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【完結】魔王なのに、勇者と間違えて召喚されたんだが?  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第10章 覇王を追撃する闇

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359.裏切り者のあんたに言われたくない

 一番大きな魔力を持つ者に、アルシエルは心当たりがあった。どこか冷たい魔力の雰囲気は、かつて夢魔の魔王の側近であった頃に、何度も感じたものだ。


 森の木々をすり抜け、倒れた大木により出来た日向に飛び出した瞬間、左側から攻撃された。張っていた結界にぶつかり相殺するが、勢いを殺しきれずに右に押される。足を踏ん張り、砂埃を立てて止まった。


「出てこい」


 森の葉がざわりと揺れるが、姿を現さない。この辺は想定していたため、アルシエルに焦りはなかった。魔力は左側から動かない。侮られているのか、油断しているのか。誘っているとしたら、随分手の込んだ罠を仕掛けたはず。


「臆したか? カルデア」


 わざと挑発して待つ。竜族の本来の戦い方は、先手必勝だった。こうして敵の動きを待って、布石するのは吸血種や魔法に特化した魔族が多い。強大な力を持つグリフォンやドラゴンは、小手先の仕掛けを好まない。集団で動く魔獣とも違った性質を持ち、単独行動が主流だった。


「我が君への拝謁なら、口を利いてやってもよい……っ!」


 なかなか挑発に乗らない元同僚をさらに煽ったところで、数えきれない程の矢が降ってきた。咄嗟に結界を強化し、ウラノスから譲り受けた魔法陣を展開する。発動まで時間がかからないよう、服の襟や袖、ベルトなど体に直接触れる部分に刺繍された魔法陣に魔力を流した。


 氷と雷の矢を混合で使うのは、氷の伝導率の高さだろう。触れた氷の矢を通して、雷の電気が走る。避けてもどれか当たると踏んだ数任せの技だった。普段は冷静沈着な女だが、一度尾を踏めば烈火の如く怒り狂う。


 なんとか彼女の逆鱗を逆撫でし、尾を踏むことに成功したらしい。


 炎の壁を築いて盾とした。雷は炎に対して耐性があるため、内側に雷を走らせる。互いに引きつけ合う性質を持つ雷の矢は、炎を通過した時点で消滅した。


「あんたにっ! 裏切り者のあんたに言われたくない!!」


 アルシエルが前魔王の元を去り、別の主君を持ったことに反発したようだ。とすれば、この魔獣やエルフを嗾けたのも、嫌がらせと警告程度だろう。


 魔王軍を含めた別の部隊が、まだ用意されているはず。彼女の思考は手に取るように読める。それだけ近くにいて、常に一緒に行動してきた。あの方がまだ存命だった頃から、夢魔を次の主に据えるよう命じられた時も……。


「裏切り者?」


 奇妙な言い方に引っかかった。俺に対し、もう仕える必要はないから新しい主を見つけろと放逐した夢魔の魔王は、彼女に同じ言葉を告げなかったのか?


「夢魔の魔王に放逐されたんだが」


「知っている」


 どうやら認めなかっただけのようだ。彼女も同じように解散を命じられた。しかし納得できず、陰でまだ暗躍しているのならば。


「主君の命令を無視するのが、お前の忠義か」


「やかましい! 死ね」


 攻撃の手は止まらない。癇癪に似たカルデアが放つ攻撃に、アルシエルは眉を寄せた。

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