出した。


「東側の水路は、西の地下水を汲み上げている。だからこの間は地下水の流れが変わってるはずよ」


 大量に西から汲み上げた理由のひとつに、川が流れる東の地形が挙げられる。山がある西側は高さがあり、東の川へ地下水を繋げば、高低差を利用して水量を調整できた。川が流れると言うことは、周囲より低い土地なのだ。


「目にもの見せてくれるわ」


 作戦を確認したオリヴィエラは、許可を取るために王城へと飛んだ。その背に大切な友人を乗せて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ