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274.直々に蛮勇を迎えてやろう

 互いに得意な分野ははっきりしており、成すべきことも理解できている。魔王の配下となる以上、命じられてから動くのでは遅すぎた。蜘蛛の子を散らすように解散する彼らは、一礼すると勝手に動き出す。悲鳴を上げる間もなく、マルファスが巻き込まれた。


 ウラノスは孫娘を連れて情報収集に乗り出し、アルシエルはグリュポス跡地に向かった。グリュポスの王弟の首を旗頭に戦を仕掛けるなら、元領地への侵攻の可能性が高い。ドラゴン種が守りに入る土地は、すでにマルコシアスやマーナガルムに与えた。連携すれば人間など相手にならない。


 新たな開拓地で入植者がいるのは、グリュポス跡地だ。そちらを優先したアルシエルの判断は正しかった。魔狼達でも十分守り切れるが、ドラゴンという脅威があれば、戦わずに人間を引かせることも出来るだろう。


 滅した国はアナトとバアルが管理に出た。互いの間に通信は不要で、常に感情や考えを交換し合う双子神はビフレストやイザヴェルに入り込む侵入者を排除する予定だ。


 ククルはキララウスの民を船着場から移転させる気だった。すでに入植予定地が準備できており、躊躇う要素はない。マルファスを連れて行ったのは、人間との緩衝材として交渉を任せるつもりなのだ。そういった調整を自ら行うことを苦手とする彼女だが、使える手足を選択する能力は長けている。ククルが将軍となった要因の一つだった。

 

 散ってく魔力を確認しながら、目の前で浮遊する地図に配下の動きを記した。アガレスがそれらを書き取り、頭を下げる。


「戦の準備と民の避難誘導を行います」


 頷いて一任する。避難や危険の警告は、同族同士の方がスムーズだった。これは経験から導き出された事実だ。差別の意識がなくとも、人間に空間を渡ることは出来ず、魔族に弱小種族の限界は分からない。互いの利点を活かすならば、同族同士の繋がりや理解は必須だった。


「城の守りはあたくしが担当しますわ」


 どうせ撃って出るのでしょう? 見透かしたように微笑むオリヴィエラは、ロゼマリアのいる城を全力で守り切る。なぜか人間の女に執着する彼女だが、グリフォンは宝を守る習性があった。ロゼマリアがいる限り、オリヴィエラは全力で城を守り抜くと言い切れた。


「わかった、撃って出よう」


 魔王は城に篭って勇者が攻めてくるのを待つ――そんな伝承もあるようだが、別にオレが従う理由もあるまい。グリュポスの王弟はただの人間、その死体の首に魔力はなかった。そのような象徴を掲げて戦うとあれば、魔王直々に蛮勇を迎えてやってもよい。


「いくぞ」


「うん!」


 黄金の瞳を戦意と興奮に煌めかせ、リリアーナは慌てて立ち上がった。消したはずの尻尾を揺らしながらついてくる姿に、口元が緩む。やはり今の姿の方がリリアーナらしい。尻尾を隠せるようになったことを褒めたが、今後はそのままにさせるか。


 埒もないことを考えながら、後宮へ足を向けたオレの後ろで、オリヴィエラが小さく呟いた。


「あたくしもだけど、陛下も大概ね」


 聞こえたものの、咎めず足を止めることなく無視した。

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